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2010年10月14日16:01

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八大龍王伝説 【099 朱雀騎士団(七) 〜ロートフォイアーランツ〜】


いつもお読みいただいている皆さま、ありがとうございます^^

ついにここ(99)まで来ました そして次回はいよいよ【100】です

それでは、八大龍王伝説をはじめます^^


【099 朱雀騎士団(七) 〜ロートフォイアーランツ〜】


〔本編〕
そして、さらにもう一つ驚愕(きょうがく)させられたのは、その突きの破壊力であった

ナンダがそんなに力を加えた様子のない突きである

それでも、この世界で最も硬いと謂われる金(ゴールド)で作られた鎧、そのゴールド以上の硬度を持つ竜(ドラゴン)の皮膚、その二つを組み合わせた小型竜(ドラゴネット)の足を、ナンダの突きは、いとも容易く貫いたのであった

「レナ!小型竜(ドラゴネット)の足を治療してくれ!」

付帯能力の天声でレナに伝えるハクビ

しばらくして

「駄目!治癒の呪文が効かない!」

「そんな!」

レナからの天声に愕然(がくぜん)とするハクビ

「治癒の呪文など…この俺様の槍−『紅き火の槍』の前には、薬草程度の効力すら発揮することはできないぞ!」

ナンダは大きく口をあけて笑う

この時代でいう薬草程度の効力とは、今でいう一般の傷薬程度の効力のことをいう

「この槍は、槍自身が付帯能力(アドバンテージスキル)の『陣地作成スキル』を有している この槍が突いた傷口には魔術及び治療行為一切を遮断する結界が張られる

この槍を折るか、俺様の息の根を止めない限り、その傷を治すことは不可能だ!!」

そう言うとナンダはまた突きを繰り出した

それも明らかに手を抜いた突きであった

それでも、今度もハクビの目には、その突きは見えなかった

たとえ見えていたとしても、後ろ足一本の機能を失った小型竜(ドラゴネット)に避(よ)ける術はなかった

「グォォォォ〜!!」

ドラゴネットの断末魔の叫び

ナンダの『紅き火の槍(ロートフォイアーランツ)』は、ハクビの騎乗している小型竜(ドラゴネット)の喉を貫き、ハクビを竜の背中から突き落とした

ハクビはすぐに立ち上がって、突かれたような衝撃を受けたと思われた鎧の胸元を見る

そこには一筋の亀裂が入っていた

この鎧もこの世界で一番硬い金(ゴールド)で出来ている

それが全く防具として役に立ってない

それに三メートルの長さがある槍とはいえ、ナンダの騎乗している場所から考えて、ハクビのいたポジション(小型竜に騎乗していた位置)は、明らかに射程圏外である

考えたくはないが、恐らくこれが真実だろうという事柄にハクビは行き当たった

《ナンダの攻撃は槍が届いていない突きの先も、攻撃ができるとしか考えられないが、しかしそれは…》

「おお!さすがだな!今の考えで間違いでないぞ!」

ナンダもハクビの表情から正解を導き出したことに気づいたようであった

「これもこの槍の『陣地作成スキル』の一つだ!さすがに槍先が直接届いていない所にまで不治の結界を紡(つむ)ぐのは無理だが、単純に物質を破壊するための圧力を放出することは可能だ!」

さらに続けてナンダは口を開く

「まあ、しかしこれらの能力(不治の結界と槍圧の放出)を発揮するためには、俺様の付帯能力(アドバンテージスキル)の一つ『神性』と圧倒的なスピードで槍を繰り出す技量がないと無理な話ではあるがな…」

ハクビは気を取り直して、両手の戦斧(せんぷ)を持ち直し、改めて戦闘の構えになった

さて、付帯能力の一つ『神性』は人智や人力を超えた神の性質のことを言う

他の付帯能力と比べて、非常に分かりにくい能力なのだが、簡略化して言えば『運が良い』ということになる

だが、ハクビは思った

《人の領域での『神性スキル』では単純に運の良し悪しのレベルと考えてよい

しかし、真偽のほどは分からないが、ナンダは自分のことを神と言った

もし、神の領域での『神性スキル』と言うことになれば、僕には計り知れないが、おそらく奇跡の類(たぐい)と考えて間違いはないのでは…》

確かに届いていない槍の先の空間に槍が届いたのと同じアクションが起こせるのであれば、まさに奇跡と呼んで構わないレベルであろう

そして、ナンダが神であるのであれば、その奇跡も普遍的に起こすことができ、それこそ人の身では勝てる道理がない

ハクビは血まみれで既にこと切れている小型竜(ドラゴネット)から少しずつ離れながら、ナンダに問いかける

「ナンダ殿!あなたが神であるという前提でお聞きしたい!人の身で神に勝利するにはどうすればよいのか?」

「なんてことはないぞ!」

ハクビの問いかけに、ナンダは気安く応じた

「天界に住む神とは言え、他の世界へ現界するときには実体身(じったいしん)が必要になる 実体身なくしてその世界への働きかけはできない

実体身とは要するに生身の体だ 生身の体なら人の身で容易に干渉ができる!簡単に言えば、俺様も心臓を刺されたり、首を切り落とされたりすれば、死ぬってことだな」

ナンダのこの答えに、ハクビはニコリともせずに呟いた

「それを聞いて安心した」

ハクビは少しずつナンダに近づいていった

「安心するのはまだ早いぞ!それが非常に困難なのは…まあ、お前なら言わずとも分かっていよう!」

ナンダも槍の穂先をハクビに向けたまま、騎乗した状態で少しずつハクビに近づいていった



〔参考一 用語集〕
ハクビ(眉と髪が真っ白な記憶喪失の青年 ソルトルムンク聖王国の人和将軍)

レナ(マークの妹 ハクビ将軍の副官)

ナンダ(バルナート帝國四神兵団の一つ朱雀騎士団の軍団長)

ソルトルムンク聖王国(大陸中央部から南西に広がる超大国 第八龍王優鉢羅(ウバツラ)の建国した國)

バルナート帝國(北の強国 第七龍王摩那斯(マナシ)の建国した國 金の産地)

金(この時代において最も硬く、高価な金属 現在の金(ゴールド)とは別物と考えてよい)

付帯能力(その人物個人の特有の能力 アドバンテージスキルという 十六種類に体系化されている)

天耳・天声スキル(十六の付帯能力の一つ 離れたある一定の個人のみと会話をする能力 今でいう電話をかける感覚に近い)

陣地作成スキル(十六の付帯能力の一つ 自分の周辺或いは一定の場所や部分に、自分に都合の良い結界(陣地)を作る能力 その中では敵にあたる者は何らかの制限を受ける) 

神性スキル(十六の付帯能力の一つ 人智、人力を超越した神の性質にあたる能力 非常に分かりにくい能力であるが、例えれば『運が良い』、『奇跡』と呼べるようなものにあたる)

ドラゴネット(十六竜の一種 人が神から乗用を許された竜 小型竜とも言う)


〔参考二 大陸全図〕
フォト



〔参考三 あらすじ〕
龍王暦〇〇〇一年 八大龍王によって八つの國(くに)が建国される

龍王暦一〇四九年八月 ソルトルムンク聖王国にあるクルス山でハクビが発見される ハクビは記憶喪失

龍王暦一〇五〇年二月一五日 ソルトルムンク聖王国のコリムーニ老聖王とバルナート帝國のロードハルト帝王がバクラにて会談 その席上コリムーニ老聖王が急死する

同年三月一〜三日 ソルトルムンク聖王国とバルナート帝國が国境の町バクラで交戦、ソルトルムンク聖王国側大敗(バクラの戦い)

同年同月一〇日 ソルトルムンク聖王国の王城陥落 聖王国滅亡 ジュルリフォン聖王子は大陸最南端のツイン城に逃げ込む

同年五月三日 コムクリ村にバルナート帝國軍が襲撃、ハクビが白虎騎士団のバルゴー隊長を倒す 以後、グラフ将軍に助けられ、残党軍の拠点であるアユルヌ渓谷に到着する 

同年八月初頭 バルナート帝國とミケルクスド國連合軍がジュリス王国を滅ぼす

同年九月四〜五日 聖王国軍と帝國軍がツイン盆地で激突(ツイン城の戦い) 帝國軍ツイン盆地より撤退

同年一〇月一〇日 マルシャース・グール奪回の戦いにおいて、聖王国軍が勝利する

同年同月一五日 バルナート帝國とカルガス國連合軍がクルックス共和国を滅ぼす

同年同月二六日 バルナート帝國がゴンク帝國を滅ぼす

同年同月三〇日 ジュルリフォン第四十九代聖王誕生 ソルトルムンク聖王国の復活

同年一一月一一日 ハクビとバルナート帝國朱雀騎士団の軍団長ナンダが対峙する
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