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2020年05月07日19:22

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リメイク奇跡な日々二十六「それでも」

「サートリ!どこだ!」

僕は走りながら叫ぶ。何処だ何処だ何処だ!

「―――ッ!」

叫び声が聞こえたほうへ僕は向かっていく。
消火された跡が増えていくのを見てさらに速く走る。
分厚い水の壁がありならず者達が浮いている。その中心にサートリがいた。
何かを膝の上に置き座っている。
水は木々を覆い火を消し、ならず者達を飲み込み増大していく。

『拒絶の生命水』

サートリが現実を拒否した時に魔量があふれ水と化し、周りの物を飲み込む。
味方と判断されたら傷が癒され、敵と判断したら命を飲み込み死に至らしめる。
もう火もならず者もいない。僕はナイフを手に取り、

『フェゴ』

ろうそくに火をともせるくらいの火をまとわせたナイフの刃で切っていく。
ふわふわと羽が治った妖精達が周りを取り囲む。水に触れて治ったのだろう。

「禁忌の子よ・・・」

サートリの膝の上に乗る妖精女王が声をかけてきた。

「奇跡の子は外でやっていけるのか?この森に居た方がいいのではないか?」

僕はナイフで切りつつ言う。

「この子には世界を見せたい。たとえどんな世界でも、この子が運命に勝てる様に」

「奇跡の子に背をわせたくせに!奇跡に子はここなら普通に暮らして死ねるというのに!」

妖精女王が怒鳴り声をあげる。僕は言い返す言葉もなくサートリとその膝の上に乗る妖精女王の前にしゃがむ。
サートリは目は開けているが意識はない。そんなサートリに僕は話しかける。

「サートリ、この世界は君にとって残酷だ。僕がそう背をわせてしまった。でもその分の幸せを君に感じさせてあげる。だから戻っておいで。僕と旅に出よう」

僕がそうゆうと彼女の瞳に光が戻り、

「あ、れ?自分、どう、して?」

目を覚ました。
ならず者達は水に飲み込まれ吸収され、燃えた木々は元通りになっている。
僕が殺した者達は木々の栄養として吸い込まれたようだ。

「奇跡の子よこの森に留まりなさい」

妖精女王がそうサートリに言うが彼女はきょとんとした顔で、

「自分、は、ドラッ、へと、居た、いから、旅、に、でる」

当たり前のようにそう言った。
荷物を整理しつつ木の実を摘み夕飯を食べる。
この森の木の実は美味しいのばかりで、サートリは嬉しそうだ。
食べ過ぎてお腹を壊さないか気になってきたところだ。すると、

「ドラッ、へ、だい、丈夫?」

逆に心配されてしまった。
何故だろう?微笑んで聞いてみよう。

「何でもないよ。どうしたんだい?」

「悲、しそう、な、顔、して、た」

「悲しいことはないよ?サートリが食べ過ぎてないかなと思っただけ」

「・・・そ、う?木の、実、美味、しい」

「木の実食べ過ぎだからストップ。ほら妖精達が待ってるよ」

僕がそう言うとサートリは食べるのをやめ妖精達の方へ向かっていった。

「・・・まだ・・・」

そうつぶやいた僕の言葉は夜の闇へと消えた。
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