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2021年04月17日06:24

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言わずもがな

 「言わずもがな」なことというのは、一般に言ったり、書いたりするまでもないものですが、時々、故意的にか、過失的にか、これを言ったり、書いたりする人がいて、これは時と場合にもよりますが、なかなか面白いことがあります(そして、どうやら私はこれに対しては異常に敏感なようです)。

 つい先日も、このところ仕事で校正を担当している雑誌の編集後記にこんなことを書いていた人がいました。

 先日、某ラーメン店に行ってきました。その日はつけ麺を注文しましたが、最近、加齢のためかスープ割りをしております。それを察したのか、店員が私が最後の麺をつけ汁に入れたタイミングで、なんと、割りスープの入ったポットを私のカウンター席の前に置いてくれました。気が利くなと、感動し、その日は店を出ました。

 私は内心大ウケだったのですが、他の人々はそんなに面白みを感じなかったようでした。
 そりゃ確かに、事実としてはそうだった(つけ麺食べて、いいことあって、店を出た)のでしょう。でも、ラーメン店は元々何日も逗留するような場所ではありませんから、食べ終わって店を出たというのは、いわば当たり前のことであり、わざわざどうしても書かなければならないほどのことではないように思います(書くと、その日は例外的に店を出たようにさえ見えます)。せっかく店員さんのいわば神対応があって感動したというのに、そういう感動的な話を店を出たという言わずもがなの一言で終わらせてしまうとは!
 おそらく、筆者のお気持ちとしては、「その日は感動して店を出ました」といったものであったのであろうと思われます。が、実際には「その日は」の位置がズレて、「…感動し、その日は店を出ました」となっています。なんだか、ぶつ切り感があるというのか、感動したことと店を出たこととの間に距離ができてしまったように感じます。そんなところが私としては可笑しくてたまらなかったのですが…。変かなぁ。

 そう云えば、長嶋一茂がプロ野球の世界に入った時にも、こんなことがありました。国民的人気が高いミスターの息子がプロ入りしたわけですから、世間的注目を集め、記者会見が開かれました。その席で、この人は「どんなバッターになりたいですか?」と訊かれたのです。彼の答えは、こうでした。「トップバッターのクラスになりたいと思います」。
 「言わずもがな」というほどではありませんが、なんか変だと思いませんか? 大学時代、クリーンアップを張っていたスラッガーが、1番バッターを目指すなんて。
 この人は本当は「トップクラスのバッターになりたいと思います」と言いたかったのではないでしょうか? ところが、「クラス」を入れる位置がズレてしまったものだから、なんだか妙なことになってしまったのではないか、と。多分、そうだろうと思っていたら、しばらくして、田丸美寿々があるコラムで、同様のことを書いていて、同じように感じていた人がいたんだ、とちょっと嬉しくなりました。

 また、以前こんなCMがあったことは覚えていませんか?
https://www.youtube.com/watch?v=Kl7rge-bvYM

 私は、これも可笑しくてたまりませんでした。
 これについては、タモリがズバリ言い当ててくれたことがありました。
「“歌手の”ってわざわざ付けるから可笑しいんだよな」
 まぁ、まだ小金沢くんがデビューしたての頃だったので、少しでも多くの人に知ってもらおうという気持ちから、こんなセリフになったものと思われますが、歌手なんだから、わざわざ「歌手の」と言うのは「言わずもがな」ですよね。

 こんなふうに感じてしまう私の原点は、どうやら高校時代にあったように思います。
 まだ、岡山にいた頃に、友人のM君が、野球部に入部して、スポーツ刈りなり、坊主頭なり、とにかく髪を短くする必要があったのですが、M君はほとんど虎刈りと言ってもいいくらいの、いささか風変りな(傑作な?)短髪で登校してきました。
 そこで、O君が、「床屋でどう言うたらそんな頭になったん?」と訊きました。すると、M君は「短こうしてくださいと言うたんじゃ」と答えたのです。
 O君は私と感性が似ていたのか、大笑いして、「そりゃ床屋で長うしてくださいと頼む人はおらんで」とウケまくってました。実は、私も何か聞いたこともないようなすごいヘアスタイルの名前でも飛び出すのではないかと思っていたところだったので、このあまりにも「言わずもがな」のお答えには、すっかりやられてしまいました。

 これらの話は、私が思うほど可笑しくはなく、ピンとこないという人もいるかもしれません。むしろ、そういう人たちの方が今は多いのかもしれません。
 でも、この程度の「言わずもがな」なことで笑っても、おそらく人畜無害であろうと思われます。確かに下手をすると、片言隻句を捉えて揚げ足をとることになるおそれがないとは言えないかもしれませんが、この程度なら許されるのではないでしょうか? それに、今はコロナでどこに行っても閉塞感ばかりが満開です。であれば、この程度のことでも笑えるのであれば、笑った方がお得と思いませんか?
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