８月はなんだかんだでヒマが無く、横浜の無料寄席に１回行ったきり。９月になってすぐ遊雀主任と聞いて六年ぶりに末廣亭に足を運んだ。末廣亭の主任というのは、やはり特別な意味があるのでは･･･と思ったものの、入場したら観客30人くらい。ガラガラすぎて拍子抜け。その後年配の夫婦何組かが出て行ったり、代わりに遊雀目当てらしい女性客が入ったりしていたが、人数は概ね最後まで変わらなかった。こんなものでいいのかなぁ。まあ台風予報のせいかもしれないけど。
●前座 鯉○「新聞記事」
正蔵（こぶ平）、三平、木久蔵と、小朝の息がかかった二世落語家が必ず通る新作落語。「動物園」同様、もはや古典の範疇か。危なげない感じで演じていた。
●小痴楽「芋俵」
先月イセザキ寄席で見逃したので久しぶり。言葉を失って喘ぐ所作、巧いんだけど、奇声をあげて身をよじる様がワンパターン。前座時代の「饅頭恐い」でもこれだったしね。あと話し終えて袖にさがるとき、余韻が無いというか、愛嬌に欠ける。
●鏡味初音 太神楽
いつ見てもどきどきする。
●鯉朝 「よるのてんやもの」（新作）
春風亭一門の中の一部門である瀧川一門の説明はいいとして、貧乏ネタはよほど悲惨な例じゃないと笑えない。実際にとるかどうかは別として、子供のころって確かにデリバリーに憧れありますよね。
●伸乃介「高砂や」
繰り返しは笑いの基本である。嫌いじゃないが、好きと云えるほどでもない。
●江戸家まねき猫 動物物まね
枕草子にからめた物まね
●壽輔「釣りの酒」
この人と桃太郎は、近年の芸協に強い危機感を抱いてるのではないだろうか。客への語りかけにそれをひしひしと感じる。テトロン着物の変な小父さんと侮る無かれ。
●南なん「臆病源兵衛」
まくらもふらずにいきなり始めた。南なん＝源兵衛の演じっぷりであった。
●東京丸 京平 漫才
5月に見たときは明らかに酔っていたが、しらふでも大差ないことがわかった。かつては『お笑いスタ誕』のチャンピオンだったそうなのだが･･･。
●左遊「藪医者」
以前は黒鉄ヒロシに似てると思っていたが、そうでもなかったな。
●夢太�董嵬楾�のさんま」
この秋最初のこの噺。巧い人が語ると間違いなくサンマが食べたくなる。以前正朝で聞いた帰り、サンマ買ってしまった経験あり。夢太�討眛瑛諭�加えて炭火で焼いたのが食べたくなった。
＜仲入り＞
●遊之介「浮世床」
床屋での若い衆の生態を描いた前段で終えた。
●松乃家 扇鶴 俗曲
しゃべるときはぼそぼそ声だが、謡い出すとなんとも艶のある声。紫文と並ぶ寄席の脱力系。
●柳橋「小言念仏」
いくらでも我流で面白く出来そうな噺。「紙屑屋」とかと同じ範疇か。
●米助「看板のピン」
「秘密クラブへようこそ！」の挨拶通りの客の入り。まくらは相変わらずの長嶋ネタ。落語の方はフツー。米助だけではないが、芸協の噺家のまくら小話は時代感覚古すぎ。寄席に来る年寄りにはこの程度のネタでいいんだとばかりに自信たっぷりにかまされると頭に来ます。毎回毎回歌いこそしないが若者ヒットチャートをチェックして、漫談の中に流行歌の曲名を入れる東京ボーイズナカハチ先生を見習うべき。
●北見マキ 奇術
北見先生といえば割と大がかりなマジックのイメージ、というのも、浅草でよく見るからかな。こちらではフラワーマジック、コインマジックなどのステージマジック。
●遊雀「寝床」
鈴本の緞帳がこわれて下りないそう。「緞帳がおりないということは終わりがない･･･皆さま帰れませんよ」と脅しながらも30分程度９時ジャストで終えた。ところどころ端折ってはいたが、充分面白い出来。特に使用人に逆ギレされて「私はもう義太夫なんてやらないよ！」と怒った主人をなんとかなだめすかして、もう一度その気にさせようとするところ。ふつうは「旦那様は芸の出し惜しみをしていらっしゃる」とまで云う配慮をしっかりカットして、主人がごねたら「じゃあしょうがありませんね」とサッサと引いてしまう使用人にした。業を煮やした主人が「そういうときはね、もっと引き留めるもんだろう！」と自分から持ち上げ方を指南する始末。これはフルサイズで聞き直したい噺だ。
遊雀と同年代の落語家で末廣亭の主任を代演以外で務めた人がどのくらいいるだろうか。花緑は別として三三や白鳥も定席ではやっているのだろうか、ちょっと私にはわからないのですが。加入してまだ新しい遊雀に主任を取らせるということは、席亭と芸協側が彼へ寄せる期待の大きさの表れではないかと考えます。しかしそれなら顔付けをもう少し考えて欲しかった。とは云っても、今の芸協ではしょうがないのかも知れませんが･･･。
寿輔師匠のぼやきに寄せた危惧について考えるまでもなく、遊雀についたファンを寄席に呼び込めないのなら、遊雀の主任抜擢（といっていいんじゃないかな）の意味はない。今の芸協は年寄りがつかえて若手の活躍の場がない日本の社会構造そのもの。定年がないから団塊クライシスも無い落語界なんだから･･･。
だから遊雀ファンは、独演会ばかりでなく寄席に足を運ぶべき。そして日本で一番寄席らしい寄席（でも個人的には苦手。だからあんまり行かない）末廣亭の舞台で主任をつとめる彼に、拍手を送るべきだと思いますね。いま緞帳下りないけどね。
数年ぶりに末廣亭に行ってショックだったこと。平土間の座席が映画館の椅子のようにきれいだったこと（長い傘用の傘立てまであった）。それとトイレが汚い記憶があったので、なるべく水分を摂らない覚悟で行ったら、トイレがものすごくきれい（でもなぜかきれいな和式トイレ）だった！
ログインしてコメントを確認・投稿する