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2018年07月19日16:29

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7月15日 神保町花月 桂文三独演会「THE文三」

 5月6月落語を見なかったわけではないのだが、例年になく仕事がバタバタでたまの休みに落語を見ても気もそぞろ。感想文なんぞ書けもせず、久しぶりに何を見ても仕事、休みの日にも仕事のことしか考えられない日々。忙しい自慢をするつもりはないが、こんなにテンパっているのは社会人一年生の時期以来ではないか。確かに現在の仕事、今までの自分の引き出しには無い対応を要求される現場ではあるのだが。

 そんなこんなで過ごしているうちにワールドカップと歌丸の訃報。
 幾たびか伝えられる入院と、高座復帰の繰り返しの内に、「もうこのまま小痴楽が真打になって痴楽襲名したら披露目に出るんじゃ」という気になったりしたが、退院したから全快したわけではなく、本来なら落語を演じるような状態ではない人が、気力だけで演じ続けていたということなのだろう。近年は成金や、小痴楽の会のゲストで見る程度で、自分がちゃんと見たのはにぎわい座での「牡丹灯籠」の連続上演だったからずいぶん前になる。中でも「栗橋宿」が忘れがたい。

 14日は東神奈川かなっくホールでよこはま落語会「桂宮治・神田松之丞二人会」。
●前座 きいち「熊の皮」
●宮治「天狗裁き」
●松之丞「怪談乳房榎」
<中入り>
●松之丞「扇の的」
●宮治「青菜」
 きいち、前座らしからぬという感じはある。「スーパー前座」として一之輔に可愛がられていたころの宮治を思い出したら、宮治が早速「わたしも前座時代から一之輔師匠にはお世話になりましたから・・・」と、きいちを引き立てているアピール。それなのに「タメ口対応された」とか、いつものように露悪な宮治のどこまでホントかわからない話が続く。「天狗裁き」「青菜」と、二席とも長屋夫婦物ではあったが、どちらも盛って楽しく聞かせるところは大したもの。
 松之丞の「乳房榎」は、相変わらず講談聞いている感がない。落合、十二社と、馴染みの新宿界隈の地名が出てくるので懐かしい。

 今月初めに神保町の岩波ホールで映画「ゲッベルスと私」を見た際、吉本の神保町花月で桂文三が東京初の独演会というチラシを見てチケットを予約。つく枝時代に「ラクゴリラ」で見ているが、なんとも楽しそうに演じる姿が印象に残っている。そういえば五代目文三を襲名したのか。これが初めての東京での独演会らしい。
 チラシに銀シャリがコメントを寄せていたので、ゲストは銀シャリだと思い込んでいたが、吉本がそんな売れっ子を落語会に出すわけがなく、よくよく見るとゲストは喬太郎。これはこれでもちろん売れっ子なのだが・・・あれ、自分、同じ日に喬太郎が出る落語会のチケットを取っていたような・・・と手帳を見ると、中野の落語会が重なっちゃってるじゃないか。中野が2時、神保町が4時、東西線が通っているのでさほど遠くはないが、どうしよう?

 7/15(日)なかの芸能小劇場「心技体 19」 
●前座 きよひこ「たらちね」
●喬太郎「宗漢」
●扇辰「団子坂奇譚」

 前座は彦いちの二番弟子で、名前がゲイのデザイナーと同じだが女性。彼女の後に出てきた喬太郎が「本来は自分がトリの番なのだが、これから大阪で一番仲が良い桂文三の会にゲストで出るので」と一番手になったことの説明。本来この会は同期と楽屋で会うのが楽しみで「(客の前で)落語をやるのはついで」だそうだ。同期は皆弟子を一人、二人抱え、自分にも「弟子を取らないのか」と云う声が聞こえてくるが「大きなお世話」「いっておきますが、取りません」とバッサリ。ひとり取ってみて、その難儀さが身に染みたということなのだろうか。三三もだが、師匠が人気者だと弟子もヘンに注目されて辛いというところもあるのでは。文三の会の後は池袋の主任。暑いのに大変だ。しかしあれほどひどかった咳き込みも収まった様子で調子は良さそう。これこそ余計なお世話だろうが、歌丸のことを思うと煙草控えて欲しい。
 扇辰はマクラで「彦いちさんは木久扇師匠の二番弟子、喬太郎さんはさん喬師匠の一番弟子、自分は末の方の弟子だから羨ましい」で、実際自分が弟子を取ってみたら「一番弟子(小辰)はやはり特別なつながりがある」と。どうしても自分で万事一から教えなければならないかららしい。子育てと同じだね。

 中入り後は彦いちだが、途中で抜ける方がよくないだろうと判断して出て、早めに神保町へ向かう。神保町花月ほぼ満員。禿頭眼鏡の男性比率の高さは何なのか。

●文三「時うどん」
 つく枝時代と印象変わらず愛嬌満点の噺家さん。弟弟子のかい枝といい、吉弥ほど洗練されてはいないが、上方落語の面白さはしっかり残しつつ、アクは強くないので、東京でもきっと人気が出る人だと思う。「初めての東京での独演会だが、吉本は第一回と銘打ってはいないので、次があるかはわからない」と云っていたが、ぜひとも定期的に開催してほしいもの。
 「時うどん」は「近頃は東京でも上方の型で演じる方がおられますが・・・」と、喜六と清八がなけなしの十五文を出し合ってうどんを注文するところから。「時そば」では、翌日のそば屋が、前日とは真逆に、何一つ褒めるところがない如何に酷いそばを出すかというところがキモだが、「時うどん」では、ひとりで来ているのに、前日のやり取りを再現しようとする余り、うどん屋から気持ち悪がられる(「お代はいりまへんから早く帰って!」とまで云われる)喜六が可笑しすぎる。

●文三「七度狐」
 最近よく東京の前座さんが演じるのを聞く。何か「二人旅」流行ってるのかと思うくらい・・・。やっぱり喜六と清八のキャラがちゃんと生きている上方落語で聞く方が良い。自分が「ラクゴリラ」でつく枝を初めて聞いた時もこの噺だったと記憶。

●喬太郎「結石移動症」
 「大阪で一番仲が良い落語家さん」「年は下だがほぼ同期」と、喬太郎が大絶賛。何より「大阪で文三さんほどウルトラが語れる人はいない」。以前BS11の番組で出演してもらった時、収録が終わってから喬之助も交えて川崎の「怪獣酒場」に云ったエピソードをマクラで。なかなか熱が入った新作口演だったが、これ「針医堀田とケンちゃんの石」というタイトルだと思ってた。

<中入り>

●文三「ちりとてちん」
 東京の「酢豆腐」の方が良いと思う気持ちもあるが、これもまた演じ方次第なんだろうね。演じ方によっては、何を食べてもありがたがるだけの男を、また実の無い輩と感じさせる場合もあるが、これは、何を出してもありがたがる男を、「これはそういう気質の人間なんだからしょうがない」って面白がって付き合うご隠居さんの懐の深さが良い。正に演者の人格そのままなんじゃないかと思わせる。ちょっと喬太郎の推しに影響されているのかな。
 帰り際、「出口にこのたびの西日本豪雨災害の募金の箱を置いています。直接吉本が現地に持っていきますので、一円でも入れていただければ、余った本日のポスターにサインを入れたものをお持ちください」 大阪では地震、広島、岡山を中心に豪雨・・・もはや紀州のドンファンも文科省の不正入試忖度もどうでもよくなるほど、自然が人に与える異変は容赦がない。

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