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2018年08月08日17:25

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八大龍王伝説【547 正統王国六将制度(前)】


 八大龍王伝説


【547 正統王国六将制度(前)】


〔本編〕
 龍王暦一〇六一年三月八日。
 正統王国と呼ばれるようになった『正統ソルトルムンク聖王国』は、六将制度を復活させた。
 八百年以上昔、奇跡の人材集結と言われた六将軍の制度を、現在に復活させたのである。

 今より八百年前の龍王暦二〇〇年頃、ソルトルムンク聖王国は、今のような超大国ではなく、他の七国と同程度の国土と国力であった。
 それを、一〇五〇年時、ヴェルトの人口の半数を有し、大陸の三分の二程の国土を持つ国家に成長させた出来事が、この龍王暦二〇〇年代の、『六将大戦役(ろくしょうだいせんえき)』という名の戦いであった。
 この名称の六将は、当時のソルトルムンク聖王国に実在した六人の大将軍のことであり、この大将軍たちの働きが、まさに聖王国を超大国へと一気に成長させたのである。
 それは、戦いの名に『六将』が冠されているところからも、窺(うかが)い知ることができよう。
 とにかく、百年に一人の逸材と言われるレベルの人材が、一つの國に同時に六人存在したのである。
 奇跡の人材集中とまで謂われるこの現象により、他の七国は完膚なきまでにたたかれ、國が滅亡しなかったのは、八大龍王間の八國を滅亡させることを禁じる約定のおかげであった。
 天界からの、八大龍王における度の超えた干渉により、他の七国はかろうじて滅亡を免れたが、それでも第二龍王バツナンダの建国したフルーメス王国は、ヴェルト大陸から追い落とされ、大陸の南に位置する小さな島のみでの國の存続を、余儀なくされる事態となるほどであった。
 その当時の八大龍王たちからすれば、大陸からフルーメス王国が追い落とされた時点で、聖王国に激しく干渉しそうなものであるが、龍王たちは、六将の力を恐れ、小さな島でのフルーメス王国の存続を妥協案として、聖王国と六将に了承させることによって決着したのであった。
 ヴェルト千年の歴史において、神々が人に妥協を請うたのは、後にも先にもこれ以外にはない。
 それほど偉大な六将のために作られたのが、聖王国の六将制度であった。
 常に複数の国家を相手に争っていた当時の聖王国において、戦争における全ての決定権限を六大将軍に与えたのであった。
 本来であれば、軍事上の全ての権限を持たせることは、非常に危険であり、それにより、いつでも聖王国から独立することも可能なほどであった。
 しかし、そこには王と大将軍たちの間の『鉄の絆』が存在した。
 その当時の王は、各国に『闘王』と呼ばれ、恐れられている程の戦うために生まれたような王であり、そういう意味では、六将という奇跡の人材集中も、この闘王あっての現象と言えるであろう。
 いずれにせよ、この王と大将軍がまず存在した上での制度が、六将制度である。
 組織や規則の前段として、『六将』という特定の人物がいたから成立した制度だったのである。

 話を戻すと、その六将制度を正統王国は、今の時代に復活させたのである。
 ステイリーフォン聖王子を冠に戴く正統ソルトルムンク聖王国が、その正統性を國内外に知らしめるための一つの方策と言える。
 さて、龍王暦二〇〇年当時の六大将軍の名称は、国家を繁栄させるのに欠かせない三つの条件からとった。
 『天の時』、『地の利』、『人の和』の三つの条件からである。
 実際に、聖皇国に改名する前の聖王国の軍の最高将位は、三将軍であり、その三将軍は、『天時将軍』、『地利将軍』、『人和将軍』という名称であった。
 実は、この三将軍の前身が六大将軍であり、六人の大将軍の名には、この六つの単語がそれぞれに含まれていた。
 『天』、『時』、『地』、『利』、『人』、『和』の六つである。
 この六つの単語に、それぞれ、頂点にふさわしい語が加えられ、『○○将軍』と呼ばれていたのである。
 六大将軍のそれぞれの名称は、『尊天(そんてん)将軍』、『優時(ゆうじ)将軍』、『重地(じゅうち)将軍』、『貴利(きり)将軍』、『高人(こうじん)将軍』、『強和(ごうわ)将軍』であった。
 六大将軍位に特に上下はなかったが、任命当時、年齢順で上からふられたことにより、今では何となく尊天将軍が六大将軍の筆頭で、強和将軍が一番末席のようなイメージが定着している。
 今回の正統王国の六将制度は、この名称をそのまま踏襲して、それぞれの人物を任命したのである。

 下記に列記する。
 尊天将軍――ハクビ。
 優時将軍――グラフ。
 重地将軍――ドンク。
 貴利将軍――エアフェーベン。
 高人将軍――ノイヤール。
 強和将軍――シェーレ。

 この任命の数時間後、シェーレからの天声で、将軍辞退について、ステイリーフォン聖王子とグラフに伝えられ、それは了承された。
 そして、六大将軍任命の翌日三月九日に、シェーレが強和将軍を辞退した旨が公に発表された。
 辞任の表向きの理由は、シェーレ自身が六大将軍の器でないこと、そして、シェーレは尊天将軍の軍師兼副官を務めるのが自分は適任とのことからであった。
 ここで、尊天将軍に任命されたハクビとは誰のことかという疑問が生じる。
 それについては、九日、シェーレが強和将軍を辞退した旨を大陸中に発表した際の、新優時将軍グラフからの言葉から伺うことができる。
「昨日三月八日、六大将軍の一人として、『優時将軍』位を拝命したグラフである。本日は、シェーレ殿が『強和将軍』位を辞退の件について、ステイリーフォン聖王子様の代理として、正統王国国民並びにヴェルトの全ての民に説明する! その事情について、『尊天将軍』位に任命されたハクビ様についても併せて説明する!」



〔参考 用語集〕
(八大龍王名)
 八大龍王(龍王暦二〇〇年当時の龍王。寿命から考えて、一〇五〇年時の龍王とは別人)

(神名・人名等)
 グラフ(正統ソルトルムンク聖王国の六将の一人)
 シェーレ(元ナゾレク地方領主。ヴェルト八か国連合東方戦線の指揮官の一人)
 ステイリーフォン聖王子(正統ソルトルムンク聖王国の唯一の聖王後継者)

(国名)
 ヴェルト大陸(この物語の舞台となる大陸)
 ソルトルムンク聖王国(大陸中央部から南西に広がる超大国。第八龍王優鉢羅(ウバツラ)の建国した國)
 正統ソルトルムンク聖王国(ソルトルムンク聖王国のこと。龍王暦一〇六一年のヴェルトの宣言で作られた言葉。略して『正統王国』ともいう)
 正統王国(ソルトルムンク聖王国のこと)
 フルーメス王国(南の弱小国であり島国。第二龍王跋難陀(バツナンダ)の建国した國)

(その他)
 六将大戦役(龍王暦二百年代の大戦争。ソルトルムンク聖王国の六大将軍が活躍した戦いであったため、その名がつけられた)
 六大将軍(龍王暦二百年頃のソルトルムンク聖王国の将軍制度。奇跡の人材集結時とも言われる時代の制度)
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