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2019年08月03日07:10

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『 アルキメデスの大戦 』



ち合わせの帰り、『 アルキメデスの大戦 』を観た。昭和8年、海軍は老朽化した戦艦金剛に替わる新造艦計画をめぐって紛糾していた。「 戦艦こそ海軍の象徴であり、来るべき米英との艦隊決戦に不可欠なもの 」と主張する嶋田少将グループは、海軍大臣を味方につけ「 超大型戦艦 」建造案を提出。反対に、戦艦はもはや時代の遺物であり、これからの戦さは航空戦力が主力となると主張する山本五十六少将、永野修身大将グループは「 大型航空母艦建造こそが求められる 」と頑強に抵抗を続けてはいたが明らかに劣勢であった。新造艦建艦計画で航空母艦案を通すため、起死回生の方法を探ろうと山本達は料亭に集まったが、お酌をしてくれる綺麗どころ(芸妓)は全て他の酒席に呼ばれて一人も残っていないという。すぐ近くの座敷からは賑やかな笑い声が聴こえており、芸妓を何人か回してほしいと座敷を訪れると、そこには学生服を着た若い男が芸妓達と扇子を飛ばして遊んでいた(投扇興)。「 海軍も軍人も嫌いなので、あなた方に女達を回す気はありません 」ととりつくシマもない。呆れた山本達を尻目に、男は芸妓が失敗した扇子と芸妓までの距離を巻き尺で計測すると暗算して、今度は巻き尺で彼女が手を離す高さを指示。すると、見事に扇子は目標に命中、女達は歓声を上げた。驚いた山本がなぜ、そんな芸当ができるのかと尋ねると、男は「 計算で答えは必ず出ます。当たり前です 」と平然と答えた。男の名前は櫂 直(かい ただし)。もと帝大数学科の学生で、100年に独りの天才数学者と呼ばれる逸材だった。山本は、戦艦建造計画を潰すために、櫂の力が絶対不可欠だと確信するのだったが・・・。

予想外に良い映画だった。
笑って、泣けた。


 欧米にその威容を誇示することで戦意をくじこうとする超巨大戦艦を建造すれば、日本は必ず戦争に巻き込まれる。そう信じて、超巨大戦艦建造計画阻止に奔走する海軍士官達の純真な心に打たれた。我々は超弩級戦艦「大和」が建造されたことも、太平洋戦争という大災禍に日本が巻き込まれたことも知っている。そして、世界最強と謳われた戦艦大和は味方の航空支援もない沖縄水上特攻に出撃し、米海軍空母群から飛来した航空機の猛攻を受け、坊ノ岬沖で撃沈される。櫂達の懸命の努力は報われない。しかし、超巨大戦艦の建造さえ阻止すれば日本は戦争を回避できるかも知れない。いや、なんとしても回避してほしいと願いながらスクリーンに向かわざるをえないのだ。

 この先、ネタバレします。





















 超巨大戦艦建造を推進する嶋田少将(橋爪 功)、大角海軍大臣(小林克也)と、実際に新型戦艦を設計し、戦艦建造計画案の柱である平山造船中将(田中 泯)は同床異夢であった。この映画の本当に面白い点は「 そこ 」にある。嶋田、大角は彼らなりに日本海軍戦力増強の理想を追ったのに対し、平山はまるで違った。日本が戦争に引きずり込まれるのは避けられず、「 戦争の終わり方を知らない日本人は最後の一兵まで頑強に抵抗を続け、その結果、日本は滅びる 」と考えていた。だからこそ、日本国の象徴となる世界最強最大の超弩級戦艦を建造し、国民を歓喜させ、熱狂させ、そして、国の象徴であるその巨艦が沈む時、「 もはや、戦争継続することはできない 」と悟らせるのだと。

 平山は言う。
「 わが国の象徴たるこの艦(ふね)の名前は、大和(やまと=日本)です 」

 この映画は史実に着想をえて制作されたフィクションです、とのテロップが流れ、映画は終わる。大和が建造されようがされまいが、日本は戦争を回避することはできなかっただろう。そういう時代だったというしかない。原作漫画は未読だが、実によく書けた脚本だと思う。しょせん、ファンタジーだと一蹴できない「 国を思う純真な海軍士官達の物語 」である。

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