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2019年09月01日06:08

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ネズミ4題(その4=終):宇和海に浮かぶ戸島や南太平洋の孤島アンティポディーズ島でなぜネズミは異常繁殖したのか、その遺伝的背景

 ネズミは多産である。「ねずみ算式に増える」という言葉もあるくらいだ。
 四国宇和海に浮かぶ戸島(写真)がかつて全村離村の危機に瀕するほどのネズミの大繁殖に見舞われたことは、以前に述べた(19年8月12日付日記:「ネズミ4題(その1):海を渡るネズミにより占拠された四国の島、ネズミは泳ぎが達者!」を参照)。

◎島での爆発的大繁殖はよくあること?
 それは隣の島から海を渡ってきた大群がもとだったが、元の島でネズミどもはすべてを食い尽くして戸島への侵攻を試みたのだ。ではその発生元の島では、なぜそれほど大繁殖したのだろうか。
 島でネズミが異常繁殖するのは、例えば世界でも南太平洋の絶海の孤島のアンティポディーズ島(写真)でのように天敵のいない孤島ではどこでもあることらしい(18年4月4日付日記:「亜南極の絶海の孤島に大繁殖したネズミ20万匹駆除に成功、ニュージーランド自然保護省」を参照)。何しろ半端ない繁殖力なのだ。
 そのうえ、島にはネズミを捕食する天敵も、食物を競合するライバルも通常はいない。1度、定着すれば、根絶はかなり困難だ。

◎遺伝的に均質な個体群にもし有利な突然変異が起こったら
 おそらく島に初めて到着したのは、せいぜい雌雄1〜2個体ずつの少数だったはずだ。それが島の生態系を破壊するほど爆発的に増えるのは、天敵・競合者がいないにしても、遺伝子に本質的な変化が起こった、としか考えられない。
 少数個体から始まる個体群は、近親交雑の結果、遺伝的に均質な個体群になる。これが、「瓶クビ効果」である。
 その初期のごく少数の時の1個体に何か変異が起こったらどうなるか。
 一般に少数個体群の中で近親交配を繰り返すと、劣悪な遺伝子が顕在化され、疾病などでその個体と均質な個体群は自然淘汰されるが、中には個体にとって有利な遺伝子も表現されることがある。
 前者の場合がほとんどだと思われるが、これが仮に100回繰り返されても、後者のようなケースが後に1回起こると、創始者効果によってその個体は、特に繁殖率の高いドブネズミなどの場合、狭い島で押し合いへし合いする暮らしで生殖ホルモンが刺激され、爆発的な異常繁殖を引き起こす。

◎戸島には人が住んでいたことが幸いした
 愛媛県の戸島で起こったこと、そして南太平洋の絶海の孤島のアンティポディーズ島で起こったことは、その例だろう。
 アンティボディーズ島は無人島だったから、島にはムジアオハシインコ(写真)、アンティポデスアホウドリ、シュレーターペンギンなどの固有種の鳥がいるだけで、ネズミどもはその雛と卵を食害した。しかし捕食できる鳥卵や雛には限りがあるから、ポピュレーションはその範囲内に抑えられた。
 しかし戸島には人が住んでいた。ヒトにどこにでも付いていき、極北や亜南極にまで生息域を広げたネズミにとって島民はまことにありがたい食料供給者だった。
 実証されているわけではないが、おそらく島という閉ざされた環境で異常繁殖という驚異的遺伝子を備えたドブネズミどもは、そこで人間を追い出すほどの大繁殖した。

◎大きな島や大陸では無限に繁殖できない
 戸島の場合、最終的には島民が激減したことで、餌の供給を絶たれ、大半が海を泳いで四国本島に逃げた。だが渡った先の四国は、戸島のような閉ざされた空間ではない。捕食する猛禽類、猫やイタチなどの肉食獣もいる。大海に飲み込まれて、異常繁殖には至らなかった。
 島は、単純な生態系なので、侵入者があると容易く壊れる。しかし壊れたら侵入者も、またいつか身の破滅となる。それを考えると、生物学の奥深さに興味が広がる。

注 容量制限をオーバーしているため、読者の皆様方にまことに申し訳ありませんが、本日記に写真を掲載できません。
 写真をご覧になりたい方は、お手数ですが、https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/201909010000/をクリックし、楽天ブログに飛んでいただければ、写真を見ることができます。

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