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2014年03月15日08:46

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〔小説〕八大龍王伝説 【303 天界時間】


 八大龍王伝説


【303 天界時間】


〔本編〕
「ん?! ……」トクシャカがふと呟いた。ワシュウキツの一撃を自らの剣で受け止めた直後であった。
「さすがは、トクシャカ! 気付いたようだな」ワシュウキツの野太い言の葉である。
「結界か?!」
「そう結界だ。トクシャカ! これはバツナンダが所有している『氷の時計』を結界化させたものだ……わしの大地を司(つかさど)る力であれば、結界化が可能と思ったが、うまくいったようだ」ワシュウキツは満足そうであった。
「『氷の時計』……所有している者の時を遅らせるというバツナンダ固有の品物(アイテム)か?」
「そうだ! それを結界という空間に転用させたことにより、このわしの結界内においては、地上に比べて一挙手一投足の動きに非常に時を費やす。氷の時計の時の経過をマックスにしたので、この結界内では一日を経過するのに、地上の一月(ひとつき)を費やすことになる。これなら充分にシャカラとバツナンダの時間稼ぎは可能だな」
「フッ! 天界と同じスピードで時が刻まれるか……面白い」
「ほぉ〜 お前さんも笑うことがあるのか……」
「下級龍王風情と高をくくってはいたが……面白い……このトクシャカの本気を見せようぞ……」そう言ったトクシャカの周りに黒い陽炎のようなものが揺らめいていた。
「自分が本気になれば、お前如き一時間持つかどうか……」

 さて、シャカラ、バツナンダは天界に辿り着き、ワシュウキツとトクシャカは、『氷の時計』という特殊なアイテムにより、我々人間界での時間軸と違う時間軸の中で話が展開していくことになった。
 要するにシャカラ達の一日が我々人間界の一月に相当するのである。
 厳密に言えば、月によって二十八日の月である二月や三十一日の月である一月などが存在するが、あまり厳密にする必要もないと筆者は感じたので、単純に一月を一日に換算する。
 同じように一時間の扱いであるが、二十四時間で三十日に相当するので、一時間が一・二五日に相当する。さらに、天界での一日の表記の仕方を特殊な表記にしたい。
 龍王暦一〇五二年の一月日(いちがつにち)という表記にする。人間界で龍王暦一〇五二年の一月、天界で龍王暦一〇五二年の一日目という意味である。
 同じく時間についてであるが、一・二五という数字で換算するため、時間の方はそのまま二十四時間で表記する。
 午前八時で、人間界の十日目と承知願いたい。時間の方はそのつど括弧(かっこ)書きで表記するので読者諸君がわざわざ換算する必要はない。
 とにかく、そのような形でこの小説を進めていきたいと思う。

 話は遡(さかのぼ)り龍王暦一〇五二年八月五日午前六時ごろ――この時間の表記は人間界での時間の表記である。
 シャカラとバツナンダは人間界から天界への入り口を超えて、天界に到着したのである。
 天界を人間界の地上として表現すれば、まっ平らな地面に周りを海のような水に囲まれているのである。周りの海は四方に果てしなく広がっているように見えて、実はある程度行くと、いきなり水が滝のように下に向かっているのである。そして、その先は見えない壁に阻まれているように、どこにも行けないのである。
 そこからは人間界から天界に行くように時間軸を越えるのである。その時間軸を越えた先が、どこに繋がっているかは神のみぞ知るといったところである。同じように空もある一定の高さを越えると時間軸による限界点に到着する。
 天界の地上の中心地点に高い山が一つ聳(そび)え立っている。その頂上は地上から人間界単位でいう一万キロメートルに達し、その山の頂上より上には空がないのである。やはり時間軸という見えない壁に覆われているといっていいだろう。
 その山は天界の人々より、神が住まう場所といわれており、一般の天界の人々が踏み入ることは許されていない。
 シャカラとバツナンダが向かっているのは、その山であった。その山は天界で唯一の山であるので便宜上『天山(てんざん)』と呼ぶことにする。
 さて、ここから天界での時間表記とする。
 龍王暦一〇五二年八月日(はちがつにち)午前四時(五日)である。天界に辿り着いてシャカラとバツナンダは先ず天界の飛龍(ワイヴァーン)を二体捕獲した。ここからの足にするつもりであった。
 二体のワイヴァーンはバツナンダの『蒼い手綱(ブラスツューゲル)』に繋がれたことにより、バツナンダの言うことを聞く忠実な乗り物へと変化した。シャカラが乗るワイヴァーンに関しては、バツナンダのブラスツューゲルに、シャカラの血を一滴たらすことにより、シャカラ版のブラスツューゲルへと手綱が変化した。
 さすがにバツナンダのようにワイヴァーンの赤褐色の体色を蒼くするように、シャカラのパーソナルカラーである白に変化することは出来ないが、それでもシャカラの言うとおりに操ることは可能であるし、シャカラの騎乗スキルを発揮するにも何の支障もなかった。
 その二体のワイヴァーンに、さらにバツナンダは鎧の欠片で作られた破片を埋め込んだ。みるみる二体のワイヴァーンの体が鎧化したのである。
「あと天山までどのくらいかかる?」シャカラがバツナンダに尋ねた。
 ワイヴァーンに騎乗して天界時間で三時間程度の時が経った頃である。
「おそらくは後、半日ぐらいの行程で天山の麓につくだろう……しかし、何事もなく麓まで辿り着けるとは思えないがな……」バツナンダはそう答えた。
 それから一時間後である。
「止まれ! バツナンダ!」急にシャカラは自身が騎乗しているワイヴァーンの手綱を引いた。
「どうした?」バツナンダもシャカラの言の葉に従い、ワイヴァーンを停止させた。
「結界の気配を感じる!」シャカラの言の葉。
「結界?!」
「ああ〜僕の結界と同じ霧の結界だ! 後、五分も飛べばその結界の中に飛び込んでしまう距離だ!」
「霧の結界だと? 誰がそんなことを……」
「十中八九、アナバタツタの仕業だろう。去年の十月に僕らを襲った白霧陣だな。天山一帯を覆っているとなると、どれほど膨大な僕の能力を持つ矢を有しているのであろうか……。見当がつかない!」
「しかしワシュウキツの作ったバサラの鎧であれば、彼女(アナバタツタ)の結界も恐れることはないと思うが……ワシュウキツのバサラの鎧は他者の結界内においても、自身の能力を十二分に発揮できると聞かされている」バツナンダの問いにシャカラは頷いた。



〔参考一 用語集〕
(龍王名)
 難陀(ナンダ)龍王(ジュリス王国を建国した第一龍王。既に消滅)
 跋難陀(バツナンダ)龍王(フルーメス王国を建国した第二龍王。ウバツラ陣営)
 沙伽羅(シャカラ)龍王(ゴンク帝國を建国した第三龍王。ウバツラ陣営)
 和修吉(ワシュウキツ)龍王(クルックス共和国を建国した第四龍王。ウバツラ陣営)
 徳叉迦(トクシャカ)龍王(ミケルクスド國を建国した第五龍王。マナシ陣営)
 阿那婆達多(アナバタツタ)龍王(カルガス國を建国した第六龍王。マナシ陣営)
 摩那斯(マナシ)龍王(バルナート帝國を建国した第七龍王。ウバツラを監禁する)
 優鉢羅(ウバツラ)龍王(ソルトルムンク聖王国を建国した第八龍王。マナシに監禁される)

(神名・人名等)

(国名)
 ヴェルト大陸(この物語の舞台となる大陸)
 ソルトルムンク聖王国(大陸中央部から南西に広がる超大国。第八龍王優鉢羅(ウバツラ)の建国した國)
 バルナート帝國(北の強国。第七龍王摩那斯(マナシ)の建国した國。金の産地)
 カルガス國(北東の中堅国。第六龍王阿那婆達多(アナバタツタ)の建国した國。滅亡)
 ミケルクスド國(西の小国。第五龍王徳叉迦(トクシャカ)の建国した國。飛竜の産地)
 クルックス共和国(南東の小国。第四龍王和修吉(ワシュウキツ)の建国した國。唯一の共和制国家。大地が肥沃。滅亡)
 ゴンク帝國(南東の小国。第三龍王沙伽羅(シャカラ)の建国した國。ドラゴンの産地。『城塞帝國』の異名を持つ)
 フルーメス王国(南の弱小国であり島国。第二龍王跋難陀(バツナンダ)の建国した國)
 ジュリス王国(北西の小国。第一龍王難陀(ナンダ)の建国した國。馬(ホース)の産地)

(地名)

(兵種名)

(付帯能力名)

(竜名)
 ワイヴァーン(十六竜の一種。巨大な翼をもって空を飛ぶことができる竜。『飛竜』とも言う)

(武器名)
 ブラスツューゲル(バツナンダが投影した手綱。『蒼き手綱』ともいう)

(その他)
 氷の時計(バツナンダのアイテム)


〔参考二 大陸全図〕
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