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2024年05月01日04:42

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13年ゼミと17年ゼミの「素数ゼミ」が今年一斉に羽化し、それは221年ぶり

 間もなくアメリカの東部から中西部にかけて、素数ゼミの大発生シーズンとなる。

◎1803年の「ルイジアナ買収」以来
 今年は、特に超大発生となりそうだ。というのは、13年ごとに地上に現れ羽化する「13年ゼミ」と17年ごとの「17年ゼミ」(写真)が、この最小公倍数である221年に当たる今年、それぞれのグループが同時に地上に姿を現すと考えられているからだ。
 13年ゼミも17年ゼミも、出現する年が異なる多くのグループがある(「プルード」という)。13年ゼミは3プルード、17年ゼミは12プルードもいる。だから両方とも、異なるプルードがアメリカのどこかで姿を現すことはある。
 しかし13年ゼミと17年ゼミのそれぞれのプルードが一斉に発生するのは、実に221年ぶりとなる。今年は、アメリカがフランスから同地の広大な植民地210万平方キロをフランスから1500万ドルで買収した「ルイジアナ買収」の1803年から221年目だから、その時以来となる。

◎13年ゼミと17年ゼミの一斉羽化なら1兆匹も
 羽化が始まるのは4月の終わり頃から6月頃までだから、すでに東部から中西部にかけて羽化が始まっているかもしれない。
 幼虫は前脚を使って地面の穴からはい出てきて、最後の脱皮(羽化)を済ますと、オスは数日後にはメスを求めて鳴き始める。鳴き声は次第に強くなり、合唱状態になると、飛行機の騒音より大きくなる。

 上の図に示したように、13年ゼミと17年ゼミの発生の重なるイリノイ州スプリングフィールド付近では、最大限の大音量になるかもしれない。
 何しろ発生の数は半端ではない。両方合わせれば1兆匹にもなる可能性がある(写真=大発生した素数ゼミ)。0.4ヘクタールの公園で100万〜150万匹も現れるかもしれないという。
 1兆匹のセミと言ってもピンとこないが、例えば1匹のセミの体長は、1インチ(約2.54センチ)を少し超えるぐらいで、1匹ずつ縦に並べると、長さは実に約2540万キロにもなる。地球と月との間を33回も往復できる距離だ。
 セミの「被害」大音声だけではない。大量の死骸が積み重なると悪臭を発するし、車がセミを挽くと大量の脂分に滑ってスリップ事故も起こる。

◎氷河期と寒冷地への適応
 13年も17年も地下で暮らすセミたちは、地上に現れると羽化し、あわただしく交尾して子孫を残して命を終える。地上での暮らしはたった4〜6週間だ。地下で暮らす時間と比べてもあまりにも短い。
 日本に分布するセミの幼虫の地中生活はずっと短い。ツクツクボウシで1〜2年、アブラゼミで3〜4年、クマゼミで4〜5年くらいだ。
 13年ゼミ、17年ゼミは、どうしてこんな特殊な生活サイクルを持つに至ったのか。
 そしてなぜ13年、17年と素数年での羽化で、12年、16年でないのかについては、文末に掲げた過去の日記で述べているので、素数年の謎解きについてはそちらを参照していただきたい。
 日本に分布するセミよりも地中生活が非常に長いのは、氷河期の影響があったのではないかと考える。1万年前くらいまで、上掲図で記した17年ゼミの発生地域は、氷河期の五大湖南方までローレンタイド氷床で広く覆われた。後氷期になっても、冬季は氷点下30℃くらいにまで下がる。幼虫が木の根から樹液を吸う期間も量も限られる。だから長い幼虫期の地下暮らしとなるのだ。

◎捕食者対策にもなる
 捕食者対策にも有効だ。13年ごと、17年ごとの発生となると、同時期にたくさんの成虫が現れる。捕食者にとって、鳥や小動物などの捕食者に食われる一匹ごとの確率は極小になる。
 豊富な餌を前にして捕食者が腹いっぱいになり、それだけ繁殖に成功して個体数を増やしても、セミはその後長期にわたって地上に現れないので、捕食者の子孫は食に困って個体数は調整される。13年ゼミも17年ゼミもそれぞれいっせいに地上に現れても、捕食者だらけに遭うことはない。
 一斉に成虫になれば、繁殖相手に困ることもない。

◎やがては17年ゼミは13年ゼミに
 こうして生物としては異例に長い幼虫の地中生活だが、これが近年の温暖化で17年ゼミが4年も早く羽化する現象が現れた。温暖化で幼虫の栄養が良くなると、早くに生長が進みやすいからだ。
 この傾向が続けば、4年早く羽化する17年ゼミが増え、すべて13年ゼミになるかもしれないという。そうなると、同時・大量の羽化というメリットは薄れる。
 そもそも13年ゼミと17年ゼミは、50万年前頃に同一祖先のセミから別れた。おそらく13年ゼミから17年ゼミが別れたのは、氷河時代のの寒さへの適応だったろう。それが元に戻りつつあり、人為的だとしたら、これもまた人類の自然への介入に1つの例となる。

▽これまでの素数ゼミの日記
・21年5月30日付日記:「アメリカ北東部、17年ゼミの一斉羽化の年;『素数ゼミ』の謎」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202105300000/
・13年6月14日付日記:「メキシコ周遊:17年ゼミとサボテンに寄生するカイガラムシ」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/201306140000/

注 容量制限をオーバーしているため、読者の皆様方にまことに申し訳ありませんが、本日記に写真を掲載できません。
 写真をご覧になりたい方は、お手数ですが、https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202405010000/をクリックし、楽天ブログに飛んでいただければ、写真を見ることができます。

昨年の今日の日記:「電気自動車EV、『グリーン・ボッチング』の恐れは」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202305010000/

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