鈴木清順『俺たちの血が許さない』レビュー

小林旭と高橋英樹の兄弟もの。ヤクザから逃れようとして逃れられない兄と弟の宿命。

親父がヤクザの抗争で自宅で殺し屋に刺された。母親は、幼い息子たちを堅気にしようと育てた。しかし、息子たちは堅気になろうとしてなれず、母親の思いを裏切ってヤクザとの抗争に巻き込まれていく。兄は小林旭。キャバレーの支配人で母親の信頼も篤い。弟はヤンチャな若大将を高橋英樹が溌溂と演じている。二人とも若い。弟はヤクザへの憧れを捨てきれず、サラリーマンを馘になって、親父の浅利組の再興を夢見ている。そして会社の同僚のお転婆娘の長谷百合との結婚を考えている。一方、兄の小林旭は、キャバレー支配人の仕事の裏でヤクザの手下として母に内緒で麻薬を売りさばいていた。ヤクザの親分のスパイだった松原智恵子と愛し合った小林旭だったが、その松原智恵子は殺され、小林旭はヤクザと決別して逃亡する。しかし弟も巻き込まれてヤクザ一味と対決することになる。

乾いたタッチのサスペンス活劇が得意な鈴木清順にしては、やや兄弟愛の湿っぽい情念が描かれている。しかし、長谷百合が高橋英樹の家に訪ねて来て、ピストルをぶっ放し、母親の細川ちか子と襖に挟まれたりするお遊び的演出は清順らしい。はねっかえり娘の長谷百合がなかなかいい。秘書として後姿ばかりだった松原智恵子は、小林旭と結ばれた朝、妖艶な姿を披露している。雨の中で走る車と海の波が合成されたり、奇抜な映像がちょこちょこあって楽しめる部分もある。クライマックスは夜の山の中でのピストルの撃ち合いがあるが、やや面白みに欠ける。

1964年製作／97分／日本配給：日活監督：鈴木清順
脚色：竹森竜馬、細見捷弘、伊藤美千子
原作：松浦健郎
企画：高木雅行
撮影：峰重義
美術：木村威夫
音楽：鈴木忠典、池沢博
照明：吉田協佐
編集：鈴木晄
キャスト：小林旭、高橋英樹、 松原智恵子、長谷百合、 細川ちか子、緑川宏、高品格、井上昭文、小沢栄太郎、弘松三郎、柳瀬志郎、山口吉弘、近江大介、千代田弘、野呂圭介、青木富夫、 松尾嘉代、森みどり、雪丘恵介、長弘、二階堂郁夫、上野山功一、玉村駿太郎
☆☆☆3