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2021年04月30日07:55

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眠らせないよ

>>昔、一人の歌い手がいた。
歌を愛し歌に愛された彼女。
だが戦争が彼女から歌を奪おうとした。
歌い手とその歌に惚れ込んだ仲間たちは誇りを胸に皇軍慰問の旅に出る。
これは歌に生きた一人の女と、その歌を愛した人々の物語。

戸田恵子主演の舞台「sing a song」のチラシにはそう書いてあった。

戦争物は気が滅入っている今の私にはちょっと辛いな…
そう思いながらゲネプロで1000円という破格のお値段に惹かれて近くの市民会館に足を運んだ。

戸田恵子の歌で始まった舞台は二曲目の「別れのブルース」で予想通りモデルが淡谷のりこだとわかる。
そうなるとクライマックスは皇軍慰問で彼女が歌っている最中に、特攻隊たちが出撃に行くとこだろうという予想もつく。
生前彼女がそう言っていた記事を読んだことがあったから。

しかもブルースは歌うな、ドレスは贅沢である、化粧も不謹慎だという弾圧に抗い「ドレスは私の戦闘服だ!」と言ってのけるエピソードも知っていたので、睡眠不足が続いていたこともあり、始まってしばらくしたら私は何度もウトウトしてしまった。

その度にハッとして居眠りを気づかれたかなと周囲を見ると、数人頭が垂れている人がいた。
起承転結の「承」の部分は軍人や憲兵がステレオタイプで描かれて、ありがちなキャラや設定、展開だったから眠気を誘われたのは私だけではなかったようだ。

でも淡谷のり子の初老のマネージャーが言ったセリフが私の胸に刺さった。
「還暦を過ぎると思い出の方が多くなって、会えなくなった人のことや後悔することばかり思い出して眠れなくなることが何度もあるんですよ。そんな時歌を口ずさむと落ち着くんです」

それは思い出が私を侵食していくような気がして、眠れない日が続いている今の私の心情そのものだったから、衝撃で私はしばらく座席で固まってしまった。

そして思った。
結局そういう時、救いは「私だけじゃない」と思えることなのだと。

尤も私は歌を口ずさんだらその歌の思い出が蘇って、どんなに甘美な思い出だろうと過ぎ去った時間があまりにも膨大なことに戦慄し、落ち着くどころか、もっと落ち込むのだが。

そういえば先月「青春時代の思い出の曲」というテーマで日記を募集していたので「恋の秘密は歌が教えてくれた」という日記で応募した。
ところが発表は4月の中旬とあったのにそれがない。

確かその企画は中止になる可能性もある、というようなことが書かれてはいたが、それならそれでちゃんと言ってよ。

落ち込みが激しくて自分に何か課題や目標を与えたら発表日までが待ち遠しくなって、気が紛れるんじゃないか。
そんな気がして応募したのだけど、それだけにその日記に書いた思い出の歌にまで脅迫されているような気になる。

今夜も眠らせないよ…
今夜も眠らせないよ…
今夜も…と。
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