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2022年11月20日09:23

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ムスコ物語[読書日記909]

題名:ムスコ物語
著者:ヤマザキマリ
出版:幻冬舎
価格:1500円+税(2021年10月 第5刷)
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ヤマザキマリさんの子育てエッセイを読みました。
この本を書いた意図が垣間見える文章を【はじめに】から引用します。
“日本の教育で推奨されるような理想的な子育てというフォーマットを全うしようと日々頑張っているお母さんにとっては「なにこれ、ありえない」としか思えない事柄も次々と出てくるだろう。
 でも、ここに書かれている世界のあらゆる場所での出来事や現地の人々との関わりが、もしかすると読者の日々の生活の思わぬところで、なにがしかの役に立つことがあるかもしれない。”(11p)

目次は次の19話です。
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 はじめに
 第1話 ハワイからの電話
 第2話 おかえりデルス
 第3話 ナシーブとデルス
 第4話 イルカと少年
 第5話 キューバの赤ちゃん
 第6話 ババとチェロ
 第7話 新しい家族(前編)
 第8話 新しい家族(後編)
 第9話 沖縄生まれ北海道育ち
 第10話 エリート校か現地校か
 第11話 トムに会いたい!
 第12話 家族のカタチ
 第13話 デルスの旅
 第14話 親離れ子離れの距離感
 第15話 母の木登り
 第16話 息子の看病
 第17話 ラーメンかタコかお坊さんか
 第18話 思い通りにはならない
 最終話 地球の子供
 あとがきにかえて『ハハ物語』山崎デルス

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印象に残った文章を5つ引用します。

1.【第2話 おかえりデルス】から、林間学校でいじめにあった息子(デルス)への夫の言葉。
“私とデルスのやりとりを聞いていた夫がやってきて、何を言うかと思えば「人間の子供なんてみんなそんなもんだ」と一言。「気にしていたら、キリがないよ。少し辛抱して、別のことを考えたりしながら、自分が関心の対象にならなくなるのを待つ以外にないよ」
 いじめられた経験がなかったら言えない言葉だと思った。”(28p)
 ⇒ちなみに、この夫は考古学好きで趣味が合い、ヤマザキマリさんと再婚した方です。

2.【第11話 トムに会いたい!】から、著者の母親の話。
“私の母は、娘である私に自分が子供の時代に熱中した本を読みなさいと積極的に勧める人だった。『アラビアン・ナイト』も『ニルスのふしぎな旅』も、母が子供時代に読んで異文化と世界の広さに思いを馳せた本だが、この2冊を私もやはり母と同じように熱心に読み込むことになった。”(132p)
 ⇒いいお母さんです。ずいぶん型破りだったようですが。

3.【第12話 家族のカタチ】から、これも著者の母親の言葉。
“実際、「世界というものが、見えている範囲だけだと思っていると、いずれたくさん窮屈な思いをすることになる。生活環境も、生き方や信じるものの違う人間もできる限りたくさん見せてあげたほうがいい。あんたに頼らなくてもしっかり生きていけるように」という言葉は彼女の本音だったはずだ。”(147p)
 ⇒型破りは子育てが二代続いたわけですね。

4.【第14話 親離れ子離れの距離感】から、 "親の生きがい" に関する疑問。
“ただでさえ世知辛い世の中の、しかも貧乏に打ちひしがれていた自分のような人間のもとに、うっかり生まれてしまった子供に対して "親の生きがい" などという愛情の皮を被った重荷を課す気持ちには全くなれなかった。”(173p)
 ⇒“愛情の皮を被った重荷”という言葉がヤマザキマリさんらしいです。

5.【第15話 母の木登り】から、トレーディングカードゲームへの腹立たしい思い。
“デルスがやはり他の子供たちから影響を受けてはまりだしたトレーディングカードゲームも、私は大嫌いだった。カード自体はいいとしても、子供たちからじゃんじゃん百円玉を巻き上げては「ああ、また同じカードが入ってた」などと彼らを悔しがらせ、さらなる購買意欲を焚きつけるという販売システムが無性に腹立たしかった。”(181p)
 ⇒これには、全面的に賛成します。

締めくくりに、【あとがきにかえて『ハハ物語』】から、息子(山崎デルス)本人の言葉を引用します。
“息子にとってこの世で誰よりも理不尽でありながらも、お人好しなほど優しい人間である母ヤマザキマリ。そんな母のおかげで国境のない生き方を身につけられた私は、おかげさまでこれから先も、たったひとりきりになったとしても、世界の何処であろうと生きていけるだろう。”(242p)
「一人でも生きていける自信」、親から子供への最高のプレゼントです。

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ヤマザキマリ(Mari Yamazaki)
漫画家・文筆家。1967年東京都出身。
84年にイタリアに渡り、国立フィレンツェ・アカデミア美術学院で美術史・油絵を専攻。
比較文学研究者のイタリア人との結婚を機に、エジプト、シリア、ポルトガル、アメリカなどの国々で暮らす。
2010年に『テルマエ・ロマエ』で第3回マンガ大賞、第14回手塚治虫文化賞短編賞を受賞。
15年度芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。17年にイタリア共和国星勲章コメンダトーレ授章。
21年に兼高かおる賞受賞。東京造形大学客員教授。
『スティーブ・ジョブズ』(ウォルター・アイザックソン原作)『プリニウス』(とり・みきと共作)『オリンピア・キュクロス』『望遠ニッポン見聞録』『国境のない生き方』『ヴィオラ母さん』『パスタぎらい』『たちどまって考える』『ヤマザキマリの世界逍遥録』など著書多数。

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