mixiユーザー(id:18627182)

2014年12月03日19:49

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『未明の闘争』を読んでみた。

未明の闘争
http://mixi.jp/view_item.pl?reviewer_id=18627182&id=2631087

<以下、レビューページより転載>

大好きな作家・保坂和志の実に7年ぶりとなる長編小説。
いや「大好き」て言っといて、刊行から1年も経ってから手に取るとは、、、ファン失格だなあ。。。(-_-;)
とにかく、2013年の野間文芸賞も受賞してます、秀作でした。

毎度のごとく、筋らしい筋はなくて、「分身」の話とか「前世」の話とか、むかし飼ってた犬の話とか、いま飼ってる猫たちや友達の家にご飯を食べに来る猫たちの話とか、、、まあそんな「どうでもいい話」といってしまえばどうでもいいような話が、どんどんリンクして、というか、前の話からスライドしたり、脱線したり、わき道にそれつつ混濁したりしながら次の話に移ったり、また元の話に戻ったり。そんなような振幅を繰り返して、小説は先へと進んで行くんですが。。。

その何が面白いのか? と訊かれても、ちょっと「なかなか答え辛いような面白さ」が魅力の作品なんですよねぇ(;´∀`)
元同僚の葬式に参列した帰りに、久しぶりに会ったおなじく同僚だった何人かの間で交わされるやり取りの面白さとか、中国人キャバクラで『雨月物語』について駄弁ってる時、あるいは学生時代の友人のアキちゃんと『分身』について駄弁ってる時の面白さとか。かつての飼い犬ジョンやポチについての描写、白血病を発症して早くに死んでしまった猫のチャーちゃんについての描写、友達(たぶんアキちゃん)の家にご飯を食べに来てた猫のファミリー(「お母さん」「マーちゃん」「美人ちゃん」「シロちゃん」「コンちゃん」など)についての描写などが持つ、心揺さぶってくる感じとか。不倫相手とのやり取りの妙とか。
そういうのの「よさ」て、実際にそれについて書かれてる文章を読まないと、、、いや、そこの部分だけを抜粋して読んでも多分「よさ」は伝わらなくて、やっぱり「作品の流れの中で」読むから、「よさ」がわかるわけで、そうなると、もう最初っから最後まで本作品を読んでもらわないと。。。ということになる。しかし、そんな風にしてでしか魅力の伝えようがような小説が、結局わしの「好きな小説」なんですよねぇ。て、本書を読んで改めて認識したという。

全体に「私(作者あるいは本書の主人公)」の個人的な「体験」や「考え」や「記憶」が書いてあるわけですが、それを読むことによって、「読者自身(わし)」が忘れかけてた、あるいはもうすっかり忘れてしまってた自分の「体験」や「記憶」を蘇らせるという。
そんな風になるってことは、やっぱり、そこには何らかの「普遍性」があるんですかね?
とにかく、今回も頗る気に入る作品でした♪
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