『下谷 屋久水』 台東区上野
御徒町の盛り場にひっそりと佇む小料理屋である。
上野から御徒町は、戦後のヤミ市を経て、色街なども含む一大歓楽街として繁栄してきた。
しかし時代の流れとともに往時の姿は失われ、現在は再開発と取り残されたエリアが混在する過渡期にある。
そんな混沌とした空気も、却ってこの街には似合うのかもしれない。
こちらのお店は、そんな街の歴史を今に語り継ぐ数少ない存在である。
現代の居酒屋でもない、まさに大人が小粋に酒食を楽しむ、かつての小料理屋としての姿がそのまま残る。
派手さは無いが昭和の時代から受け継がれたメニューは、どれも江戸の流れをどこかに感じさせるものばかり。
カウンターを見回しても、私のような中高年の一人客あれば、年季の入ったサラリーマンの二人連れあり、更にはどこぞの綺麗処を連れた老紳士ありと、静かで音の無い夜の世界が広がっている。
時折思い出したようにフラッと立ち寄る。
それだけで一つの満足を得られるお店である。
地下鉄上野広小路駅の交差点から北西の飲み屋街エリアの一角にある。
路地が入り組んでいるので、土地鑑の無い方はマップ検索をお勧めする。
左:突き出し。谷中生姜を齧りながらチビリとやる。夜の始まりである。
中央:御造り。一人前でもきちんと誂えてくれるのが嬉しい。
右:鳥 立田揚。唐揚ではなく、立田揚なのがいい。敢えて竜田揚と表記せず、立田揚と書くあたりも好きだ。
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