mixiユーザー(id:3102427)

2019年08月23日12:48

87 view

読了2冊/モンゴメリ (訳) 木村由利子

やたら間口広く、様々なジャンルを乱読する私の読書ライフ。
その中で、
本当に面白い!とか、心を震わされた!とか、
感動を、想いが溢れるままに読後レポに書き表せる作品と出逢えるのは、
稀有な幸運である。

しかし、そこまでの感動を味わった作品でも、
その後幾度も読み返すかといえば、せいぜい1度か2度…

だが、
初めて読んでからもう50数年、
ふと思い出しては幾度となく読み返したくなる作品が、
何作か私にはある。
そんな作品の1つが「赤毛のアン」シリーズ。

以下2冊は、
そのアンが結婚してグリーンゲイブルスを去ってからの、
プリンスエドワード島の村「カーライル」(アヴォンリーではない)の
人々の日々のあれこれが描かれた短編集。

「赤毛のアン」でお馴染の人々や場所も登場し、
懐かしく、とても嬉しい作品。

それが、
1990〜1996年、カナダ放送協会で
「アヴォンリーへの道」というドラマで映像化され、
日本では1993年12月から、途切れたり再放送だったりで放映され、
毎回楽しみに視聴していたのが、
この4月からCSTV「AXN」で、
7シーズン、全91話イッキに放映してくれることになり
毎日、嬉しく見ながら、
久々に原作を読んでみた。

ドラマではキング家が軸となって進む。
長女で自称(?)家長のヘティの反対を押し切り結婚した次女ルースが、
娘「セーラ」を遺して亡くなったため、
セーラがモントリオールからアヴォンリーのヘティの元に引き取られ、
長男アレックスの家族や三女オリビアの家族、
村の人々と交わり周囲の人々と共に成長していく物語。
主人公のセーラは文才があり、また、朗読にも長けた少女で
ストーリーガールと呼ばれることもあったが、
それはドラマのエピソードの1つとして、
特にスポットライトが当たる事も無かった。

しかし、原作の設定はだいぶ違う。

視点は、
親の事情で、弟「フェリックス」と共に、
父の兄「アレック・キング」おじの農場に預けられた少年
「ベバリー・キング」。

従兄妹の「ダン」「フェリシティ」「セシリー」(アレックの子)3人と弟と
農場に住んでいる。
そして、
アレックの兄「ロジャー」、妹「オリビア」と共にロジャーの農場で暮らす
アレックの妹「フェリシティ(故人)」の娘(ベバリーには従妹)
「セーラ・スタンリー」が作品の軸!
想像力豊かで、お話しを語る素晴らしい才能がある彼女こそが、
<ストーリーガール>なのである。
そう、正にアンの再来!

たしかにドラマ的には、
さして魅力のないロジャーおじさんより、
口うるさいが面倒見の良いヘティおばさんのほうが面白い!

ドラマの主役のセーラ・スタンリーを演じたのはサラ・ポーリー
  Sarah Polley, 1979年1月8日
  長じて反戦活動に熱心になり、社会運動への傾倒が原因で、
  セーラは、後半、フランスへ留学という設定で
  ドラマを去った。(最終回には出演。)
フォト

大都会から田舎町にやってきたという雰囲気の漂う洗練された少女だったが
原作からイメージするセーラは
翻訳に依るところが大きいからかな?
田舎の利発な少女という感じ。
語る言葉が一昔前の口語。
村岡さん訳の「赤毛のアン」の影をそこここに感じる。

本作の中の逸話は、
作者の大おばが語ったモンゴメリ家に伝わる逸話や
作者が体験した物語。
そしてストーリーガールとは作者の投影であり、
(アンの中にもモンゴメリが居た)
ここに登場する子供たち、そして村人皆の中に
作者モンゴメリが生きている。



フォト

「ストーリー・ガール」/モンゴメリ (訳) 木村由利子
第1章 ふるさとの家 第2章 ハートの女王 第3章 果樹園の伝説
第4章 高慢ちき姫のウェディングベール 第5章 ピーター教会に行く
第6章 黄金の一里塚の謎 第7章 ベティーシャーマンはどうして夫をつかまえたか
第8章 幼心の悲しみ 第9章 魔法の種 第10章 イブの娘 
第11章 ストーリー・ガールの苦行 第12章 レイチェル・ウォードの青い長持ち
第13章 古い格言 新しい意味 第14章 禁断の実 第15章 ダンは反抗期
第16章 幽霊の鐘 第17章 プディングの味 第18章 キスはどのように発見されたか
第19章 恐怖の予言 第20章 審判の日曜日(ジャッジメント・サンデー) 第21章 夢見る人々
第22章 夢の記録 第23章 夢はそんなものでできている 第24章 呪われたパット
第25章 苦い杯 第26章 ピーター心に訴える 第27章 苦りんご我慢比べ
第28章 虹のかけ橋 第29章 恐怖の影 第30章 手紙の花束 
第31章 光と闇のはざまで 第32章 青い長持ちが開く日



フォト

「黄金の道 −ストーリー・ガール 2−」/モンゴメリ (訳) 木村由利子
第1章 新たな門出 第2章 精神一到何事か成らざらん 第3章 クリスマスの竪琴
第4章 新年の誓い 第5章 「われら」紙創刊号 第6章 イライザ大お大庭おばの訪問
第7章 いとこマティーを訪ねて 第8章 ペッグ・ボウエンとの一夜 
第9章 「われら」紙2、3号抜粋集 第10章 パディーの失踪 
第11章 魔女のウィッシュボーン 第12章 メイフラワーの季節 第13章 意外な報せ
第14章 放蕩者の帰還 第15章 髪の一房 第16章 ユーナおばさんの物語
第17章 オリビアおばの結婚式 第18章 セーラ・レイのすけだち 第19章 星空の道
第20章 「われら」紙抜粋集 第21章 ペッグ・ボウエン教会に現る
第22章 ヤンキー・ストーム 第23章 伝道のヒロイン 第24章 衝撃の事実
第25章 ぶきっちょさんの恋物語 第26章 ブレアおじの帰郷
第27章 かくて時は過ぎ行く 第28章 アルカディアへの道 第29章 友よさらば
第30章 予言 第31章 「われら」紙終刊号 第32章 別れの夕べ 第33章 去りゆく少女



人生の愛読書。
決して、光る筋立てや物語の展開があるわけではない、
一時代前のカナダの村の市井の人々の日常を描いた短編集に
なぜこんなに惹きつけられるのか?
それは、意地悪だったりお節介だったりするも、
根はそんなに悪人ではない愛すべき人々の中に、
日常を生きる自分をも投影して見るからなのだろう。

設定は違うし、全体のトーンやセーラの扱いもかなり違うが、
それでもドラマの毎回毎回のエピソードは、
ほぼ、原作を元に作られたものとわかる。
ということで、
ドラマ放映が終わった後読了しても、
いくつかの名シーンは、ドラマのキャストで脳裏に浮かぶ。
そう、DVDなど無しに幾度でも脳内録画を見られるのだ。
読書とは本当に安上がりで素敵なアクティヴィティである。



1 5

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する