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2014年10月18日09:29

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〔小説〕八大龍王伝説 【336 六将制度(前)】


 八大龍王伝説


【336 六将制度(前)】


〔本編〕
「第一がゴンク帝國の件。第二がクルックス共和国の件。しかして次はなんであろうかの宰相殿」この集まりの中で最年長の歴史編纂担当の大臣がザッドに質問をした。
 この大臣職は一種の名誉職であって、ほとんど実質的な権限は持っていなかったが、最年長の大臣でもあるため、重要な御前会議のような場にはたびたび顔を出していた。
「第三の決定事項は、来年早々、我がジュルリフォン聖王が『エンペラー』へと昇格(クラスアップ)する件です。併せて、第四の決定事項は聖王国の軍隊の大変革です。現在の天時、地利、人和の三将制度から龍王暦二百年の頃の六将制度へ編成します」
「それは不可能じゃ! 宰相殿!!」歴史編纂の最年長の大臣がうなるように叫んだ。
「何が不可能なのですか? 大臣閣下殿!」ザッドが歴史編纂担当の大臣を一瞥しながら口を開いた。
「先ず、『エンペラー』の称号じゃが……。我らの世界で最も尊い称号である支配階級――つまり王や帝王に与えられる最終段階の称号。『トップランク』とも言われる称号は、國の王のレベルでなければ、その称号を与えることはできない。
 その中にあって唯一の例外が『エンペラー』の称号じゃ。この称号のみは、天界の神々以上の存在のみが与えることができる。それもヴェルト大陸のそれぞれの國は、それぞれの國を建国した八大龍王の後を継ぐ八大龍王のみが与えると、龍王間での約束がされているという。
 確か、聖王は一度、『エンペラー』の称号を第三龍王にあたる故沙伽羅(シャカラ)龍王に願い出て断られているという噂を聞くが……宰相殿」
「それは根も葉もない噂の類でしょう。それに今回は第八龍王の優鉢羅(ウバツラ)龍王に直々にお越しいただいて、『エンペラー』の称号を授けていただきます。何の不都合もないと思われますが……。大臣閣下殿」
 本来であれば、『大臣』或いは『大臣殿』と呼べばいいところを、ザッドは最年長ということもあり、『大臣閣下殿』と、この歴史編纂担当の大臣を呼んでいるのである。
「優鉢羅(ウバツラ)龍王がこの聖王国に今、おられるとおっしゃるのか? 宰相殿は……」
「はい!」
「馬鹿な! ウバツラ様はマナシ様に監禁されていると亡くなったシャカラ様より聞いておりますぞ」
 歴史編纂担当の大臣は、齢(よわい)七十を越えているため、息をきらしながら、それでも部屋の中に響き渡るような大きな声であった。
「それこそ噂の類の話です。大臣閣下殿。実際にウバツラ様は、この部屋の隣の部屋に今、居ります。既に一月前からこのマルシャース・グールに滞在しております」
 このザッドの言葉にジュルリフォン聖王以外のここにいる大臣全員は、驚愕したのであった。
「我らがお会いすることは可能であるのか? 宰相(ザッド)殿!」ここにいる大臣の一人がザッドに尋ねた。
「勿論です。お疑いであれば、ウバツラ様をお目にかけたいと思います」
 そう言うとザッドは、家臣の一人を呼び、ウバツラに目通りの許可をもらいに行かせた。
「さて、ウバツラ様から謁見のお許しが出る間に、聖王国の軍備を三将制度から六将制度に編成しなおす理由について大臣方にご説明いたしましょう」
「……あの当時――むろん龍王暦二百年代のことじゃが――。当時は、ソルトルムンク聖王国が国家存亡の危機から、急激に力をつけ、勢力を東西南北の四方に一気に拡大した。そのために王のおわす中央政権がその動向を判断しきれなくなったための、六将は戦時的超法規的な独立部隊なのじゃ。最前線のあらゆる判断を六将に委ねるという本来であれば非常に危険な権限なのじゃ。宰相殿は何故、そのような制度を復活させようとしておるのじゃ」歴史編纂担当の最年長の大臣がまた口を挟んだ。
「むろん今がヴェルト大陸全土を、ソルトルムンク聖王国一國により統一させるためです。それにご安心を……大臣閣下殿! 二百年当時のように兵権を全て渡したにせよ、七つ目の軍である中央軍を作り、それは聖王と宰相である小生がその兵権を掌握します。その中央軍は残り六つの兵数の合わせた兵数の倍を見積もっております」
「倍とは具体的にどのくらいじゃ?!」
「それは今、ここで申し上げることはできません。大臣閣下殿」
「しかし問題は、兵数だけでない!」歴史編纂担当の大臣は興奮して顔が真っ赤であった。
「特定の人物でないと有り得ない制度なのじゃ!! 六将制度というのは……。だから千年以上の年月の龍王暦において、たかだか二十年程度しか実施されなかった制度なのじゃ!!」
「どういうことだ。大臣よ!」ジュルリフォン聖王が歴史編纂担当の大臣に尋ねた。
「王! 少し六将制度について、お話申し上げてもよろしいでしょうか?」
「許す。説明せよ!」
「それでは……」そう言うと歴史編纂担当の大臣は説明を始めた。
「六将制度は、その当時のソルトルムンク聖王国の王であられるブーリフォン聖王の元に成立した制度です。龍王暦二一五年に成立し、わずか二十三年後の龍王暦二三八年には、六将の一人ローブル将軍が亡くなり、続いてブーリフォン聖王も崩御したことから消滅した制度です。
 ブーリフォン聖王は、頭脳明晰の上、勇猛果敢な王で『戦王(いくさおう)』という異名を持つ名君でありました。
 この当時、大国と呼べるのがソルトルムンク聖王国とバルナート帝國。中堅国としてカルガス國、ミケルクスド國、クルックス共和国、ゴンク帝國の四國。そして小国としてフルーメス王国とジュリス王国でした。しかし当時のソルトルムンク聖王国は現在の国土の四分の一程度の広さで、東西南北を全て他の七國に囲まれた非常に地理的不利で不安定な状態の國でありました。
 さらに龍王暦一五〇年頃から、暗君が三代続き、国土も飢饉等で疲弊し、国境付近は常に他国に侵略され、一時期など聖王国の命運すら風前の灯火でしたが、龍王間の交渉により、なんとか國の体裁を保っていられる状態であったのです。
 この龍王暦一五〇年から二一〇年頃までを『聖王国の冬の時代』と歴史上は語られるぐらいです。そんな中、龍王暦二一〇年ブーリフォン聖王が即位され、状況は一変しました。ブーリフォン聖王は聖王子の時代から、戦(いくさ)の中で育った王子でありました……。



〔参考一 用語集〕
(龍王名)
 沙伽羅(シャカラ)龍王(ゴンク帝國を建国した第三龍王)
 摩那斯(マナシ)龍王(バルナート帝國を建国した第七龍王)
 優鉢羅(ウバツラ)龍王(ソルトルムンク聖王国を建国した第八龍王)

(神名・人名等)
 ザッド(ソルトルムンク聖王国の宰相)
 ジュルリフォン聖王(ソルトルムンク聖王国の聖王)
 ブーリフォン聖王(龍王暦二一〇年に即位されたソルトルムンク聖王国の聖王)

(国名)
 ヴェルト大陸(この物語の舞台となる大陸)
 ソルトルムンク聖王国(大陸中央部から南西に広がる超大国。第八龍王優鉢羅(ウバツラ)の建国した國)
 バルナート帝國(北の強国。第七龍王摩那斯(マナシ)の建国した國。金の産地)
 カルガス國(北東の中堅国。第六龍王阿那婆達多(アナバタツタ)の建国した國。滅亡)
 ミケルクスド國(西の小国。第五龍王徳叉迦(トクシャカ)の建国した國。飛竜の産地)
 クルックス共和国(南東の小国。第四龍王和修吉(ワシュウキツ)の建国した國。唯一の共和制国家。大地が肥沃。滅亡)
 ゴンク帝國(南東の小国。第三龍王沙伽羅(シャカラ)の建国した國。ドラゴンの産地。『城塞帝國』の異名を持つ)
 フルーメス王国(南の弱小国であり島国。第二龍王跋難陀(バツナンダ)の建国した國)
 ジュリス王国(北西の小国。第一龍王難陀(ナンダ)の建国した國。馬(ホース)の産地)

(地名)
 マルシャース・グール(ソルトルムンク聖王国の首都であり王城)

(兵種名)
 エンペラー(最終段階の支配階級の兵)

(付帯能力名)

(竜名)

(武器名)

(その他)


〔参考二 大陸全図〕
フォト

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