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2010年07月09日10:06

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八大龍王伝説 【080 血戦!マルシャース・グール(十) 〜グラフ怒る〜】


いつもお読みいただいている皆さま、ありがとうございます

それでは早速、八大龍王伝説をはじめます


【080 血戦!マルシャース・グール(十) 〜グラフ怒る〜】


〔本編〕
三十台以上の突車(とつしゃ)が、距離一キロメートルに及ぶ城壁に突進していく

数台が敵の仕掛けた落とし穴に落ちたりしたが、それ以外は城壁に激突した

続いて、同じく三十台以上の高車(こうしゃ)が城壁に取り付き、はしごをつたって多くの兵が城壁の上に到達した

また三十台以上の投車(とうしゃ)が一トンもある巨大な岩を城壁にたたきつける

さすがは二メートルの厚さを誇る城壁だけあって、簡単には破壊出来ない…

がそれでも時間の問題であった

四十分後の午前十一時十分には、グラフ将軍率いる聖王国兵は、城壁に十箇所以上に及ぶ進入路を確保することに成功した

そして城壁の上で防戦していた帝國兵の攻撃も完全に沈黙した

グラフ将軍は城壁の瓦礫を取り除く作業を指揮しながら、二交替制で兵を休息させていた

正午近くであろうか、一頭のグリフォンが南方からグラフ将軍の陣に向かってくる

グリフォンの背中には黒い鎧を来た兵が乗っている

本隊に駐留していた宰相ザッド直属の飛兵であった

「将軍!ザッド宰相からの伝令です」

その飛兵はグラフの本陣に入ってきた

「現在、ムーズ将軍の本隊は、敵のヴォウガーの本隊と交戦中です…」

「そうか!玄武兵団は聖王子のおわす本隊に総攻撃を仕掛けてきたか!分かった!直ちに我が軍は本隊に合流する」

グラフ将軍が答えた

そして立ち上がろうとするのを

「いや!将軍!お待ち下さい」

と言ってグラフ将軍を制止し、飛兵は伝令の内容を続けた

「本隊への合流は必要ございません なぜなら、本隊の聖王子は偽物です

本物の聖王子はマクスール将軍の左翼隊におります 将軍はこのまま王城内部へ進み、速やかにマクスール将軍の左翼隊と合流して下さい」

「何?」

グラフ将軍はジロリとその兵を睨んで、再び座った

「そんな姑息な… それで本隊のムーズ将軍は偽物の件はご存じなのか?」

「いいえ!ムーズ将軍はご存じありません あくまでも最小限の味方しか知らないこと…」

「馬鹿者!!」

グラフ将軍は飛兵の言葉を遮って、大声で怒鳴った

グラフ将軍の顔はみるみる真っ赤になっていった

「はっ!」

飛兵はその一喝に恐れおののき、平伏した

「ムーズ殿を見殺しにする気か!ザッドの奴は… あの御仁(ムーズ将軍)は最後の最後までその偽物を守ろうとされるぞ

それにそんな姑息な手を使ってこの戦(いくさ)に勝っても、大陸全土の物笑いだ!策というものは、弱者が強者に向かって使う手だ!聖王国兵として恥を知れ!」

「はっ!し・しかし!この作戦は聖王子も絡んでの事…マクスール軍との合流のご命令には従っていただきますぞ」

伝令の飛兵はグラフ将軍の迫力に圧倒してはいたが、それでも伝える事だけは伝えた

「それは分かっている!マクスールとは合流する!ところでザッドはどうしたのだ?」

「はっ!ザッド様は私に伝令を命じると、他の飛兵と共にマクスール様と合流いたしました」

「分かった!もういい!お前はもうザッドのもとに行け!!」

グラフ将軍は怒りで顔が羅刹のような形相になっていた

「はっ!し・失礼致します」

伝令の飛兵は慌ててグラフ将軍の本陣から退出して、ザッドと合流すべくマクスールの軍へ飛び立っていった

それから十分後グラフ将軍は本陣に座っていた

そしてその横に副官のスルモンが控えている

そこへ

「遅くなりました」

と言いながら、ハクビが入ってきた

「よし!これから二人に聞かせたいことがある」

そう言うとグラフ将軍は、先ほどのザットからの伝令をスルモンとハクビに話した

「何とそのような手を使うとは…」

スルモンも呆れたようにつぶやいた

ハクビは黙ってはいたが、同じような思いであったと察せられる

今もこの時代も、戦争で策を用いることに対してあまり否定的ではない

策に頼らず敗れてしまえば何の意味もなさないので、策そのものを否定する風潮はなかった

しかし戦略的に有利な立場で、特に全大陸中の人々にソルトルムンク聖王国の正当性を示すための戦い−今回のマルシャース・グール王城奪回戦などまさにそのような戦いであるが、そのような戦いであまりに小細工と言われてもしょうがないような戦術レベルの策を弄するのは後々卑怯者としての誹(そし)りを免れない

グラフ将軍のこのような考え方は聖王国の誇りを持った軍人ならだれでも共感できるものである

そしてそれは敵といえども同じ事が言える

だから、帝國のヴォウガー軍団長も、何の迷いもなく聖王国の本隊(ムーズ将軍の隊)に一斉攻撃を仕掛けたのである

「しかし…」

グラフ将軍が続けた

「命令なので、従わないわけにはいかない 我らはマクスールの左翼隊と合流するため西へ進む

だが本隊のムーズ将軍も見捨てるわけにはいかない ハクビ!」

「ハッ!」

「お前は二百を率いて、南方のムーズ将軍と合流し、この真相(聖王子の偽物の件)を将軍にお伝えしろ!真実を知ればムーズ殿も対処のしようがあるというもの…」

「分かりました」

「それから…」

グラフ将軍はそう言うとそばにいた一人の兵に旗を持ってこさせた

その旗には黒地に白で『ハクビ』と書かれていた

「これを背中に差して行け!玄武兵団にとって『ハクビ』は恐怖の対象だからな」

「承知!」

ハクビはそう言うと旗を受け取り、本陣を後にした

そして十分後の午前十二時三十分、ハクビ率いる二百人の騎兵は東の王城の城壁にそって南方へ向かった

ムーズ将軍とヴォウガー軍団長の隊が今まさに戦っている只中(ただなか)へ…



〔参考一 用語集〕
ハクビ(眉と髪が真っ白な記憶喪失の青年 グラフ軍の副官)

グラフ(ソルトルムンク聖王国の地利将軍)

スルモン(グラフ将軍の副官)

マクスール(天時将軍ブルムスの息子 将軍位)

ヴォウガー(バルナート帝國四神兵団の一つ玄武兵団の軍団長)

ムーズ(ソルトルムンク聖王国の人和将軍)

ザッド(ソルトルムンク聖王国の宰相)

ソルトルムンク聖王国(大陸中央部から南西に広がる超大国 第八龍王優鉢羅(ウバツラ)の建国した國)

バルナート帝國(北の強国 第七龍王摩那斯(マナシ)の建国した國 金の産地)

マルシャース・グール(元ソルトルムンク聖王国の首都であり王城 今はバルナート帝國が占領している)

突車(巨大な岩石や木を対象物に激突される攻城用の車)

高車(消防車のはしごのように長くのびて城壁などの上に兵を取り付か
せるための車)

投車(巨大な岩石や大量の矢を、超長距離に飛ばす車)


〔参考二 大陸全図〕
フォト



〔参考三 マルシャース・グール周辺拡大地図〕
フォト



〔参考四 あらすじ〕
龍王暦〇〇〇一年 八大龍王によって八つの國(くに)が建国される

龍王暦一〇四九年八月 ソルトルムンク聖王国にあるクルス山でハクビが発見される ハクビは記憶喪失

龍王暦一〇五〇年二月一五日 ソルトルムンク聖王国のコリムーニ老聖王とバルナート帝國のロードハルト帝王がバクラにて会談 その席上コリムーニ老聖王が急死する

同年三月一〜三日 ソルトルムンク聖王国とバルナート帝國が国境の町バクラで交戦、ソルトルムンク聖王国側大敗(バクラの戦い)

同年同月一〇日 ソルトルムンク聖王国の王城陥落 聖王国滅亡 ジュルリフォン聖王子は大陸最南端のツイン城に逃げ込む

同年五月三日 コムクリ村にバルナート帝國軍が襲撃、ハクビが白虎騎士団のバルゴー隊長を倒す 以後、グラフ将軍に助けられ、残党軍の拠点であるアユルヌ渓谷に到着する 

同年八月初頭 バルナート帝國とミケルクスド國連合軍がジュリス王国を滅ぼす

同年九月四〜五日 聖王国軍と帝國軍がツイン盆地で激突(ツイン城の戦い)、帝國軍、ツイン盆地より撤退

同年同月一四日 帝國軍のマルドス城がハクビの策により陥落 帝國軍撤退

同年同月一八日 ハクビが帝國軍ケムローンをカムイ湖の戦いにて倒す 帝國軍カムイ湖より撤退

同年一〇月五日 聖王国ジュルリフォン聖王子、グール平原南にて、グラフ将軍等と合流 五千人の兵を前に演説を行う(グール平原での演説)

同年同月一〇日 聖王国軍がマルシャース・グール奪回に向けて進撃開始

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