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2017年09月18日09:05

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名前で呼んで

「おかあちゃん」
子供の頃、私は母をそう呼んでいた。
私の田舎では子供はみんな「おとうちゃん」「おかあちゃん」だった。

当時、親を「パパ、ママ」と呼ぶ人種は映画や少女漫画の中にしか存在しなかった。
そういう人種に憧れたのは「パパ」はダンディで暖炉の前に座って葉巻をくゆらせ「ママ」は髪をアップにしてオホホと笑い、割烹着なんか着てないからであって、当然その背景には「お金持ち」というタグが付いていたからである。

けれど高校生の時だった。
母親になったばかりの女教師が言った。
子供に自分をママと呼ばせようか、どうしようかと思っていた時、某所で「ママあ!」と呼ばれて出てきた母親が「ママ」のイメージとかけ離れた田舎の「かあちゃん」だったそうで、結局わが身を省みてその教師は子供に自分を「おかあさん」と呼ばせることにしたと。

その時私は子供に「ママ」と呼ばせる人種が田舎にも静かに浸透してきているのかとかすかに驚いた。

母親なってわかった。
「パパ、ママ」は実に子供が言いやすい単語なのだと。
その頃、時代は圧倒的に「パパ、ママ」が主流になっていた。
私は二人の息子に何の抵抗もなくパパ、ママと呼ばせた。

ところが長男は一年生になって間もない頃、帰宅してこう宣言した。
「小学生になったから、もうママと呼んじゃいけないんだよね。今度から「お母さん」と呼ぶね」
は?
学校で何があったのか知らないけど、まあいつかはそう切り替えなければいけないし「そうね」と頷いたら、何でも長男の真似をしたがる年齢だった次男もすぐにそれに倣った。

不思議と二人とも習慣でうっかり「ママ」と呼ぶこともなく、みごとに「おかあさん」に切り替えた。
私はなんだか自分がいっぺんに10歳くらい歳をとった気分になったものだ。
そしてその時思った。

いつかこの子たちが私の事を「おふくろ」と呼ぶ時が来たら…
そしたら、どんな気分になるだろう。
「おふくろ」のイメージが「父ちゃん、母ちゃん」の世界とセットだった私にとって、そう呼ばれることはあまり嬉しくなかったが、幸いなことに彼らにとって「おふくろ」は死語らしく、今の処私をそう呼ぶつもりはないみたいだ。

そう言えば…
次男がまだ私をママと呼んでいた頃、忙しい時に「ママ」「ママ」とうるさかったものだから「イヤ♡! 虹って呼んで!」と息抜きにわざと色っぽく拗ねたように言ってやったことがあった。

すると次男も心得たように私の声色を真似て、「♡に〜じ♡」と呼んで見せたものだから、けしかけた私の方が笑いを堪えるのが大変だったことがあった。

でも子供から名前を呼ばれたことはちょっと不思議な快感だった。
結局母親は名のない黒子みたいなものなのだ。
だから不倫なんかに走る主婦も出てくる。
…気がする。

だけどこれからは名前を持った生き方をしなくちゃ!
子供たちが巣立っていった老後こそ、自立が求められるんだから。

でも現実は…
「春の虹」が私の生き方を決めている。
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