昔、僕が子どもの頃、田舎に住んでいたので、ネズミがたくさんいたが、ネズミ取りの罠で捕らえたネズミは、水につけて溺死させていた。だから海を泳ぐネズミがいるなど、想像もできなかった。
◎ネズミに襲撃された宇和海に浮かぶ島
今から７０年前の１９４９年、宇和海に浮かぶ愛媛県戸島（写真）が、ドブネズミの大群に襲われ、しかも戸島に定着したネズミは、島民の食物となるトウモロコシ、サツマイモを根こそぎ食い尽くす大騒動が起こった。
最初に襲った大群は、隣の島から海を泳いできた。それは、漁民にも目撃された。そこで、島中を覆い尽くすほどに異常繁殖した（ドブネズミの場合、生後たった３カ月で性成熟して７〜９匹の仔を産む。妊娠期間は３週間ほどで、出産するとすぐに交尾し、また妊娠する。これを約３年の寿命の間、繰り返す）。
繁殖条件に恵まれた戸島のでは一時期、面積２平方キロちょっとの狭い島に１００万匹を越えるネズミが繁殖した。ちなみに島民は、当時、２０００人くらい。まさに島はネズミに占拠されたのだ。
◎繁殖条件の揃った島
前述のように戸島は、ドブネズミの繁殖に絶好の環境だった。
まず�‥慧┐�いなかった。島の山頂近くまで段々畑となり、山林が少なかったので、天敵の生息条件が整っていなかったのだ。�▲疋屮優坤澆留造�豊富だった。温暖な気候を利用して、その段々畑に島民は冬はサツマイモ、夏はトウモロコシを育てていた。そのすべてが、ドブネズミの餌になった。
また宇和海の特産イリコ（いわしの煮干）を浜で生産していた。これも、ドブネズミに豊富な蛋白源となった。
�２甲箸如�段々畑の石垣や当時の家屋などがネズミの生息に適していた。
◎ネズミに占拠された島の惨状
悲惨を極めたのは、島民たちだった。ラジオとなどもかじられ、壁に穴を開けられ、天井はネズミの大運動場になり、安眠すらできなかった。食物のすべてがネズミに食われ、一時は全村離村の危機を迎えた。
むろん県も、駆除剤をまき、あるいはヘビ、イタチ、猫などを放したりと、あらゆる対策を講じたが、すべての対策は失敗に帰した。
人は、ネズミとの戦いに敗れたのだ。その１０数年後、力尽きた島民たちは、若者を中心に島を捨てた。段々畑は、耕作されることもなくうち捨てられ、かつては活況だったイリコ製造も、不漁もあり、廃業に追い込まれた。
ここでさしものネズミも餌がなくなり、個体数を激減させた。
そしてその一部は、またしても大挙して海を渡って四国本島の方に去ったのである。
◎実はネズミは泳げる
観察によると、ドブネズミは１分間に５〜８メートルほど泳げるという（写真）。中には数百メートルも泳げる個体も存在するそうだ。
ネズミ、恐るべし。
恐るべしと言えば、ネズミは人類に次いで分布域を広げた動物だ。ヒトの行った所にはどこでも（ただ南極と北極はいないようだが）存在している。
そこで、ネズミと彼らの属する大分類群である齧歯類について、あと３回、連載していく。
（この項、続く）
注 容量制限をオーバーしているため、読者の皆様方にまことに申し訳ありませんが、本日記に写真を掲載できません。
写真をご覧になりたい方は、お手数ですが、
https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/201908120000/をクリックし、楽天ブログに飛んでいただければ、写真を見ることができます。
昨年の今日の日記：「乗鞍岳登頂記（２）：山頂までのはるか手前でもワイルドフラワーと美しい景観が楽しめる」
ログインしてコメントを確認・投稿する