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2022年03月09日18:35

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アイダよ、何処へ

アイダよ、何処へ Quo Vadis、Aida

ロシアのウクライナ侵攻から2週間。日本では東日本大震災と原発事故の起こった311が近づいてきた。ロシアはチェルノブイリ原発を掌握したという。そしてウクライナの首都キエフ陥落は時間の問題と。

自然災害と人為的な戦争とは全く違うものだけれど突然日常を奪われ住居や家族を失い故郷にも戻れない。こんな理不尽がなんの罪もない人々にふりかかる。

この映画はいま起こっている惨状よりよりさらに酷い事実を見せつけられるものだった。昨日まで隣人だった者が敵となる。ボスニア紛争末期の、戦後ヨーロッパ最悪の集団虐殺(ジェノサイド)「スレブレニツァの虐殺」を描いた実話。
ボスニア出身のヤスミラ・ジュバニッチは、2006年に「サラエボの花」でベルリン国際映画祭で金熊賞をとった監督。今年度のアカデミー賞にも国際長編映画賞でノミネートされている。

ユーゴスラビアから独立したボスニアヘルツェゴヴィナで1992年から95年までつづいた
紛争では、ボシュニャク人、セルビア人、クロアチア人の3民族が戦闘を繰り返し、人口435万人のう死者20万人避難民200万人が発生した。

1989年長男が生まれたころイラクの湾岸戦争があったが、1993年に次男が生まれ、私にとっては子育てに忙しく世間のことはなにも覚えてない。テレビもみないし流行っていた歌も知らない。
いまやっているNHK朝ドラ「カムカムエブリバディ」ひなた編がちょうどその時代(平成初期)だ。昭和天皇が崩御、平成となった平和ボケ日本の片隅にいた自分は、世界でこんなひどい殺戮が起こっていたことなんて全く知らなかった。

セルビア人勢力に襲撃され陥落したボスニア東部の町スプレニツァ。避難場所を求める2万人の人々が街のはずれにある国連施設に殺到するが、街を支配したムラディッチ将軍ひきいるセルビア人勢力は国連軍と市民の代表の交渉を反故にし、武装集団が国連施設に押し入る。そして避難民の移送とおぞましい虐殺を開始するのだった。国連軍のオランダ人の大佐たちはなすすべもなく自分たちの身の安全のために施設をたたんで撤退する。なんということ??これが人道支援の実態??(絶句)

国連施設で通訳をつとめていた元教師のアイダは、撤退メンバーリストに自分の名前が載っているが、スプレニツァで校長をしていた夫や若い2人の息子は連れていけないと言われる。決死の覚悟で家族を脱出させようアイダだったがNATOもUN軍も結局は他人事。

フォト


母は強し。最初は国連スタッフの事務所に家族をかくまい、そのあとも移送されないようにコンテナの中に彼らを隠す。荷物の中に息子を隠して運び出してと国連のスタッフに懇願する。あらゆる手をつくして家族を救おうとする。されどその強さでも運命を変えられなかった。

避難民が男と女別々に引き離され移送車に載せられていくさまは、まるでアウシュビッツに連行されるユダヤ人だ。四角い建物の中におしこめられ皆殺し。その建物の近くではセルビア人の子供たちが何も知らずサッカーをして遊ぶ。

これがわずか四半世紀前に(何処かの未開の野蛮な国でじゃなく)ヨーロッパで実際に起きたことだなんて。
実際今この21世紀の世の中で帝国主義回帰みたいなことが起きていること自体信じられんのだが。

映画の最後は、雪の舞う中一人だけ生き残ったアイダがかつて住んでいたアパートを訪れるシーン。アパートはきれいに改装され見知らぬ家族(セルビア人)が住んでいる。自分たちの遺していった写真やものを受け取るため訪問したのだった。その家族の幼い息子はアイダが教える学校に入学予定という。アパートを出たアイダとすれ違う男性はかつて街を制圧したセルビア人勢力の一団にいた男だった。大量虐殺が繰り返された建物の下を掘り起こしたら山のように人骨が出てきた。その骨の確認現場でアイダは泣き崩れて立ち上がれない。あぁ私の可愛い息子、あなたを守れなかった・・
教師に戻り自分の大切な家族や隣人を奪った彼らとその子どもたちとまた隣人として生活していくことになる皮肉。
かの国の運命をみているようで心が痛かった。

ちなみに、以前「アンダーグラウンド」(1995) エミール・クストリッツァ監督・出演:ミキ・マノイロヴィッチほか)をBSプレミアムシネマ劇場で観たが、あの映画もすごかったな。カンヌ映画祭グランプリ。亡国の叙事詩。名作。旧ユーゴスラビアという国は本当に複雑な歴史の国。
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