mixiユーザー(id:15312249)

2014年11月08日08:38

9 view

〔小説〕八大龍王伝説 【339 三國合同軍事干渉】


 八大龍王伝説


【339 三國合同軍事干渉】


〔本編〕
 龍王暦一〇五四年一月二〇日。ヴェルト大陸西の小国ミケルクスド國。その國の首都であり王城でもあるイーゲル・ファンタムの中央の城の前に一万の兵が集結していた。
 そして、その城の三階部分にあたるバルコニーに数名の者が立っていた。
「余が絶大な信頼を寄せる兵士諸君!!」
 バルコニーの中央に立っている茶色の髪を有する美しき王ラムシェルが兵士達に呼びかける。
 その声は誰もが聞き惚れる声色であって、魔法により拡声されていた。
「一万の兵士諸君! これからここにいるユングフラと共に元ゴンク帝國の一地方であったヒールテン地方へ赴任してもらう。ここより三千キロにおよぶ遠い道のりであるが、この地はこれからのミケルクスド國において非常に重要な地域となる。兵士諸君、我が妹――ユングフラを支えてくれ」
「おぉ〜!」
「ラムシェル王万歳!」
「ユングフラ姫万歳!」
 このような声が方々であがった。
「明日、このイーゲル・ファンタムを出発し、ここから三百キロ西のドルイド海岸から、船で出発してもらう。左回りで、ヴェルト大陸の西海岸から南海岸沿いを回る。三ヶ月ほどの船旅になると思うが、これは我らミケルクスド國だけではない。
 既に五日前の一月一五日には、バルナート帝國の兵二万が。そして二日前の一月一八日には、ジュリス王国の兵一万が、ヴェルトの南東地域(元ゴンク帝国領)に向けて進発している。今回の赴任……、いや遠征ともいっていいこの軍事行動はバルナート、ジュリス、ミケルクスドの三國で同時に行う。
 これはゴンク帝國を実質的に滅ぼしたソルトルムンク聖王国のやり方に対する三國による武力干渉である。聖王国の専横をこれ以上許さないためにも、諸君等の働きは非常に重要である。よろしくたのむ!」
 兵達の大歓声の中、ラムシェル王の演説は終わった。

「フラーク! ユングフラを頼んだぞ」
「はっ! ラムシェル王!」
 ミケルクスド國のラムシェル王の前に二人の人物が跪(ひざまず)いていた。
 ラムシェル王とその妹ユングフラ姫、そして一人の男性であった。その男性がラムシェル王の言の葉に応じたのである。
「兄王!」
「どうした。姫!」
「この部屋には兄と私とマークの三人しかいません。三人の時ぐらいは『フラーク』ではなく、『マーク』と本名でお呼びください」
「そうか。では、マークよ。ユングフラを頼んだぞ」
「はっ! 私の命に代えましても……」
 この会話でも分かるとおり、ここにいる三人目の人物はマークという名前が本名で、フラークという偽名を普段は使っているらしい。
 読者諸君はもうお気づきと思うが、このフラークという偽名の青年マークこそ、シャカラがハクビとしてソルトルムンク聖王国南西部のクルス山に倒れていたときに、父親のホルムと共にハクビを自分の家に連れて帰った狩人のマークであった。
 マークはその後、ハクビと共に当時の地利将軍のグラフの聖王国残党軍でバルナート帝國と戦い、ソルトルムンク聖王国復活に貢献した。
 その後、ザッドの悪辣(あくらつ)な企てにより、マクスール軍へ編入され、龍王暦一〇五一年の三月のミケルクスド國遠征に参軍する。この戦いは読者の皆様がご存知の通り聖王国側の大惨敗で幕を閉じる。
 この時、マークはミケルクスド國の策略に嵌ったマクスール将軍から、反逆の汚名を着せられ、戦死或いは死罪といういずれも死という究極の選択をさせられる運命の中、仲間の助力を得、ミケルクスド國に密かに招かれる。
 そしてミケルクスドの地で死んだと思われていたホルム、スリサの両親とも再会し、今はラムシェル王とユングフラ姫の下に仕えているのであった。マークはソルトルムンク聖王国では反逆者として扱われ、既に本人はミケルクスド國との戦いで戦死したことになっている。
 そのような者を他国とはいえ、ミケルクスド國が召抱えるわけにはいかない。聖王国がこの事実を知れば、聖王国は直ちにミケルクスド國にマークの聖王国への帰還を求め、聖王国に帰国したマークには当然死が待っている。
 ミケルクスド國がマークの帰国を拒めば、ソルトルムンク聖王国とミケルクスド國の国家間に大きな軋轢(あつれき)が生じるほどの外交問題に発展する。
 それ故、ラムシェル王は、マークをラムシェル王の遠縁の者として召抱えたのである。名前も当然変えた。
 『ユングフラ』の『フラ』の二文字を頭にして『フラーク』という名前に変えた。
「とにかく、昨年(龍王暦一〇五三年)の七月にソルトルムンク聖王国はゴンク帝國を復活させたが、それはツイン地方という聖王国最南端の極小で痩せた土地に帝王ニーグルアーサーを押し込めただけであり、実質的にはゴンク帝國は滅亡したと同義であると余は考える。これはヴェルトの人民全てがそう感じていることではあるが……」ラムシェル王は、ここで一旦話を切り、ユングフラとマークを交互に見た。
 どちらも真剣にラムシェルの言の葉に耳を傾けている。
「このままでは、黒宰相ザッドの思惑通り、ヴェルト大陸の聖王国を除く全ての國が滅ぼされてしまう。しかし、余も余の国民もそれを望んではいない。それはジュリス王国、バルナート帝國の王並びにそこの民も同じである。それで北方三國は、合同で武力干渉を始めることにしたのだ。その一歩が今回のユングフラ! 姫の元ゴンク帝國領への赴任だ。
 ザッドは昨年の七月の段階で、ゴンク帝國五地方のうち、二地方を聖王国が接収して、残り三地方をジュリス、ミケルクスド、バルナートの三國に割譲すると言ってきている。しかしそれは詭弁だ。なぜなら、その割譲を今年の二月に行うと言っていたが、一月(ひとつき)前の今になっても具体的な各国との打ち合わせがない。
 ザッドが形だけの割譲にしようとしているのがみえみえだ。それであればこちらも考えがある。直接、赴任する地方長官と軍勢をその地域に送り込む!
 さすがに陸地を横切っての万単位の軍勢の移動は、聖王国領を通る関係から不可能であるが、海洋を迂回してのルートであれば、なんら問題ない。それも三國で、合同で実施すれば、その軍勢は四万強。さすがのザッドもそれを阻止することはできない。
 これで、我がミケルクスド國とジュリス王国及びバルナート帝國は、ヴェルトの南東方面に実質的な領土を有する。これは、ザッドの北方のみに敵を残すという戦略を大きく後退させる結果となる」




〔参考一 用語集〕
(龍王名)
 沙伽羅(シャカラ)龍王(ゴンク帝國を建国した第三龍王)

(神名・人名等)
 グラフ(ソルトルムンク聖王国の天時将軍。当時は地利将軍)
 ザッド(ソルトルムンク聖王国の宰相)
 ニーグルアーサー帝王(ゴンク帝國の帝王)
 ハクビ(記憶を失っていた頃のシャカラ)
 フラーク(マークの偽名)
 ホルム、スリサ(マークとレナの両親)
 マーク(シャカラの親友。レナの兄)
 マクスール(ソルトルムンク聖王国の将軍。この話の当時は天時将軍)
 ユングフラ(ラムシェル王の妹。当代三佳人の一人。姫将軍の異名をもつ)
 ラムシェル王(ミケルクスド國の王。四賢帝の一人)

(国名)
 ヴェルト大陸(この物語の舞台となる大陸)
 ソルトルムンク聖王国(大陸中央部から南西に広がる超大国。第八龍王優鉢羅(ウバツラ)の建国した國)
 バルナート帝國(北の強国。第七龍王摩那斯(マナシ)の建国した國。金の産地)
 カルガス國(北東の中堅国。第六龍王阿那婆達多(アナバタツタ)の建国した國。滅亡)
 ミケルクスド國(西の小国。第五龍王徳叉迦(トクシャカ)の建国した國。飛竜の産地)
 クルックス共和国(南東の小国。第四龍王和修吉(ワシュウキツ)の建国した國。唯一の共和制国家。大地が肥沃。滅亡)
 ゴンク帝國(南の超弱小国。第三龍王沙伽羅(シャカラ)の建国した國。現在はツイン地方のみが国土)
 フルーメス王国(南の弱小国であり島国。第二龍王跋難陀(バツナンダ)の建国した國)
 ジュリス王国(北西の小国。第一龍王難陀(ナンダ)の建国した國。馬(ホース)の産地)

(地名)
 イーゲル・ファンタム(ミケルクスド國の首都であり王城)
 ツイン地方(ヴェルト大陸最南端の地方)
 ヒールテン地方(元ゴンク帝國の一地方。現在はミケルクスド國領)

(兵種名)

(付帯能力名)

(竜名)

(武器名)

(その他)


〔参考二 大陸全図〕
フォト

2 1

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する