「少年の君」

昨年度のアカデミー賞で国際長編映画賞にノミネートされた中国・香港合作映画で、監督は香港出身の俳優デレク・ツァン。
中国におけるいじめや受験戦争、ストリートチルドレンといった社会問題を背景に、優等生の女子高生と不良少年の二人を主人公にした社会派の青春映画です。

進学校に通う成績優秀な高校3年生の少女ニェンは、大学入試を控え殺伐とした校内で、ひたすら参考書に向かい息を潜めて日々をやり過ごしていました。唯一の肉親である母親は怪しげな出稼ぎに出て不在で、彼女にとっては大学受験だけが貧しい生活から抜け出す唯一の方法なのでした。しかし、あることをきっかけに、自身がいじめの標的になってしまいます。

ある日、下校途中の彼女は集団暴行を受けている少年を目撃し、その少年シャオベイをとっさに救います。優等生と不良という、出会うはずのない二人でしたが、それぞれ孤独を抱える二人は次第に心を通わせていきます。チェンに対するいじめは殴る、蹴る、果ては髪を切り、丸坊主にするなどエスカレートし、その果てに悲劇が起きます。

孤独な若者の苦悩をリアルに描写し、「いつか並んで一緒に歩きたい」、「君は世界を守れ、僕は君を守る」という二人の強い絆、純愛が切ないです。後半はミステリー要素もあって引き込まれ、2時間15分、全く長く感じませんでした。

「サンザシの樹の下で」のチョウ・ドンユィがニェン、アイドルグループ「TFBOYS」のイー・ヤンチェンシーがシャオベイを演じていますが、知らない人達なので、いっそう感情移入できました。真実を追求するか葛藤する若き刑事の存在も救いで、演じているのもイケメ俳優でした。