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2020年06月13日13:35

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empathy 他人の靴を履いてみる

Black Lives Matterの抗議運動が止まらない。
Black Lives Matterのテレビ・マスコミの定訳は「黒人の命"も"大切だ」のようだが、
本来の「黒人の命"が"大切」と直訳を避ける理由は、もとより人種に関係なく「命が大切」という「普通の事」を黒人に限定する違和感のためなのだろうか。そうであれば、いっそ「黒人の命が大変!」くらい意訳したほうが伝わると思う。

本来は人種や貧富に関係なくどの命も平等に扱われるべきなのにそれが蔑ろにされてるからの抗議なので、直訳でもいいと思うが。だいたい日本では動詞のmatterをうまく表現する日本語がない。学校で習うmatterの使いかたは定型文で
「What's matter?」とか 「It does't matter」とかくらいだし。
matterを名詞とみて「黒人の命の問題」と言ってもいいか。

ポールマッカートニーのBlackbirdの歌詞、今聴くとジワジワ来る。ポールが60年代の市民権運動に触発されて書いた作品だが、この部分は悲しい。

All your life、
You were only waiting for this moment to arise…

「this moment」が2020年になっても実は来てないんだから。

毎週金曜夜9時から放送のNHKラジオ第二「高橋源一郎の飛ぶ教室」を楽しみに視聴している。
先週ブレイディみかこさんの新刊「ワイルドサイドをほっつき歩け〜ハマータウンのおっさんたち」を紹介していた。
彼女の書いた「ぼくはイエローでホワイトでちょっとブルー」はコロナ流行下の日本で最も読まれた本らしい。これもいわゆる人種や貧富などの格差社会の問題を子供はどうとらえているかを描いたもの。この本が彼女の息子の学校の話なのに対して、今回のは近所のおっさんたちの話で、同時期に書かれた本らしい。高橋源一郎やヤマサキマリが推薦文を書いている縁もあり、ブレイディみかこさんが英国からリモートでゲスト出演していた。

彼女が話していたのは、コロナ禍で最も重要な働きをしている人たちは、いわゆるKEY WORKERと呼ばれる人たちで、ESSENTIAL WORKERとも呼ばれるが、医療や社会福祉、流通やインフラを支える人たちだ。英国の場合この職業を担っている人たちは労働者階級の人が多い。低所得できつい仕事日本でいえば3Kとか言われる職種。アメリカでも同様だろう。そしてそれに従事している人たちは黒人(ブラック)やアジア系(イエロー)が圧倒的に多く白人(ホワイト)から差別を受けている人たちだ。もちろん肌の色だけではなく金持ちや大企業に勤めるビジネスマンがテレワークで安全圏に避難できているのに対し、貧乏人が担っているのはテレワークできない仕事だし通勤も住環境も密だし感染リスクも高い。リスクと戦いながら社会を支えてくれている彼らKEY WORKERに対し心ない差別が起きている。感謝しなければいけないはずなのに。
ブレイディみかこさんの、民草(たみくさ)の解釈が面白かった。民草とは、大衆や庶民のことらしいが、社会の底辺に根を張って雑草のようにたくましく社会をささえている人たちのことで、新刊「ワイルドサイドをほっつき歩け」の愛すべきおっさんたちがまさに民草にあたるそうだ。
そして彼女がこれら著書を通していまとても大事だと思うことはempathyだという。

empathyとは? sympathyとの違いはなにか。
sympathyとは、自分と同じ立場の人に対し同情したり共感したりすることだが、empathyは、自分と全く立場の違う、たとえばあまり好きではない人かかわりたくない人のことでも想像力をはたらかせて、先入観を捨てて考えてみること。「他人の靴を履いてみる」ということ。

日本人はいま世界に広がりつつあるBlack Lives Matterについてもまだまだヒトゴトで、対岸の火事を見物しているふうである。単一民族国家なので実感しにくいとか言われるが、日本でもけっこうなヘイト案件は起こっている。自粛というのは「自らつつしむ」ことなのに、人に自粛を強要し自粛が緩い人を非難する(自粛警察)とか。
自分だけよかったらいい、自分の正義をふりかざす不寛容な社会とか。

全世界的に、このコロナ禍のもと、Black Lives Matterのような抗議運動が起こってきたことはある種必然だ。ダイバーシティの世の中では、sympathyではなくてempathyが必要なのだ。

PS
本の題名「ワイルドサイドをほっつき歩け」は、ルー・リードの曲「ワイルドサイドを歩け」のパロディだろう。そして副題の「ハマータウンのおっさんたち」は、英国ポール・ウィリス著の社会文化批評「ハマータウンの野郎ども」へのオマージュだろうか。
文中には1950年代後半生まれのおっさんたちが青春時代に熱中したパンクロックのクラッシュやキム・ワイルド、スパンダーバレエなどの固有名詞がいっぱい出てくる。いいね。
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