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2022年09月29日23:43

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シャンタル・アケルマン映画祭

今年最大級の台風14号も過ぎ、あべ国葬も終わった。期末決算の忙しい中、今日はこれを見るために休みをとって4年ぶりに九条シネヌーボへ。

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【シャンタル・アケルマン監督】
1950年6月6日、ベルギーのブリュッセルに生まれる。両親は二人ともユダヤ人で、母方の祖父母はポーランドの強制収容所で死去。母親は生き残ったのだという。女性でありユダヤ人でありバイセクシャルでもあったアケルマンは15歳の時にジャン=リュック・ゴダールの『気狂いピエロ』を観たことをきっかけに映画の道を志し、18歳の時に自ら主演を務めた短編『街をぶっ飛ばせ』(68)を初監督。その後ニューヨークにわたり、初めての長編『ホテル・モンタレー』(72)や『部屋』(72)などを手掛ける。ベルギーに戻って撮った『私、あなた、彼、彼女』(74)は批評家の間で高い評価を得た。
25歳のときに平凡な主婦の日常を描いた3時間を超える『ジャンヌ・ディエルマンブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番』を発表、世界中に衝撃を与える。その後もミュージカル・コメディ『ゴールデン・エイティーズ』(86)や『囚われの女』(99)、『オルメイヤーの阿房宮』(2011)などの文芸作、『東から』(93)、『南』(99)、『向こう側から』(2002)といったドキュメンタリーなど、ジャンル、形式にこだわらず数々の意欲作を世に放つ。母親との対話を中心としたドキュメンタリー『NoHome Movie』(2015)を編集中に母が他界。同作完成後の2015年10月、パリで逝去。


「ジャンヌ・ディエルマン」は思春期の一人息子と暮らす母親の日常が淡々と3時間以上描かれる。世界に衝撃を与えたアケルマンの代表作。

朝起きて朝食の準備をし息子の靴を磨き、全てが整ってから息子を起こし食べさせ送り出したあと彼の服を片付け食材の買い出し、夕食の仕込み、、、そして息子が帰宅。手の込んだ料理だが息子は特に感想もななく夕食を食べる。最小限の会話しかない母子。食後の読書、ラジオを聴き編み物。夜の散歩。就寝。あまりにもルーチンが決まっていて退屈するがその退屈で単調な毎日こそが主婦の日常であり本人は結構忙しく1日が終わってしまう。じゃがいもの皮をむく。ミートローフの肉をこねる。コーヒーを豆からひいて淹れる。食器を洗う。一つの作業が終わるたびにいちいち扉や引き出しをきちんとしめ、元の場所に片づけ、電気を消し、全てがあまりにも完璧で無駄がない。最小限の道具で一切手を抜かないその仕事ぶりに感心してしまう。と同時に、こういう細かいめんどうな目に見えない家事って山のようにあるよな。主婦がこれをサボらず黙々とやってるから家の中は整然と保たれるんだろうなぁと思う。男性監督には絶対描けないであろう視点。
しかしその規則正しく慎ましいルーチンの中に組み込まれている秘密の作業がある。昼下がりのある一定の時間日替わりで見知らぬ男たちが彼女の部屋を訪れ帰って行くのだ。
ベッドスプレッドの上に載せられた白い布が象徴的。

アパートの部屋に定点観測のごとく設置されたカメラによって映し出される反復する日常。その執拗なまでの描写は我々に時間の経過を体感させ、反日常の訪れを予感させる恐ろしい空間を作り出す。主婦のフラストレーションとディティールを汲み取った傑作。ジャンヌを演じるのは『去年マリエンバートで』(61)『ブルジョワジーの秘かな愉しみ』(72)のデルフィーヌ・セイリグ。

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帰り阪神バル横丁のクラフトビアベースブランチでビールを飲んだ。映画館は飲食はおろか鑑賞中マスクもはずせないからしんどい。
隣に座ったエドという名の外人。ポルトガルのマデイラ出身で日本に18年住んでいるそう。日本語が上手だった。ポルトガルは私が今もっとも興味のある国だというととても喜んでいた。バスコダガマからマデイラ酒、ファド、デラシネ、クリスチャーノロナウドの話で盛り上がった。

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