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2016年08月13日08:54

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僕たちの居場所論[読書日記588]

題名:僕たちの居場所論
著者:内田 樹、平川 克美、名越 康文(うちだ・たつる、ひらかわ・かつみ、なこし・やすふみ)
出版:角川新書
価格:860円+税(2016年5月初版発行)
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マイミクさんお薦めの鼎談集です。(内田さんの本は47冊目)
鼎談しているのは、内田樹さんと旧知の二人(平川克美さん、名越康文さん)。

目次を紹介します。
 「はじめに」にかえて 偶然の喫茶店主(平川克美)
  第1章 いちばん自分らしい場所
  第2章 つながるということの本質
 「中締め」にかえて 居場所という聖域(名越康文)
  第3章 感覚の違いについて
  第4章 興味・関心について
 「おわりに」にかえて 人通りの多い書斎(内田樹)

鼎談者の三名が「はじめに」「中締め」「おわりに」で一言ずつ語る構成です。
第1章〜4章、それぞれ論壇風発し(というか緩い対話なので、活発な論争を期待して読むと外れですが)、話がどんどん展開していきます。

4章、それぞれ面白いのですが、ここでは、「第3章 感覚の違いについて」から、内田さんの言葉を3つ引用します。

1.嫌韓など、韓国を攻撃する一部の人々がいることについて
 内田「わかっているのは、攻撃の標的になるのは社会的少数集団で、どれほど攻撃しても有効な反撃がないという保証があること」(略)
 名越「えぇ」
 内田「だから、ヨーロッパにおけるユダヤ人と日本における韓国人というのは、社会的な立ち位置は近いと言えば近い。」(186p)
社会的に弱い立場の人を攻撃する軽蔑すべき集団は、どの国、どの時代にもいるようです。

2.今の中国は以前よりマシであるという説
 内田「第二次世界大戦のあとも、アジアではほとんど全期間戦争をやっているわけですよ。
    朝鮮戦争があって、ベトナム戦争があって、インドと中国の紛争があって、チベット侵攻があって、中国とベトナムの間でも戦争があって……。中国はずっとその戦争の当事国だったわけでしょ。
    それに比べると、いまの中国はまだ抑制が利いているほうだと思う。文化大革命なんて、1966年から10年間、中国は内戦状態だったんだからね。死者が1000万人とか言われてるけれど、いったいその時期に何があったのかについての公式資料さえ存在しない」
 名越「ほんとうに最近ですよね」
 内田「そういう時代に比べると、今の中国指導部ははるかに論理的に行動していると思いますよ」(216p)
尖閣諸島領海への中国船の侵入が繰り返されていますが、それでも「論理的」なのか、今の内田さんの見解を聞きたいところです。

3.現代日本人の破滅願望について
 内田「自滅志向というのは、なんとなくするね。(略)
    それは日本のシステムを見ていても感じる。たとえば、大震災の後に、直下型地震のリスクがあるとわかっていても、首都機能を東京に集中させたままでしょ。まじめにリスクヘッジを考えていたら、首都機能を分散させるというのは極めて合理的な選択なんだけれど、何もしていない。(略)
    だって、東京からいちばん近い百万都市って、新潟なんだよ。東京で何かあったら、関越自動車道で新潟から物資を運ばなくちゃいけない。(略)
    リニア新幹線なんか通す暇があったら、首都圏3500万人をどうやって災害から守るか、そのリスクヘッジに資源を優先配分するべきなのに、何もしていない。これは、現代日本人の破滅願望が無意識に表れているんじゃないかな」(222p)
首都圏に大災害が起きた場合の対応が手薄いことについては、個人的にも危惧しています。
救援物資も国が言っている「3日以内に届く」は怪しいのではないでしょうか。

無理に着地点を見つけない鼎談というのも、この三人だからこそ成立する形だと思いました。

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内田 樹(うちだ・たつる)
1950年、東京都大田区生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。東京都立大学大学院博士課程中退。
神戸女学院大学文学部総合文化学科教授を2011年3月に退職。現在、同大学名誉教授。

平川 克美(ひらかわ・かつみ)
1950年、東京都大田区生まれ。75年、早稲田大学理工学部機械工学科卒業。
現在は株式会社リナックスカフェ、声と語りのダウンロードサイト「ラジオデイズ」などの運営のほか、立教大学大学院ビジネスデザイン研究科特任教授も務める。

名越 康文(なこし・やすふみ)
1960年、奈良県生まれ。精神科医。相愛大学、高野山大学客員教授。専門は思春期精神医学、精神療法、臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析などさまざまな分野で活躍中。

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