文化の日とされる今日は、7０年前、日本国憲法が公布された日です。
日本国憲法については、憲法改正の話が時々出てきますが、いつもお粗末な議論ばかりが、蔓延っているように思えてなりません。
典型的なのが、世論調査における質問です。何ら具体的な条文や問題点を示すことなく、いきなり憲法改正に賛成ですか？反対ですか？と訊いてくるのです。
メチャクチャです。
具体的にどういう問題があるのかが示されて、その解決方法の一つとして憲法改正という方法を採るべきか否かが論じられるのが本来のスジであるはずです。もし、何の問題もないなら、そもそも時間も労力もかかる憲法改正のようなことなどする必要はないのですから。
それをこんな乱暴な訊き方をされてしまうと、（全面的に改正すべきと考えている人、あるいは逆に一字たりとも改正すべきでないと考えている人でないかぎり）、通常の人はとても答えられないはずです。少なからぬ人々は、改正すべきか否かは問題あるいは条文によると考えているからです。
でも、実際にいきなり回答を求められてしまうと、大抵の人は根は真面目なので、なんとか答えようとして選択肢を探します。でも、選択肢には、「賛成」、「反対」、「どちらともいえない」といったものしかなく、肝心の「条文による」といった肢は用意されてないのがほとんどです。
このような場合、しょうがないから「どちらともいえない」を選ぶ人が多いでしょうが、「賛成」に〇をつける人も出てくるはずです。「条文によっては改正すべきと考える以上、憲法改正に「賛成」ということになるのかな。少なくとも、まるっきり「反対」とは言いにくいしな」といった考え方も成り立たないわけではないからです。
その結果、「賛成」の数が本来の実数よりも増え、「反対」が減るという数字のマジックが生じてしまい、この傾向が続くと、いつしか憲法改正は当然のことであるかのような空気が形成され、気が付いたら、回答者が想定していたのとは異なる条文（改正すべきでないと考えていた条文）についてばかり改正が論じられてしまうことになるおそれがあります。
なぜ、具体的な条文を挙げて、例えば「憲法9条の改正に賛成ですか？反対ですか？」と訊かないのか、あるいはこんなメチャな世論調査をするにしても、なぜ、「条文による」という、当然予想される肢を用意しないのか。
あんまり、憶測でものを言いたくはないのですが、多分、具体的条文を挙げた訊き方や「条文による」という答え方は、意図的に避けられていると推測されます。わざと「憲法9条の改正に賛成ですか？反対ですか？」とは訊かず、またわざと「条文による」という肢を用意しないということです。
というのは、このところ問題になっている天皇の生前退位の議論では、憲法改正に比べれば比較的まともな議論がなされていて、世論調査をする側、権力者側もまともな議論の在り方、本来のスジを知らないわけではないのだなと感じるからです。
そこでは、天皇の生前退位の是非という具体的問題が示され、大雑把に言って、3つほどの解決法が示されます。�，海諒�野の憲法ともいうべき皇室典範を改正して生前退位を認めるべきとする説、�∪諺安牋未惑Г瓩此�現行法の摂政制度の活用で対応すべきとする説、�Ｆ段緬，鮑遒辰董∈�の天皇一代に限り生前退位を認めるという説、の3つです。
ちゃんと、天皇の生前退位の是非という具体的な問題が示され、その解決方法の一つとして皇室典範の改正等の是非が議論されています。少なくとも、いきなり皇室典範の改正に賛成か反対かといった乱暴な議論はしていません。やろうとすれば、こうしたまともな議論もできるわけです。
なのに、事が憲法改正の話になると、まともな議論をせず、本末転倒な議論が蔓延るのを放置しているところを見ると、これはどうしても意図的にそうさせているのだと考えざるを得ません。
多分、まともな議論をされると、いつまでたっても憲法改正に踏み切れず、誰か（権力者）が困るのでしょう。そこで、その前にとにかく憲法改正の空気をつくってしまおうとの魂胆から、公平を装いつつ、その実条文や具体的な問題に目が行かないようにして、事実上回答者を（権力者側の都合のいい方向へ）誘導してしまうような質問、選択肢を用意し、こうした姑息なやり方を改めずに続けているのだと思われます。
その挙句、気が付いたときには、豊洲の盛り土のように、肝心要の部分がいつの間にかなくなり、改悪されてしまうということも十分ありうるわけで、それを思うとゾッとします。なにしろ、今の権力者どもはこんなとんでもない誓いをしているのですから、油断はできません。
https://www.youtube.com/watch?v=h9x2n5CKhn8
少なくとも、いきなり憲法改正に賛成か反対かを問題とするような議論にのることは、ヤツらの思う壺であることくらいは意識しておいた方がいいでしょう。
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