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2019年06月23日23:56

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怪獣プロレスへと満ちる二次創作的雰囲気 『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』

条件付きだがゴジラは人類の味方。
これは子供映画として絶頂期にあったゴジラの設定そのままだ。

そのゴジラたち4大怪獣が激突。監督のオタク的愛情が炸裂する本作だが、
暴走する愛情に二次創作的雰囲気が漂う。

怪獣と交信を行う装置“オルカ”を作るラッセル親子。
母子は怪獣との共存を夢見、雲南省の密林に眠るモスラと交信する。
その現場を過激な環境テロ活動を行うアラン・ジョナが襲撃。
ジョナはゴジラの宿敵ギドラを“オルカ”で目覚めさせてしまう。

以後、作品は怪獣プロレスになるが、このプロレスは単純にものすごい。
圧倒的パワーでゴジラが吠え、ギドラが稲妻を放ち、ラドンは戦闘機を撃墜し、
モスラが神々しく光る。日本の特撮などもう過去のものだ。*1

……“ただ”――だ。
それらは過去作品の乱用でオマージュとするには複雑だ。

本作の土台はまちがいなく“護国聖獣”。*2
地球怪獣 vs 宇宙怪獣 *3 を基本に、モスラの歌や、氷漬けのキングギドラ、
オキシジェン・デストロイヤーの使用、バーニングゴジラも登場する。*4

まるで過去作品の切り張りで、
今年、ビッグサイトの同人作品にこれがあっても信じてしまいそうだ。
酷評の人間ドラマは芹沢博士の去就を含めちゃんとある。*5
ただ、父が妻子を追う設定が前作とかぶりすぎる。

場面転換が多く散漫な部分、二次創作的きらいに市場は正直だ。
世界興行は微妙で賛否両論の本作。*6 怪獣プロレスだけなら大変満足なのだが。


※1 「日本の特撮は特別」「特撮の進化は日本が牽引してきた」は、たしかにいままでならそうだった。だがそれはもはや「ノスタルジー」なだけだ。特撮の根底には「幼稚的」で「児戯的」な暴力性と破壊性が潜む。その根底の物量が、この作品では、なにからなにまでちがいすぎる。勝負にもなっていない。

※2 監督がシリーズ5作目(三大怪獣 地球最大の決戦)と、 25作目(ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃)の影響をうけているのはまちがいない。 5作目で登場した宇宙怪獣(ガイガンたちをふくむ)と、地球怪獣の対決は、ゴジラを正義の味方と化す代弁であった。本作はこの5作目の設定そのままだ。氷漬けのキングギドラやモスラの神聖は25作目に似る。ゴジラのソフトはすべて米国で入手可能だ。75年の「メカゴジラの逆襲(アメリカテレビ放送時の題名は「メカゴジラの恐怖」)」をふくめ、米国は複数作品をテレビで放送していた。現在44歳のマイケル・ドハティは、少年時代をふくめ、確実に日本のシリーズ作品を視聴している。

※3 キングギドラは、そもそも最初から宇宙怪獣であって、この設定は日本発祥のものだ。また氷漬けのキングギトラは、25作目で富士の洞窟に封印をされていた状態と描写がそのままだ。注目すべきは本作のキングギドラの自由意志だ。人間に封印されたわけでもなく、異星人の服従化にもなく、独自の本能で行動する。

※4 はっきりいってしまえば、どれもこれも本作独自の設定や描写、創作がないのだ。これでは米国ゴジラファンに同人(fanzine)と“断”されてしかたがない。ハンナ=バーベラ制作のアニメシリーズやマーベルコミックの方がデタラメでも、まだオリジナリティがある。

※5 人間ドラマがみたいならばオスカー作品や実話ベース/実録ベースの作品をみればよい。そもそも本作に人間ドラマを要求するのがお門違いだ。ただ、日頃、(映画だけではなく)真っ当な人間ドラマを十分見聞きしない人物が、「本作には人間ドラマがある」といっても、まったく信用できない。その言葉にも説得力は1つも“ない”。

※6 公開4週時点で(日本とアメリカの公開日時は一緒)、アメリカの興収は現在1億ドルにも到達してない。はっきりいってしまうと制作費用が2億ドルの時点で、これは大失敗のラインが近い。あと2週で最低もう1億ドル上積みが必要だが実現は不可能だろう。この結果にワーナーが『KONG』の公開延期を検討しているのも当然だ。
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