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2023年04月12日14:57

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4月10日 「喬太郎の古典の風に吹かれて」


 高座前に膝隠しが置かれると、物寂しい気持ちになる。落語を聞いているうちに忘れてしまうのだが、「死神」でろうそくの火をつごうと正に必死の形相の後、火が消え、ぱたっと生を終える手の仕草のやり場・・・そこに台があると、どうしても醒めてしまう。噺家も高齢化だから・・・というか、噺家は昔から高齢者が多いのだから、それは問題じゃない。膝隠しを光学迷彩化するか、上方落語に転向するか、かつての花緑のように椅子で演じるか、いや、それじゃあ喬太郎の落語じゃないでしょう。慣れるしかない。分かってはいるんです。でもね(最初に戻る)

 喬太郎が「胸の奥でそっと敬愛する師匠をお招きして、芸談や楽屋噺をうかがう」連続企画。もう9回も続いていたのだな。以前BSで喬太郎が番組を持っていた時、小満ん、小柳枝、南喬などを呼んで、芸談を聞くコーナーがあったが、あれが落語会になった感じか。途中コロナ禍もあり、久しぶりの開催。ゲストが正朝と聞いて足を運んでみた。会場は渋谷区立大和田小学校の跡地に出来た伝承ホール。伝承と銘打つ通り、左右に桟敷が設けられた横浜にぎわい座のような演芸向きの会場だ。

●前座 ひろ馬「孝行糖」
●喬太郎「首ったけ」
●正朝「三方一両損」
<お中入り>
●対談
●喬太郎「死神」

 喬太郎が学生時代に銀座の居酒屋でバイトをしていたこと、そしてその店では落語協会の寄席が催されていたことは以前も聞いたことがある。正朝はそこで見た、妙に司会が板についたアルバイトのことを覚えていたそうな(その当時は瘦せていたことでしょう)。
その後楽屋でさん喬門下で楽屋入り・・・と挨拶されたとき、あの司会の上手いアルバイトだと驚いたそうだ。
 喬太郎が正朝の落語が好きだというのはよくわかる。正朝は自分のニンに合った噺をきちっと聞かせる人。そしてそこにクセや独自の味付けではなく、本寸法でありながら軽さ、明るさを持って演じられる人だと思う。

 自分が正朝を意識して聞いたのは、横浜にぎわい座有名会と記憶している。当時仕事場が紅葉坂にあったので、暇なときに落語を聞くには良い環境だったが、「有名会」とは名ばかりで落協、芸協共に、寄席に出番がない落語家に仕事をまわしているんじゃないかと思えるほど地味な人選で、さほど頻繁に通っていたわけでもない自分でも、演者が仕事を飛ばしたと思われる場に二度遭遇したことがある。また場所が野毛ということもあって、客席でスーパーで購入した刺身を食う男性、昼寝をしに来たと思しきホスト風の若者など、演者も演者なら客も客。それでも時には喜多八に当たったり、寿輔の「文七元結」を聞いてジーンとしたり、南なんが好きになったり、復帰したての遊雀や、初めて菊六を聞いてその巧さに驚いたのもこの有名会だった。
 その日正朝はトリで、演じたのは十八番の「目黒のさんま」。爽やかな、清清とした芸風を好ましく思った。以後寄席の主任や鈴本の独演会、ビクター落語会、年末の扇遊との二人会など、名前を見つけると足を運んでいた時期もあったが、そのうち聞かなくなってしまった。この日対談で入門時のことを色々語っていたが、師匠選びで落研の先輩のほたる(権太楼)に相談した際、「お前のようにいい加減なやつには志ん朝、談志、円窓のような厳しい師匠連は無理」と柳朝を勧められたとの由。見た目はヤクザのようだが、身内にやさしい柳朝の下でこそ続けられたのかもしれない。師匠は自分で稽古をつけないが、他の師匠にちゃんと稽古のお願いを通して、手土産の洋酒を持たせてくれた・・・など、いろいろ興味深いエピソードが聞けて楽しかった。

 横浜落語会からDMが届く。来年までのラインナップのチラシの裏に、最新の公演における感染症防止対策が細かく書かれている。横浜市のイベントガイドラインより厳しく「マスクを絶対に着用したくないというお客様にはチケット購入をお勧めししません」とある(4月1日時点)。
 この日伝承ホールの会場でも、自分の近くの座席のノーマスクの客に、スタッフが「マスクお持ちでなければ・・・」と着用を勧める場面があった。客の方は「マスクは持っています」と云ってそのままノーマスクで鑑賞していたが、おそらく少々せきをしていた?ので付近の客がスタッフに相談したのだろうか。
 政府によって個人の判断にゆだねられたマスク着用だが、ノーマスクを貫く側も、マスク着用を続ける側も、どうにも我が強いように思えてしまう。それはどちらも己が正しいと思っているから・・・そしてそれが間違いではないというのが悩ましい。早くべたべた汗をかく季節になって、マスクを外したくなる息苦しさに皆が支配されてしまえば良いのに。

 
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