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2021年11月05日23:49

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シリーズの破壊から始めた再生の有終 『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』

6代目ボンドの物語が終る。その結末はやはり禁じ手の連続だ。

そもそもシリーズ開始当初から一連の作品は「従来の様式」を破壊し再生する異色づくめだった。第21作「〜カジノ・ロワイヤル」で予想をくつがえし6代目ボンドに抜擢されたのはダニエル・クレイグ。

暴力的な雰囲気に「殺し屋顔のボンド」とささやかれたクレイグは、「〜カジノ・ロワイヤル」の演技で絶賛され、単体映画としても傑作の「〜スカイフォール」で不動のものとなる。だが熱心なシリーズファンたちは、それ以外でも驚いた。

6代目ボンドがスパイとして完成されておらず未熟な設定であったこと。マネー・ペニーやQがいないこと。*1 きわめつけは「〜カジノ・ロワイヤル」の最後だ。

ボンドは最愛の女性の復讐という個人的な動機で任務を放棄。第22作は前作の直接の続編となる。*2 以降6代目ボンドはお約束を破り続けた。

その最大の破壊と再生は、スパイではなくボンドという“個人”に焦点をあてたことだろう。6代目ボンドはじつに人間らしく、迷いの中で戦い同時に成長する。*3 観客と一緒にだ。そのボンドの個人的な物語は本作で頂点へと達した。

前作からヒロインを続投するマドレーヌ(レア・セドゥ)との関係は禁じ手も禁じ手。だが確実にいえることがある。6代目ボンドはシリーズで最も愛を信じ戦い、物語に有終をうったボンドである。まちがいなく。*4

そうして伝統は再生し物語は次代へと引き継がれる。*5


※1 007シリーズに必須のすべての顔役――М、Q、マネーペニーがそろったのは第23作の「〜スカイフォール」であった。くわえてこの「〜スカイフォール」でもお約束を破る。旧Мの去就を描き同時に新Мが就任するのだ。

※2 というよりも最初の21作目から最後の25作目まで6代目ボンドのシリーズはすべて前作の物事をふまえつつ展開する。直接の続編だ。従来のシリーズは前後は関係なかった。この部分もシリーズとしては特筆すべきだ。

※3 6代目ボンドとは「ダブルオー・コードネーム・スパイ」ではなく1人の“人間”そのものであった。

※4 最後の最後に最大の禁じ手をやったな。ヴィランのサフィンが活躍しないなどの欠点はあるが終幕はシリーズ史上もっともエモいだろう。

※4 7代目ボンドに誰が抜擢され今後どう展開していくのか本当にたのしみだ。
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