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2018年07月25日11:53

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地獄めぐり_その1

地獄、煉獄、天国めぐりをした、と言っても温泉に行ったわけではなく、ダンテの神曲を翻訳した「神曲物語」を読んだのである。

ダンテの「神曲」はダンテが地獄、煉獄、天国を見聞する旅行記で、地獄篇、浄罪編(煉獄または辺獄)、天堂編(天国)の3部作となっている。
かなり厚手の本で読むのに骨が折れる。

ダンテ作の「神曲」は叙事詩で、「神曲物語」はこれを翻訳したものだ。
「神曲物語」 翻訳:野上素一で、この叙事詩を小説仕立てにしてある。

ダンテの神曲はいろいろな著作物に引き合いに出されたりしているので、昔から地獄について書かれているものだとは知っていた。
今回読んだ本はずっと昔に家内が買って読んでいたもので、私もいつかは読んでみたいと思っていたがなかなか手がつかなかった本だ。
少し前、寝る前の読み本を本棚から探していた時、目についたので読んでみることにした。

読んでみて気が付いたことは、ダンテの「神曲」についてまったく考え違いをしていたことだ。
私はダンテはドイツ人だと思っていたし「神曲」は17、8世紀のドイツ文学だと思っていた。
何故そう思っていたのかは思い出せないけどそう思い込んでいた。

あとがきを読んでみると、まずダンテは1265年フィレンツエ生まれのイタリア人だ。
「神曲」は1307年から書き始め、1320年までかかっている。
内容は小説ではなく全14,233行の韻文による叙事詩だそうだ。
そのため序曲からはじまり第**歌(**は番号)という構成になっている。

「神曲物語」は小説仕立てになっており、しかも3人称で書かれている。
つまり、”ダンテは**した”というように書かれている。

写真は
 1:「神曲物語」の表紙
 2:上野西洋美術館の庭にあるロダン作の「地獄の門」


あらすじをかいつまんで書くと、
ダンテが地獄から天国までを見聞する旅行記だ。
まずダンテが「くらやみの森」に迷い込み、ヴィルジリオ(の魂)という人物に出会うところから始まる。
ヴィルジリオ(ウィルジリウス)はダンテが尊敬する古代ギリシャの詩人で、彼が地獄と煉獄を案内するという。
そして2人は地獄の門をくぐって地獄へ降りて行く。

(ちなみに”地獄の門”は上野西洋美術館の庭にもある・・・裏に回ってみたが地獄の入口はなく、ただの生垣だった(^O^))

ダンテはキリスト教徒であり、キリスト教徒は地獄←→天国をこのように考えるのかと思うとなかなか面白い。
まず地獄は地下にあり、罪が重いほど地下深くに行く。
第一圏から第九圏まであり罪の内容によって行き先が違う。

罪を犯した者は地獄で永遠に責めさいなまれる。火で焼かれたり、体を切り刻まれたり、氷漬けになったりと様々な責め苦に合う。

こういった考えは世界中共通していて、日本でも悪いことをすると地獄に落とされるとか嘘をつくと舌を引き抜かれるなどど言う。
これはたぶん宗教といったものの根底にある考えだともう。
(生きている間に正しいことをしないと死んでから苦しむ。)

「神曲」の考えで面白いのは地獄は地下深く入っていき、ついには地球の中心まで段階があるということである。
いまから700年以上も前に地球は球体でしかも中心があるという考えがあったというのもおどろきだが、地獄は地下深くにあり、煉獄は地上にある。天国は空高く宇宙のかなたまで続くという垂直軸の考えも面白い。

日本では地獄の具体的な場所はわからない。どちらかというと水平思考である。
極楽浄土は西の彼方だし、ニライカナイは海の彼方だ。
あの世とこの世の境も道の途中にあり、ここから先はあの世の世界だというようなことになっている。

「神曲」はある意味荒唐無稽な話なので突っ込みどころは色々ある。
まず地獄は24時間以内に通過しなければならないという約束事になっているので、各階層を急ぎ通過していくが、次の煉獄に行くため地上に出なくてはならない。
地獄を深く降りて行くとき足は地球の中心を向いているが、地獄の穴は地球の中心を通って反対側まで突き抜けている。
そして翼が6個ある巨人が中心から地上までさかさまに突き刺さっている。
ダンテら2人は地球の中心から体を180°回転させその巨人につかまって地上まで登っていく。出てきた地上は南半球と言われ、入ったところより12時間時間が遅れているので日付は前日となり24時間を経過してないことになるという。
これはおかしい、北半球から中心を通り突き抜ければ南半球になり、時刻の時間差は12時間になるが、遅れた時刻になるか進んだ時刻になるかは北半球から見た南半球を東と見るか西と見るかで違ってくる。
グリニッジも日付変更線もない時代に地球の反対側の時刻が遅れるとはどうやって決めるのか。
そのほか24時間が経過時間ならば時刻がかわっても24時間は24時間である。

煉獄とは現世において罪を犯したけれども悔い改めたものが行ける場所となっている。

(地獄めぐり_その2へ)

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