人は、新しい発見では「なぜ？」と問い詰めるが、所与の現実には深く追求することはしない。
例えば、遅くとも７０万年前に古型人類のホモ・エレクトスは海を突破してインドネシアのフローレス島に渡っていた（１６年６月１１日付日記：「矮小人類ホモ・フロレシエンシスの祖先の７０万年前の人骨化石発見、フローレス島に渡ったジャワ原人がほどなく小型化したことが判明」を参照）。
◎潮流の早い海を渡った古人類の驚異
その前段として２００３年、同島で少なくとも６万年前頃の人類ホモ・フロレシエンシスが発見されていた（写真＝ホモ・フロレシエンシスの復原像）。
特に前段のホモ・フロレシエンスの発見に、古人類学者と考古学者は予想外の発見で一驚した。
フローレス島の属する小スンダ列島とその西隣のバリ島とを隔てるロンボク海峡は、水深２５０メートルと深く、氷河期にも陸化したことがない。
同時に発見されステゴドン（古代ゾウ）化石や現存のコモドオオトカゲは、泳いで海を渡れるが、ヒトが泳ぐには潮流が早すぎ、また距離も大きすぎて不可能だ。
◎洪水で流されて？
舟ないし筏という航海手段は、まだなかった。
だから渡海手段は、いくら考えてもいまだに謎のままだ。しかし確かなことは、現実にホモ・エレクトスもホモ・フロレシエンスも海を渡ってフローレス島にいたことだ（ホモ・フロレシエンスはホモ・エレクトスから進化したとすれば、１回だけの渡海だが）。
このように古人類学者や考古学者は、いまだに彼らがフローレス島に渡った手段について悩み続けている。奇想天外のアイデアとし、大津波で流されてフローレス島に漂着したというものがあるが、溺れもせずに海峡を流され、それで子孫をつなげるほどの好都合の男女ペアが漂着できたのか、とたぶんに疑わしいのだが。
◎新世界ザルの謎
しかしもっと根本的な疑問は、南米新大陸にサル（新世界ザル＝広鼻猿類）がいることだ。これについては、霊長類学などが生まれるずっと前の新大陸発見直後に知られていたことなので、彼らがなぜ新大陸にいるのか追及されることは、まずない。
ちなみに彼ら広鼻猿類が、アジア、アフリカにいるサルやヒトも含む類人猿（彼らは一括して旧世界ザル＝狭鼻猿類と呼ばれる）とは別に、異なる祖先から独自に新大陸で進化した可能性はない。進化したとすれば、旧世界ザルと共通の祖先から分岐して進化したのだ（写真＝上は旧世界ザルの一種のニホンザルの母子、下は新世界ザルのコモンリスザルの母子）。
遺伝子の証拠や化石から、新世界ザルが旧世界ザルから分岐したのは、５０００万〜３０００万年前頃だったと考えられる。
すると、新世界ザルはどうやってその後に南米大陸に現れたのだろうか？
（この項、続く）
注 容量制限をオーバーしているため、読者の皆様方にまことに申し訳ありませんが、本日記に写真を掲載できません。
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昨年の今日の日記：「樺太紀行（１５）；チェーホフ山（鈴谷岳）で早くもワイルドフラワーに出合う�◆�
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