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2010年07月14日10:46

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八大龍王伝説 【081 血戦!マルシャース・グール(十一) 〜歓声と呟き〜】


いつもお読みいただいている皆さま、ありがとうございます

それでは早速、八大龍王伝説をはじめます


【081 血戦!マルシャース・グール(十一) 〜歓声と呟き〜】


〔本編〕
龍王暦一〇五〇年一〇月一〇日午前十二時四十分過ぎ、聖王国のムーズ将軍の率いる本隊三千人と帝國軍のヴォウガー軍団長率いる本隊九百人が激突してほぼ一時間が経過していた

ヴォウガーが先頭の帝國軍は、金の戦車−いわゆる聖王子の戦車に近づこうと再三再四、聖王国軍を蹴散らすが、ムーズ将軍が陣を巧みに操作し、なかなか聖王国軍本隊を突破することが難しかった

バルナート帝國兵は、大陸中最強の兵と自他共に容認しているほどの強さを誇る兵である

三倍以上の敵兵すら蹴散らせる自負を一人一人の帝國兵が持っていた

しかし、さすがに百戦錬磨のムーズ将軍、黒色槍兵隊(シュワルツランツェンレェィター)に対しては、聖王国兵三人一組で対処し、ヴォウガー軍団長に対しては五人一組で二組の交代制で対処させていた

そして本隊自体は徐々に南方に退いていった

一時間の戦いで死傷者が十人程度しか出ていないのも、ムーズ将軍のこの戦法のせいである

ムーズ将軍の立場から言えば、ヴォウガーの九百人の帝國兵を、三千人で倒す必要はないのである

少しでも時間を稼ぎ、左翼、右翼の両隊がヴォウガーの背後を突けばいいのだから…

《うっ!さすがは人和将軍…見事な采配だ》

ヴォウガーは一人呟いた

しかし、ここを突破する以外に勝算はない

ヴォウガーは敵の動きに対応しながら、少しずつ金の戦車に近づいていった

《さすがは玄武の男ヴォウガーといったところか…!徐々に我が軍を侵食しているわい》

今度はムーズ将軍が呟いた

ムーズ将軍も三倍の兵力を有しているからといって、余裕ではなかった

帝國兵の強さもさることながら、聖王子のおわす金の戦車は何分目立ち、ムーズ将軍の采配にかなりの制限を与えていた

それでも右翼、左翼がこの場所に到着すれば三方から帝國軍を包み込み、この戦いは終わるのである

五十分前の午前十一時五十分過ぎには、右翼、左翼の両隊に飛兵の伝令が飛んだ

後数十分持ちこたえれば、聖王国の勝利である

《それにしても訝(いぶか)しいことじゃ》

ムーズの頭に一つ引っかかっていることがある

それは、左翼の伝令と共にこの場から去ったザッドのことである

いつも腰巾着のようにジュルリフォン聖王子にくっついていたのに、何故、左翼隊の元に行ったのか?…

その時である

戦っている兵の歓声があがった

聖王国軍の喜びの声、帝國軍の落胆した声、

「何?援軍が到着したのか?」

ムーズ将軍の声も明るかった

「はい!ハクビ殿の隊に思われます」

ムーズの配下の兵の一人が答えた

「し・しかし…」

兵の一人が訝しげに言った

「どうしたのじゃ!」

ムーズは馬上から眺めながら尋ねたたが、訝しい理由はすぐに分かった

「兵の数が少なすぎる…」

ムーズは呟いた

ムーズはザッドの不審な行動と、ハクビの兵の数から、最も考えたくない自分の考えが当たったのを知った

「聖王子は偽者か!」

ムーズは呟いた

何度目の呟きだろう

それも今度は自分の呟きを否定しながら…

「ハ・ハクビが来た!!」

帝國軍は浮き足立った

ヴォウガーは後ろを振り返り、ハクビの兵数が二百人ということを確かめて叫んだ

「背後の敵は相手にするな!進路をあけて、敵本隊と合流させろ!二正面では我々は全滅するぞ」

ヴォウガーの軍はヴォウガーの指示通りきれいに進路をあけ、ハクビの隊をムーズの隊と合流させた

その時である

再び歓声が起こった

ムーズ将軍の本隊より南の方に別の一隊が現れたのである

白色の鎧に身を包んだ兵団、帝國の「白虎騎士団」であった

「勝ったぞ!この戦い…白虎のライアスが間に合ったぞ!」

ヴォウガーは思わず叫んでいた

「おお〜」

帝國軍の士気も大いにあがった

白虎騎士団は、ヴォウガーの援軍要請を受けた際、聖王国領の南征の最中であった

十日も前に要請は受け取ったが、聖王国軍がマルドス、カムイ両城の戦いで勝利した後だったので、各地で反帝國の反乱が勃発しはじめていた

ライアスはそれを攻略しつつ、マルシャース・グール王城に向かわなければならなかったのである

兵も総勢で千人ほど率いていたが、各地の防衛などに回すと、三百人ほどの兵しか援軍に繰り出せなかったのである

それでも、帝國軍の四神兵団のうちの二人の軍団長が揃うということは、聖王国軍からすれば大いなる脅威であった

聖王国はハクビの兵も合わせて三千二百人、ヴォウガー・ライアスは両軍で千二百人、それでも帝國兵には数で恐れる兵は皆無であり、むしろ挟撃できる態勢であるのは帝國軍をかなり有利な立場にしていた

同日の午前十二時四十五分のことであった



〔参考一 用語集〕
ハクビ(眉と髪が真っ白な記憶喪失の青年 グラフ軍の副官)

ムーズ(ソルトルムンク聖王国の人和将軍)

ヴォウガー(バルナート帝國四神兵団の一つ玄武兵団の軍団長)

ライアス(バルナート帝國四神兵団の一つ白虎騎士団の軍団長)

ジュルリフォン聖王子(ソルトルムンク聖王国の王子)

ザッド(ソルトルムンク聖王国の宰相)

ソルトルムンク聖王国(大陸中央部から南西に広がる超大国 第八龍王優鉢羅(ウバツラ)の建国した國)

バルナート帝國(北の強国 第七龍王摩那斯(マナシ)の建国した國 金の産地)

マルシャース・グール(元ソルトルムンク聖王国の首都であり王城 今はバルナート帝國が占領している)

マルドス城(ツイン城を守る城 通称『山の城』)

カムイ城(ツイン城を守る城 通称『谷の城』)

黒色槍兵隊(ヴォウガー率いる玄武兵団の精鋭部隊 「シュワルツランツェンレェィター」と呼ばれる)

四神兵団(バルナート帝國軍の軍団の総称、白虎騎士団、朱雀騎士団、青龍兵団、玄武兵団の四つに分かれる)


〔参考二 大陸全図〕
フォト



〔参考三 マルシャース・グール周辺拡大地図〕
フォト



〔参考四 あらすじ〕
龍王暦〇〇〇一年 八大龍王によって八つの國(くに)が建国される

龍王暦一〇四九年八月 ソルトルムンク聖王国にあるクルス山でハクビが発見される ハクビは記憶喪失

龍王暦一〇五〇年二月一五日 ソルトルムンク聖王国のコリムーニ老聖王とバルナート帝國のロードハルト帝王がバクラにて会談 その席上コリムーニ老聖王が急死する

同年三月一〜三日 ソルトルムンク聖王国とバルナート帝國が国境の町バクラで交戦、ソルトルムンク聖王国側大敗(バクラの戦い)

同年同月一〇日 ソルトルムンク聖王国の王城陥落 聖王国滅亡 ジュルリフォン聖王子は大陸最南端のツイン城に逃げ込む

同年五月三日 コムクリ村にバルナート帝國軍が襲撃、ハクビが白虎騎士団のバルゴー隊長を倒す 以後、グラフ将軍に助けられ、残党軍の拠点であるアユルヌ渓谷に到着する 

同年八月初頭 バルナート帝國とミケルクスド國連合軍がジュリス王国を滅ぼす

同年九月四〜五日 聖王国軍と帝國軍がツイン盆地で激突(ツイン城の戦い)、帝國軍、ツイン盆地より撤退

同年同月一四日 帝國軍のマルドス城がハクビの策により陥落 帝國軍撤退

同年同月一八日 ハクビが帝國軍ケムローンをカムイ湖の戦いにて倒す 帝國軍カムイ湖より撤退

同年一〇月五日 聖王国ジュルリフォン聖王子、グール平原南にて、グラフ将軍等と合流 五千人の兵を前に演説を行う(グール平原での演説)

同年同月一〇日 聖王国軍がマルシャース・グール奪回に向けて進撃開始
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