シバタヒカリ「私の息子が異世界転生したっぽい」

原作はかねもとのネット連載コミック。フルヴァージョンとしてシバタヒカリが
再度作画している。このコミックスは全５巻のようだが、私は２巻まで読んだ。
タイトルから転生ものと予想したが、全く違う。序盤を読んでオタクが一般人に
振り回される物語かと感じたが、これも外れ。実は群像劇のようだ。
既に市民権を得て、オタクの喜怒哀楽も理解されるような社会になっているが、
地方ではまだ偏見があるかもしれない。主人公が社会人になり東京で正体を
隠している点は首をかしげてしまうのだが、地元で息をひそめるような生き方を
強いられる過去があったのは想像がつく。ここを拡げてゆくストーリーになっても
十分なアピールにはなる。だが本作は其処に留まらず、近寄ってくる元ギャル、
其の友人達の姿も掘り下げている。殊に、単なる悪者として描かれそうな旦那にも、
事情を汲めそうな描写があることに驚きを感じる。丁寧なのだった。
丁寧といえば１巻に、他者の内面を窺い知れず対応に迷うシーンが延々と展開されて
いる。これはリアルだ。技法として心の内を読者に明かしてゆくことはあるが
其れを排除して、我々の現実と同じ条件に置かれたキャラには、同調が高くなる
効果がある。