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2023年12月02日21:25

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「ナポレオン」

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場の帰り、「ナポレオン」を観た。「グラディエーター」「ブラックホーク・ダウン」「キングダム・オブ・ヘブン」を監督したリドリー・スコットなら、ナポレオンの栄光と挫折をダイナミックに描いてくれるだろう。私の関心はただひとつ。セルゲイ・ボンダルチュク監督の大傑作「ワーテルロー」を超えるものに仕上がっているか否か、それだけだった。

 この先、多少、内容に触れるので、ニュートラルな状態で鑑賞されたい方はご注意ください。










 リドリー・スコットの「ナポレオン」を観て、衝撃を受けた。北野武監督最新作「首」どころの衝撃ではない。この映画「ナポレオン」こそ、「新解釈 ナポレオン」というタイトルで公開すべき内容だ。彼が描くナポレオンは天才戦略家でもなければ、ずば抜けた野戦指揮官でもなく、ましてや英雄などではない。ただただ、愛するジョゼフィーヌに身も心も支配される、弱く情けない男なのだ。しかも、ナポレオンの華々しい戦歴において、フランス軍の勝利が明らかに劇的に描かれたのは唯一「アウステルリッツの会戦」のみ。あとはひたすら敗北の連続である。「ワーテルローの戦い」に至っては、負けるべくして負けた無惨な戦いとして、なんとも単調な描き方で終わる。ボンダルチュクの「ワーテルロー」のように戦闘経緯を段階的に精緻に、ドラマチックに描写することなど最初からリドリーは興味なかったのだろう。

 この映画のナポレオンの姿からは、砲兵士官から将軍、はてはフランス皇帝にまで上り詰めた彼の才能も人間的魅力も全くうかがえない。反対に、ヴァネッサ・カーヴィ演じるジョゼフィーヌの美しさ、妖艶さはどうだ。リドリー・スコットが本当に描きたかったのはナポレオンではなく、彼が愛したジョゼフィーヌだったに違いない。

 「ナポレオンが生涯、指揮した戦闘は61。その戦闘におけるフランス軍将兵の戦死者300万人」という最後のテロップは、ナポレオン戦争の、正に「負の部分」だけを強調する。リドリー・スコットが描こうとしたナポレオンは英雄でも悪魔でもない。弱く、愚かで哀れなひとりの男の姿だ。

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 ヴァネッサ・カーヴィー演じるジョゼフィーヌ。彼女の素晴らしい存在感が、この映画を救っている。
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