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2017年04月07日12:30

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クラーナハ 500年後の誘惑

昔はゴシックやルネサンスの画家には全然興味なかった。しかし最近は印象派やモダンアートの展覧会にも少し飽きてきて、ゴシックやルネサンスの時代に興味が出てきた。

  クラーナハ展  国立国際美術館      2017年1月28日〜4月16日

ルカス・クラーナハ(父1472−1553)はヴィッテンベルグの宮廷画家として名を馳せたドイツルネッサンスを代表する芸術家。大型の工房を開設して絵画の大量生産を行うなど先駆的なビジネス感覚を備えていた彼は、さらにマルティン・ルターに始まる宗教改革にも深く関与した。

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       マルティン・ルター         ホロフェルネスの首を持つユディト 

1517年に開始された宗教改革からちょうど500年を数える2017年に、日本初のクラーナハ大回顧展が開催。先に東京で開催されていたときから観たいと思っていた。
彼の絵はレンブラントと同じくらい中欧の有名な美術館には必ずある。が、レンブラントに比べ日本ではあまり紹介されない。

歴史の教科書で有名なあのマルティン・ルターの肖像画はクラーナハが描いたものだ。 けれどもこの画家の名を何より忘れがたいものにしているのはユディトやサロメ、ヴィーナスやルクレティアといった物語上のヒロインたちを特異というほかないエロティシズムで描きだしたイメージの数々だろう。
一見無表情にみえる堅い表情やうつろな眼差しの中に女性の情念や底冷たさが見え隠れする。無表情ながらあられもないポーズで魅了する日本の春画のエロさとなんだか通じるものを感じる。


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ディアナとアクタイオン                 ルクレティア

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正義の寓意(ユスティティア)           ヘラクレスとオンファレ
                    

「正義の寓意」は画題も意味深だが、処女や聖女の高潔さをことさらに強調したきゃしゃな姿態はその未成熟さゆえに逆にエロイ。児童ポルノ的とでもいおうか。

「ヘラクレスとオンファレ」はハーレム状態におかれると、いかなる英雄も骨抜きにされる様子を描いた教訓的な作品
あの怪力ヘラクレスも美女たちの前では鼻の下を長く伸ばした、ただのスケベオヤジ。さらに彼の下半身がもっこり描かれているのも興味深い。

「ホロフェルネスの首を持つユディト」は敵将ホロフェルネスにまんまと近づき、その首をとって夫の敵をとった美しい妻ユディトの恍惚の表情が素晴らしい。討ちとられた首の表情やユディトの凝った衣服の細工まで詳細に描かれており、本展のハイライト作品だ。

クラーナハの描く艶っぽくも醒めた、魅惑的でありながら軽妙な女性たちは、当時の鑑賞者だけでなく遠く後世の人々も多く魅了してきた。
本展ではそうした画家の全貌を明らかにすると同時に彼の死後、近現代におけるその影響にも迫っている。

彼と同時代に活躍したデューラーほかクラーナハと同じ題材を扱った絵や、ピカソやデュシャンが描いたクラーナハへのオマージュも展示されていた。日本でも岸田劉生などの絵にクラーナハの影響がみられる。
森村泰昌も「ホロフェルネスの首をもつユディト」のパロディを描いており、特別展示されていた。

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