mixiユーザー(id:168303)

2016年01月27日23:28

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氷の花火

JAPAN COOL BEAUTY というかASIAN BEAUTYのはしりとなった伝説のトップモデル、山口小夜子の半生をたどったドキュメンタリー映画を観てきた。
http://yamaguchisayoko.com/

クールな外見の中に秘められた炎。強烈なインパクトを残すがその美しさは一瞬で、はかない花火。「氷の花火」はまさに山口小夜子にぴったりの表現だと思う。

フォト フォト

映画は彼女の遺品の開封から始まる。
KENZO TAKADA、やまもと寛斎、立花ハジメなど、彼女にゆかりの人たちがそれぞれの山口小夜子を語る。
そして、最後に、山口小夜子を全く知らない若いモデルを起用して山口小夜子を蘇生させる。

山口小夜子は私たちの年齢ならだれでも知っている。おかっぱ頭に切れ長の眼。日本人形を思わせるその神秘的な容姿は、外国人にとってはこれぞJAPAN BEATYだったろうし、同じ日本人の私たちにも強烈なインパクトを残した。

なにより資生堂の専属モデルとして多くのCM作品を残し純日本美のカリスマであった。

ニューズウィーク誌で世界の有名モデル6人に選ばれた。スティーリー・ダンのレコードジャケットにもなった。セルジュ・ルタンスをはじめ池田満寿夫、ペーター佐藤など多くの芸術家にも描かれた。


彼女はもともとあぁいう容姿なのだと思っていた。しかし素顔の彼女は実はまるくて大きい目なのだという。あの蟇目鉤鼻の独特の容姿はある意味特殊メイクによって彼女自らが作りあげていったものだったという。

たしかに山口小夜子は一個人というよりアイコンでありキャラクターである。マリリンモンローやキティちゃんと同じで広く大衆に浸透し時代を超えて生き続ける類のものだ。

和装でも洋装でもいかにもJAPAN(日本的)な小夜子メイクが世界で認識され、いまでも好んで採り入れられている。たとえば椎名林檎や鳥居みゆきのメイクは完全に山口小夜子を意識している。
彼女のメイクは日本を代表するグラフィックデザイナー、亀倉雄策、田中一光のモチーフとも重なる。
彼女は単なるモデルではない、自ら山口小夜子というキャラクターを作り出したクリエイターでありプロデューサーでもあった。

世界のトップモデルからデザイナーや舞台女優の世界に転身してからの彼女の足跡はほとんど知らなかった。あの独特の容姿のせいでなにをやってもどこにいっても山口小夜子でありつづけることが彼女にとって幸運だったのか不幸だったのか。
彼女の私生活は謎に包まれているが、仕事以外ではほとんどずっと映画や演劇を観に行ったり家で本を読んだり、勉強していたという。

彼女の遺品の中には膨大なドレスやアクセサリー以外に、ゴダールなどの大量の映画ビデオ、安部公房や寺山修司などの著書、哲学書に至るまでおどろくほどの書物があった。

そして彼女の逝き方がまた儚なすぎる。
ちょっとしんどいので寝れば治るから、と言って自宅に帰った翌日、急性肺炎で帰らぬ人となったそうだ。真夏に肺炎…。まるで花火が夜空にぱっと開いて消えるように彼女も突然世の中から消えてしまった。

享年58歳。彼女はCOOL BEAUTYからETERNAL BEAUTYとなった。

よく猫が自分の死期が近づくとすーっと消えていなくなるというが、彼女はパーティーなど盛り上がっている場所から、誰にも気づかれないようにすーっといなくなるのが上手な人だったという。生き方も死に方もまったく彼女らしいし、誰にもまねのできない孤高の人生を生きた人だったのだろう。

    美しいことは、苦しいこと・・・・  (山口小夜子のことば)

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