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2019年02月08日23:58

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おもしろさを削いでしまった“シリーズ断絶”のハードル 『蜘蛛の巣を払う女』

第1部を結末まで描かず第2部を開始した――そのハードルは非常に高い。*1

原作はシリーズ累計9000万部を誇る北欧初の世界的ベストセラー。
本作は、原作スティーグ・ラーソンの死後、
プロットを引き継ぐダヴィド・ラーゲルクランツが執筆した「ミレニアム」の続編だ。

天才ハッカー、リスベット・サランデルは、
「世界すべての防衛システムに侵入可能なプログラム」
をその開発者の依頼でNSAから盗み出す。
だがプログラムをめぐり彼女は自身の過去と対決する。

クレア・フォイは新生リスベットを頑張って演じる。
また監督の描くアクションも見せ方に新味があってよい。

警察の追跡に氷上をバイクで走り去るリスベット。
プログラムとリスベットを追うNSAのニーダムは、
位置測位情報をもとに屋内の目標をスマートガンで狙撃する。*2
毛色の違う内容が新鮮だ。*3

プログラムの鍵を握る少年アウグストのために、
わざわざランボルギーニを逃走車両へ選び出すリスベットなど交流部分も上手い。

“黒ずくめ”のリスベットにたいし、
彼女の妹のカミラは“赤づくめ”と色彩を意識した美術も鮮烈だ。

でも、やっぱり第1部を完結できなかった続編にケチは付く。

「途中経過がわからないから続編はいいや」「演者が一緒ではない」
と“ユーザーの興味が鈍る”のは当たり前で、*4
人気IPでも興収だけ見れば不評が予想以上だったことがわかる。

単体で見た場合、映画の出来は決して悪くない。ゆえに残念である。


※1 2009年版のミカエル・ブルムクヴィストはダニエル・クレイグ。リスベット・サランデルはルーニー・マーラであった。旧作の興行は十分だったし、映画の出来も好評だったが、続編の企画は2013年に権利・脚本の費用問題で頓挫。2015年にソニーは小説第4作目(本作)をもって「ミレニアム」のフランチャイズをリブートするのを発表する。前作キャストとの契約は終了した。

※2 SFめいているがこれは現実の技術だ。“スマートガン”は武器自身がデジタル制御で環境情報を判断し射手をサポートする。射手は引き金を引く決断をするだけだ。

※3 リスベットがハッキングする手法も現実に着地している。たとえば相手の無線機器が出す無線をハブ(中継)するためスマートフォンを持ち込ませるなどがある。

※4 「途中経過を無視して現在作品が展開している地点を描く」「シリーズとシリーズの間隔が開き過ぎる」の問題へ消費者は予想以上にシビアだ。“成功したIP”の続編を大事にしたい制作の気持は理解できるが、作品以外の調整や金銭の取り分で出足が停滞しているあいだに、買い手の熱量は落ちて冷める。続編の頃合や作品づくりに最良の条件を判断できることは、一種、制作の力量だ。
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