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2016年09月03日21:31

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8月30日 座高円寺 さらば橘家文左衛門 〜白鳥・遊雀の忘れたくない思い出づくり〜 


 三代目文蔵の襲名披露を控え、文左衛門の内に同期真打昇進仲間で「思い出づくり」をしようという企画の会。

●オープニングトーク
 白鳥・遊雀の二人だけ登場。前座修行も重なる三人。よく言われる通り当時は協会の前座の数が少なく(白鳥が云うには師匠連の破門が続いたから、遊雀が云うには文左衛門と白鳥が追い出したから)、先輩前座二人との思い出を語ろうとした遊雀にまずは挨拶を促す白鳥。遊雀の挨拶の後、白鳥が「こんばんは、柳家権太楼です!」。

●リレー落語「文七元結」
 今回は異例のリレー落語2本。最初が遊雀の「文七元結」。冒頭、噺に入りながら羽織を脱ぎ掛け、また慌てて着直す。吉原・佐野槌からの迎えに慌てた長兵衛が、女房の着物を奪うように着て出てくる。あまりの風体に驚いた佐野槌の番頭が気を遣って羽織を貸す・・・という筋の流れの中で必要な羽織の脱ぎ着なわけだが、この羽織が後半に渡って、いかに大きな意味を持つようになるかは、この段階ではわからなかった。
 さて、噺はどんどん進み、吾妻橋で身投げをしようとしている文七をキャッチ。50両を失くした件を聞いて、娘をかたに手にした50両を与えようと懐をさぐると借りたはずの50両がない!と、長兵衛も50両失くしたという無茶ぶり設定で、噺は文左衛門に渡される。

 狼狽えながら文左衛門登場。雪の吾妻橋、どちらも50両持ってないという状態で、とりあえず文七が長兵衛を伴い近江屋へ戻る。主人から文七の金は集金先にあったと聞かされるが、長兵衛の金はみつからないまま。近江屋の主人が50両を貸そうと申し出るが、但し7日間で、店の新しい土蔵の壁をきれいに仕上げてくれという条件付き。娘を取り戻すため、左官職人としての本領を発揮する長兵衛。無事完成させ、主人から対価の50両を受け取るが、そのとき店先に駕籠が着き、中からは娘らしく装ったお久の姿が。佐野槌の女将も現れ、元すりの番頭に言い含めて、借りた羽織を返す時に長兵衛の50両をすり取らせた・・・長兵衛の改心を促すためにやったことだが、このたびの見事な仕事を見て、もう大丈夫と思い、お久を戻すことにした・・・という目出度し目出度し。噺のつながりは?なところも多々あるが、その場で考えたとしたら良い出来では?

<中入り>

●リレー落語「メルヘンもう半分」
 まず白鳥。何をやろうかいろいろ迷ったらしく、「隅田川母子なんてどうかなとも思ったんですが、A子さまを文左衛門師匠がどう演じるか興味あるし・・・」という下手袖にいるかもしれない文左衛門にとっては恐ろしい発言を連発。そのまま雲助インスパイアWの改作新作へ。永代橋?のそばで椅子代わりに酒樽を並べ、ごく狭い小上がりがあるだけの安酒屋を営む夫婦。実はムーミン谷を出奔してきたムーミンとミイ。客もない吹雪の夜、早めに暖簾を仕舞おうと外に出ると、寒さに冷え切った男が一人、何か温かいものを飲ませて欲しいと店に飛び込んでくる。これがムーミン谷から江戸の町にやってきて、道に迷ったムーミンだった。スナフキンから燗酒を勧められ、「ふうふう・・・コクコク」とホットミルクのように呑むムーミンの仕草。これを文左衛門にやらせたかったのか! 
 思い出話の後に谷へ帰ったムーミン。立ち去った後に残された重い風呂敷包みを開けてみると、中からは(またしても)50両が。ムーミンとの友情と横取りを主張するミイの言葉との間で激しく動揺するスナフキン。その50両がノンノンが吉原に身売りして作った金(河馬尾太夫となって)だった。店を出たムーミンを追いかけてスナフキンは…文左衛門にチェンジ。

 文左衛門が困惑しながら「・・・ムーミンを見たことがない」と観客に向かって吐露。その割には「チンアナゴに似てる」ニョロニョロとか知っていたようだが? でもわかるよ。大阪万博のころに小学生だった下町の腕白男子なら、ムーミンなんか見てないだろう。その後の展開はラストに向かって一度文左衛門が投げ、また白鳥が高座に上がり、と何度か転じてメルヘンに大団円。「ネットには書かないように」という白鳥の念押しの通り、詳細には触れずにおく。

 文左衛門といえば笑点の若手大喜利では「ムショ帰り」キャラで、玉の輔と一緒に小学生男子みたいに蘭をいじっていたっけ。同時期に前座時代を過ごし、現在は真打になっている落語家たちから「競馬のある日は必ず楽屋で金をせびられた」とか「突然真夜中に電話で理由もなく怒られた」とか強面であるがゆえのワル伝説を聞いた。そのくせ落語の方は演じ方に幅がないというか、割とちまっとした印象。三K辰文舎でも扇辰、小せんに比べると物足りない。ひところは自分も喬太郎との二人会や主任の時に見に行ったりしたが、最近は寄席以外では見なくなってしまった。でも三Kといい、今日の会といい、文左衛門が友人という何物にも代えがたい宝に恵まれている人だということは良く分かった。みんなきっと、強面の裏側にある繊細さを愛しているんだろうね。9月下席から50日間に渡る襲名披露が始まる。
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