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2016年07月30日10:23

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自閉症の僕が跳びはねる理由[読書日記586]

題名:自閉症の僕が跳びはねる理由
著者:東田 直樹(ひがしだ・なおき)
出版:角川文庫
価格:560円+税(平成28年6月初版発行)
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重度の自閉症である著者:東田直樹さん(1982年生まれ)が十三歳の時に書いたエッセイです。
職業柄(職場で知的障碍者と接しているので)読みたかった本ですが、数年間再版されず(かつ図書館では予約待ちが130人という状態)にいたところ、角川文庫から発行されたので、さっそく読みました。

「著者紹介」欄にあるとおり、筆者は“会話のできない重度の自閉症”ですが、“パソコンおよび文字盤ポインティングによりコミュニケーションが可能”なので、その方法で本書を執筆したようです。

章立ては5つに分かれており、全部で58の著者の思いが『第一章 言葉について』から『第五章 活動について』に分類されています。
それぞれの章から、印象に残ったところを抜き書きします。
なお、→は私の感想です。

「はじめに」から。
“僕は今でも、人と会話ができません。声を出して本を読んだり、歌ったりはできるのですが、人と話をしようとすると言葉が消えてしまうのです。
 必死の思いで、1〜2単語は口に出せることもありますが、その言葉さえも、自分の思いとは逆の場合も多いのです。(3p)
 →私の職場にも、意味不明な発言をする人がいるのですが、もしかすると「必死の思い」で紡ぎだした言葉だったのかもしれません。

「第一章 言葉について」の『2 大きな声はなぜ出るのですか?』から。
“ひとり言が大きくてうるさい、と言われます。肝心なことを言えなかったり、小さな声で話したりするのです。僕もいまだになおりません。(16p)
 →私の職場にも、ひとり言が大きくてうるさい人が何人かいます。

「第二章 対人関係について」の『14 声をかけられても無視するのはなぜですか?』から。
“ずっと遠くの人が、僕に声をかけても、僕は気がつきません。
 「そんなことは私にだってあるわ」とみんなも思うでしょう。
 僕が悲しいのは、すぐ側にいる人が、僕に声をかけてくれた時も気がつかないことです。
 気がつかないということは、知らん顔していることとは違います。だけど人は、僕のことをひどい人だとか、知能が遅れている人だと思います”(40p)
 →私の職場にも、声をかけても知らん顔する人が何人かいます。

「第三章 感覚の違いについて」の『33 衣服の調整は難しいですか?』から。
“厚い時や寒い時に、その気温にあった服装や衣服の調整をすることが、僕にはできません。自閉症の人で、いつも同じような服しか着ない人もいます。(略)
 僕たちには、よく分からないのです。例えば、暑くて倒れそうでも、暑いことは分かりますが、服を脱げばいいということを忘れてしまいます。(81p)
 →私の職場にも、この暑さの中、長袖を着たままの人がいます。

「第四章 興味・関心について」の『37 手のひらをひらひらさせるのはなぜですか?』から。
“これは、光を気持ち良く目の中に取り込むためです。
 僕たちの見ている光は、月の光のようにやわらかく優しいものです。そのままだと、直線的に光が目の中に飛び込んで来るので、あまりに光の粒が見え過ぎて目が痛くなるのです。(89p)
 →これは私の感覚とは違います。“光の粒が見え過ぎる”という表現は独特ですね。
  そういえば、福岡ハカセはフェルメールの作品を評する時に“光の粒だち”という表現をされていましたね。

「第五章 活動について」の『56 視覚的なスケジュール表は必要ですか?』から。
“予定は予定であって決定ではないと分かっていますが、一度決まったことが守られないのが納得できないのです。僕も、変更も仕方がないと分かっています。それでも、脳が僕に『それはダメだ』と命令するのです。(134p)
 →私の職場にも、スケジュールが変わると異常に嫌がる人がいます。

本書は英訳されていますが、翻訳者(作家)のデイヴィッド・ミッチェルは「解説にかえて」で次のように言っています。
“二十四時間、週七日(略)こんなにも世話をしなければならない相手が、自分自身よりも多くの点で能力があるという事実など、いとも簡単に忘れられてしまう”(182p)
ミッチェル氏自身、自閉症の子供の親でありながら、本書を読むまで、その内面を理解できなかったそうです。

日々接する人たちのこと、その親御さんたちのことなどを思い浮かべながら、読了しました。

追記:
本書を読んでいる中、相模原市緑区の知的障碍者福祉施設で悲惨な事件が起こりました。
(知的障碍と自閉症は異なりますが)障碍者に対する偏見・短慮が産んだ異常な犯罪に慄然としました。

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東田 直樹(ひがしだ・なおき)
1982年8月千葉県生まれ。
会話のできない重度の自閉症でありながら、パソコンおよび文字盤ポインティングによりコミュニケーションが可能。
13歳の時に執筆した本書『自閉症の僕が跳びはねる理由』(エスコアール)で、理解されにくかった自閉症者の内面を平易な言葉で伝え、注目を浴びる。同作は国際的作家デイヴィッド・ミッチェルにより翻訳され、2013年に『The Reason I Jump』が刊行。現在28か国30言語で翻訳、世界的ベストセラーに。
執筆だけでなく講演活動も精力的に行い、その言葉は多くの人々に勇気と感動を与えている。
著書に『あるがままに自閉症です』(エスコアール)、『跳びはねる思考』(イースト・プレス)、詩集『ありがとうは僕の耳にこだまする』(KADOKAWA)
他多数。
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