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2014年12月02日05:32

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「くちづけをする音楽」天才・菅沼聖隆の世界

私がUFO(仮)大学で出会った菅沼摂子さんのお子さんは
菅沼聖隆(まさたか)さんという。

彼は(赤ちゃんの頃から知っているから、つい「まさくん」と呼んでしまう・笑)は、
国内ギターコンクール6連覇の天才少年である。
17才の時、名手・智 詠さんと組んで、スッとCDデビューしている。
「El baile de la Juventud 」(もうAmazonでは手に入らない!)
いや、彼はいまはもう立派な青年で、スペイン・セビリアの音楽学校にいる。

ブログ http://kumajiro578.blog.fc2.com/ 「熊次楼の音楽(鉄道?)ワールド」
(リンクが飛ばない場合、ブログ名からもGoogleで検索可能)

まだ海外での新生活は始まったばかりだ。

お母さんの、旧姓 宗摂子さんとは大学1年の時から知り合い、一緒に日本画を専攻し、
卒業制作の時には一緒に、天井の高い天窓の広い、人数の少ない(なにしろ日本画は油絵のイーゼルのようなものがなく、広い台に平に乗せ、ひざまずいて描くのが基本である。)冬の季節、真夜中の寒い寒いガランとしたゼミ室で
「あ、また膠凍っちゃった!(ゼラチン質なのでゼリー状になる)」
「湯煎、湯煎よ〜!」
「寒いねえ…」
「石油ストーブひとつっきゃないからねえ。あ、私、画面も凍って来た…」
「ドライヤーは?」
「だめよ、無理に乾かしちゃ、混色だから粒子の沈殿比率が変っちゃうわ。」
「じゃ、湯気あてよう、ヤカン、ヤカン!」
などと大騒ぎして頑張った覚えがある。

が、同時に彼女は「フォルクローレ部」で、
「これ、アルマジロの甲羅で作った楽器、『チャランゴ』っていうの。」
と、銀細工のような細い指を上手に操って、不思議な音楽を聴かせてくれたりした。
で、ケーニャ奏者(サンポーニャも、つまり芦笛全般の名人)で、しっかりフォルクローレのふるさとボリビアの、標高4千メートルの首都ラパスに行き、高山病になりながらちゃんとTV出演し、平然と演奏してのけてボリビア国民の拍手喝采を浴びる「菅沼由隆」さんと結婚したのである。
結婚当初お父さんはお勤め人であった。が、子供が授らないので、
「会社を辞めてプロになるよ。」
「じゃあ、私働くわ。」
となったその途端!
諦めていた子供が授った、それが弦楽器の名手摂子さんと管楽器のプロ由隆さんとの
「スーパーハイブリッド・菅沼聖隆さん」である。

なにしろ私たちは20年前の披露宴で演奏してもらい、その後近所の都営住宅に当選、引っ越しの時お手伝いさせていただいた。
ミュージシャン夫婦の慎ましい暮らしで、業者を頼まず、友達と由隆さんのお母さん、7人で高層建築にエッッサカホイサカ荷物を運んだ。
聖隆クンが生れて、遊びに行ったとき、壊れたお古の赤ちゃん体重計を、
「どれどれ…」
とドライバー1本で修理したのがドッコイ氏、お乳ををあげる摂子さんに
「私、未熟児で保育器・人工ミルク育ちなの、ひとしずく飲ませてー♪」
とねだった私は、実はこの天才ボーイと「乳姉弟」なのである。えへ♪

で、音楽一家の親なので、自由に楽器で遊ばせていたら、ビデオで名手が演奏するのを見ているうちに自然とギターを弾き始めちゃった天才くんは、だから弦を逆に張るサウスポーである。

お父さんと夜中に獲りにいったクワガタたちを愛し「クワガタの曲」を作曲し、図鑑で見たヘラクレス大カブトにあこがれ「ヘラクレス大カブトムシ」を舞台で即興で弾き、とにかく『放っておいても天才は天才』なのであった。

が、「天才ゆえの困難」もあり、
「来年はもう特別クラスに…」
と小学校の担任に言われた摂子さんは、旧制師範学校卒の元・町田の小学校名物先生「母・杉浦芳子さん」に相談に来たことがある。(母は「特別クラスの担任」も勤めたことがあった。)
結局次の先生が理解ある方で、彼は普通クラスで小学校を卒業する。
だがブログを遡るとやはり
「周囲の理解の無さと差別に苦しんだ。」
という記述があり、本当に、進んだ学校が良くて、周囲に理解され、のびのび音楽に励み実績を残し高校を卒業、賞を取り、在学中にCDデビューし、舞台を踏み、この秋から海外留学、この先どう伸びるのか楽しみな存在である。

Amazonではもう手に入らないので、彼のファーストアルバム「El baile de la Juventud 」を聴きたい人は sarr_mam@yahoo.co.jp にご連絡下さい。
2500円+送料・梱包費である、お気軽に。
(近くに住んでいるので、わたし宛メッセージでも転送します)


さて、元漫画家で、実は「物語詩」の詠み手でもある私にとって「El baile de la Juventud 」に収録された繊細で涼やかで優しいそのメロディーは
「くちづけをする音楽」なのである。

たとえば「5」は、古いアパルトマンに住むファッションデザイナーの卵ふたりの物語だ。

閉ざされた窓の外は小雨、
ふたりはしずかに、しかし
真剣に煮詰まっている。
必死に論じあう
おさえた声で。
アパルトマンは古く壁はうすい、
となりには人が住んでいる。
どなりあったら聞こえてしまうだろう。
小雨は降りつづけている。
ふたりはそれを
黙って見つめ、
そして同時に何かをひらめき
ハッとして見つめあい、
静かに・そっと
お互いのほほにくちづけをする。
外は小雨が降り続けている。
そんな時、
低いラジオの中から この曲が流れている。


「4」
ふたりはもう
若い少年少女ではない。
きちんと時をつみかさね
お互いに支えあい
見つめあってきた。
夜の広場にはランタンの波
小さな噴水。
そのまわりを腕をくんで
ふたりはゆっくり歩く
まるで少年少女のように。
若者たちが足早に
何か騒がしい声でしゃべりあいながら
ふたりを追いこしてゆく。
若者の群れがすぎ、
ふ、とふたりはあゆみを止める
ランタンの灯がともる中
くちづけをする
広場の居酒屋からこの音楽が流れてくる。


「8」
大きな祭りの朝まだ早き
大丈夫今日はいい天気
べっぴんさんも来るぞ 外国の人も来るぞ
さあ手わけして はじめよう祭りを
パレードの衣裳はいいか
飾りものは充分か
飲みものはたっぷり準備したよな
甘い菓子も沢山つみあげ
さあ祭りが始まる。
ねぼすけ神父さまを呼びにいけ
その前に
人々はみな肩をいだきあい
ほほにくちづけをするのだ
今年も良い祭りにしようぜ
なあ、
さあ、日が昇り来た、祭りのはじまりだ。
そんな時、朝風にのって、この調べが聴こえてくる。


「6」
曲がりくねった路地うら
丸い石畳の小道を
もつれつつある足でふみしめて
少年から青年に移りゆく
しまったワインを飲みすぎた
男の子ふたりがあるいてゆく。
今日の宴はあの娘(こ)が良かったおしゃまで
あの娘も良かった笑顔がステキで
あの娘がいい、うんボクも
あの娘がいいな、そうさあの娘だ
いや、あの娘はボクが獲るんだ
なんだと彼女を恋人にして
みせるのはボクさ、
曲がりくねった石畳、若いふたりは
もつれる足でたどってゆき
ふと肩がふれあい、みつめあい
ほほにくちづけをささげあう
ずっと友だちでいようぜ
ボクたち。
そしてふたりはこの曲を口笛でピィッと吹く


「9」
カーブの連続
山の中の古い道
車も古い、でもガソリンは満タン。
でも飲みものがもうつきた。
ふたりは黙り込んでいる
ふるぼけた
カーラジオからこの曲、
ああ、またカーブ!
少し速度をおとし
ふたりは黙り込む
私でいいの?
ボクでいいのかい?
そのとき彼女がさけぶ
まって、もどって、湧き水よ!
ふたりはたらふく新鮮な水を飲み
ビンにたっぷり詰めこんで
くちづけを互し、ふたたび走りだす


「10」
夜行列車の旅は続く
寝台で眠りにつけず
とざされた窓ガラスの外
寒い外の世界の街の灯の流れを
話す言葉もなくながめている

どこから来たんだっけ
どこへたどりつくんだろう

列車は静かに おごそかに走る
流れる冬の灯々
人生も流れゆく、汽車旅のように
外の灯がきれ
ガラスに自分のもはや若くない
顔が写る、その姿は
ふしぎなことにとたんに
旅を始めたあの日に戻ってゆき、
ふっとガラスにくちづけをする。
さあ、旅立とう
良い人生を。
そのときその耳に、懐かしいこの曲が聞こえる



このエッセイは「UFO文學14年度冬季号」に掲載しますので、引用・盗作を固く禁じます。発覚した場合は提訴します。
 
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