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2020年08月06日22:29

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妄想探偵社

〜探偵曳田誕生〜

僕が今こうして探偵という仕事を生業とする起点は
仕事帰りの夕刻の有楽町の駅前の街頭インタビューだった

何かが起きると世間一般の声を聴くべくテレビ局が派遣した
インタビューアーが質問内容ごとにお決まりの場所に出没する

親子 夫婦 家族 年配 の意見を聴くなら銀座のホコ天
若者の意見を聞くなら渋谷ハチ公前
サラリーマンの意見を聴くなら新橋駅前
そして多種多様の大人に政治や事件の意見を聴くのが有楽町駅前

「あのすみません 〇〇テレビの者ですが 少しご意見を伺う
こと出来ますか?」

駅前を通る人間は 帰宅 待ち合わせ等 時間に待ったなしが多いので
ごちゃごちゃ言っても素通りされるだけ なのでテレビ局という
キーワードとカメラとパネルをちらつかせ ははあん 5時から6時台
に放送される例のインタビューかと思わせるテクニックで
行く手を遮るることなく傍らを一緒に歩いて訊いてくる

ここは有楽町駅前で確か昨夜のニュースで著名人が被害者の一人で
行方不明の未解決連続殺人事件の時効が迫ると言っていたから
その件についてだろう
当時は殺人罪などの公訴時効が廃止されるなど思ってもみない時代
だから何かと騒がれていた

僕はいつもちょっと変わったニュースを見ると その背景とか裏側が
気になって 妄想に近い憶測をするのが癖
今回も僕なりに色々考えていたのでインタビューを受ける事にして
立ち止まった

「ご存じかと思いますが〇〇連続殺人事件の時効が迫っていますが
どう思われますか?」

やっぱり
マイクを向けられ カメラが迫り 記録の人がメモを取り始める

『ああ あの事件 もうそんなに経つんですね…』

と僕は言葉を切り 何か意見がありそなオーラを出す
これはいけそうだと三人組が僕を取り囲む

「事件に対してお詳しいようですね 何かお話伺えませんか?」

食いついてきた

『たんなる妄想ですからお話しするほどの事でもないと思いますけど‥』

ほんとはかなりいい推理だと思っている

「ぜひ お聞かせください」

『人権侵害に及ぶかもしれないので採用されたとしても放送できませんよ』

「編集しますのでご安心ください それに顔は映らないようにします」

三人が阿吽の呼吸でスタンバイする

『推理小説にもよくあるじゃないですか 行方不明で状況証拠から連続殺人の
被害者と思われた人が犯人だというケースって』

「と言いますと?」

『連続殺人犯がその被害者の一人になれば 捕まりようがないですよね
架空の殺人犯に殺されてこの世に生きていないわけですから』

「えーっと もう少し具体的にお願いできますか?」

ここから妄想に近い推理を具体的に話したので案の定オンエアされなかった
けれどもネットニュース版では《こんな大胆推理が!?》と小さく載った
それが大炎上した
そして暫くして妄想が現実になった
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