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2018年05月31日00:01

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頭蓋骨が物議を醸した人

 現在のドイツ連邦共和国が、かつて、東ドイツと西ドイツに分断され、それが再統合されたものである(1990)ということは、広く知られた事実であろうと思います。
 その国歌は、この曲です。
https://www.youtube.com/watch?v=aieNUMWiT7Q

 これは、ハイドン作曲の弦楽四重奏曲第77番の第二楽章です。
https://www.youtube.com/watch?v=95Mdv9Sifos

 
 ハイドンについては、その妻が悪妻だった話(http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1896300870&owner_id=22841595http://classical.eplus2.jp/article/113259341.html)とか、あるいは、上手に“音を外した” 話(http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1962998133&owner_id=22841595)とかについて触れてきましたが、実は、この人は、他界した後にもちょっとしたエピソードを遺しています。
 なんと埋葬された墓が暴かれ、頭蓋骨が胴体から切り離されて、盗まれてしまったのです。
 盗んだのは、当時のオーストリア王国の監獄の所長のヨハン・ペーターという人物でした。
 ペーターは、「骨相学」という、頭蓋骨を調べるような趣味を持っており、事実色々な囚人の頭蓋骨をコレクションしていたと云われています(以前、ブルックナーに頭蓋骨を集める妙な趣味があったと書きましたが(http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1931850630&owner_id=22841595)、それを想起させるものがあります)。そんな折り、ハイドン死亡のニュースを聞き、「是非とも天才と云われる人物の頭蓋骨を調べてみたい」との衝動から、ペーターは、墓を暴いて頭骸骨を持ち帰るという奇怪な行動に出たということです(後述のローゼンバウムと共同して盗んだという説もあります)。
 彼は、盗んできた頭蓋骨(生首)を丁寧に化学処理して綺麗な頭蓋骨に仕上げ、色々な角度から測定を繰り返しました。そして、「ハイドンの頭蓋骨には音楽丘の隆起が見られる」などと論文を書いて仲間内で発表し、かなり羨ましがられたという話が遺っています。
 しばらく経って、このことを聞きつけたローゼンバウムという人物が、ペーターを訪ねてきて、ハイドンの頭蓋骨を譲り受けたいと申し出ました。ペーターの方でも、研究は一応終わって頭蓋骨は用済みになっていたし、この頭蓋骨をなおも所持していることを知られていることは、一種の弱みでもあったので、頭蓋骨をローゼンバウムに譲ってやりました。
 しかし、このローゼンバウムという人物もその頭蓋骨を墓に戻すようなことはしませんでした。
 実は、ハイドンの遺骨に頭蓋骨がないことは1820年に露見したのですが、警察の捜索でも頭蓋骨は発見されず、ハイドンゆかりのエステルハージ家との取引でローゼンバウムから引き渡された頭蓋骨も偽物でした。ローゼンバウムからは、再度、頭蓋骨の提供があったようですが、これも偽物でした(ただ、この時代、どうやって頭蓋骨の真偽が分かったのでしょうね?)。
 その一方で、ローゼンバウムは自宅の玄関にハイドンの頭蓋骨を飾り、その横には銀盤に描かれたハイドンの肖像画を並べて展示し、お客がくるたびに「これがハイドンの頭蓋骨です」などと誇らしげに説明していたそうですから、警察が余程間抜けだったのか、あるいは幾らか賄賂を握らされていたのか、本当にわけの分からない話です。
 ただ、この頃から奇怪な出来事が起こり始めたと云われています。
 ある夜、ローゼンバウムの妻が、この頭蓋骨から不気味なうなり声があがっているのをはっきりと聞いたというのです。それからというもの、うなり声はたびたび聞かれるようになり、最初は半信半疑だったローゼンバウム自身も、ある夜、頭蓋骨がアゴをカタカタ鳴らしながら自宅の中を飛び回っている場面を目撃したといいます(ポルターガイスト現象?)。
 ここまでくると、もはやオカルトやホラーの域に大きく踏み込んでいますが、その真偽はどうであれ、とにかく、うなり声と空を飛ぶ場面をたびたび目撃するようになったローゼンバウムは、さすがに気味悪くなって、とうとう頭蓋骨を手離すことにしました。
 でも、頭蓋骨を譲り受けた人の所でも全く同じ現象が起こり、次の人、また次の人も同じ目に遭ったそうです。
 一方、ハイドンの胴体の方は、第二次世界対戦後にソ連(現ロシア)に移動し、この頃になってようやく、方々でどうやら厄介物になっているらしいハイドンの頭蓋骨と胴体を一つにしよう、という動きが見られるようになりました。
 そして、ついに1954年8月21日に、ハイドンの故郷のアイゼンシュタットの墓地で実に150年ぶりに首と胴体は一緒に埋葬され、今日に至っているということです。

 長い間、頭と胴とが分断されていた遺体の主が生前作曲した曲が、やはり長い間の分断後再統合された国家の国歌になったことには、運命的なものを(ちょびっとですが)感じます。

 今日(31日)は、フランツ・ヨーゼフ・ハイドンの209回目の命日です。


※この曲は、かつてオーストリアやポーランドの国歌でもありました(参考:http://www.onyx.dti.ne.jp/sissi/episode-26.htm

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