題名：看る力 アガワ流介護入門
著者：阿川 佐和子（あがわ・さわこ）、大塚 宣夫（おおつか・のぶお）
出版：文春新書
価格：780円＋税（2018年8月 第3刷発行）
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高齢者医療の第一人者、大塚宣夫医師と、阿川佐和子さんの老人医療に関する対談をまとめた本です。本書を読むと阿川佐和子さんの父親：阿川弘之氏は、晩年、大塚医師が勤めるよみうりランド慶友病院に入っていたとあります。
表紙裏の惹句を引用します。
“作家、インタビュアーとして活躍するいっぽう、九十四歳で亡くなった父・弘之氏を看取り、いまは認知症の母の世話をするなど、介護経験豊かなアガワ。
一万人以上のお年寄りと向き合い、六千人以上の最期を看てきた高齢者医療の第一人者、大塚医師。
二人が語る親＆伴侶の正しい介護法、理想的な老後の生活術――。”
目次を紹介します。
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�掘ヾ任蕕譴覲亳隋宗修△覆燭�高齢者になったら
あとがきにかえて――自分ならどうして欲しいか
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印象に残ったところを引用します。
【�機ヾ任詢蓮Σ搬科圈曄埒�べることは生きる力を測る目安》から。
大塚 食べるっていうのはね、人間の最後まで残る楽しみであると同時に、高齢者の生き
る力を測る目安としても、とても大事です。ヨーロッパの高齢者施設を視察した
時、そのことを痛感しました。
阿川 日本とは何が違うんですか？
大塚 食事を食欲をそそるように見せ、飲み込みやすい形にカットするなどの工夫をこら
す。また、それを口に運ぶ介助も十分になる。でも、それを本人が自分の力で飲み
込めなくなったら、それ以上の対処はしないんです。
阿川 点滴もしない？
大塚 しません。はっきり言えば、口に入れてもらったものを飲み込めなくなる、つまり
食べられなくなったら、ほどなく最期を迎えるということ。その人の生きる限界だ
という考えなんです。（12p）
【�供ヾ任詢蓮ι徂慂圈曄埆�性はデパートへ買い物に》から男女の違いについて。
阿川 男女の違いについては遠藤周作さんから生前、こんな話を聞きました。入院してい
る旦那さんがだんだん弱ってきて記憶が曖昧になって、最後まで覚えている言葉は
奥さんかお嬢さんの名前。ところが、反対に奥さんが弱って記憶が薄らいでいった
場合、最初に忘れるのが、亭主の名前。（略）
大塚 それから、こんな話もあります。奥さんが入院すると、ご主人は定期券を買って、
毎日お見舞いに来る。逆に、ご主人が入院すると、奥さんは定期券を買って毎日都
心のデパートに行きます。
阿川 最高（笑）！
（146p）
【�掘ヾ任蕕譴覲亳隋宗修△覆燭�高齢者になったら】《老人には三つのタイプがある》という話。
阿川 だいぶ昔ですが、車を運転しながらラジオを聴いていたら、「老人には三種類あ
る」って話をしていたんです。一つめは、「振り返ってみると、俺の人生ろくな
ことはなかった。あれもダメだった。これもできなかった」と後悔して後悔して、
自分を責め立てて不機嫌っていう人。次は「俺がこんな人生になったのはあいつ
のせいだ、こいつのせいだ」と、他人に対する恨みつらみで不機嫌な人。最後は
「今からだってこんな楽しみがある」と、過去のことはさておき今後を考えて不
機嫌じゃない人。
三番目のように生きられたらいいと思いますけどね。（168p）
締めくくりに【あとがきにかえて――自分ならどうして欲しいか】から大塚医師の風呂嫌いについて。
阿川 そもそも先生、お風呂が嫌いなんですか？
大塚 風呂なんて今でも週に一〜二回で十分。だいたい風呂に入って死ぬ人は年に二万人
近くもいるのに、風呂に入らないのが原因で死んだ人の話は聞いたことがない
（笑）。（200p）
ちなみに、私は毎日風呂に入るか、シャワーをしています。（笑）
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阿川 佐和子（あがわ・さわこ）
エッセイスト、作家。1953（昭和28）年東京都生まれ。慶応義塾大学文学部西洋史学科卒。
2012（平成24）年『聞く力』（文春新書）が年間ベストセラー第１位に。14年菊池寛賞を受賞。
主な著書に『強父論』（文藝春秋）、『オンナの奥義』（同、大石静氏との共著）、『正義のセ』（角川文庫）、『ああ言えばこう食う』（集英社文庫、檀ふみ氏との共著）など。
大塚 宣夫（おおつか・のぶお）
医師。1942（昭和17）年岐阜県生まれ。慶応義塾大学医学部卒。67年同大学医学部精神神経科学教室入室。
68〜79年まで(財)井之頭病院に精神科医として勤務。
80年青梅慶友病院を開設し院長に。2005（平成17）年よみうりランド慶友病院を開設。10年慶成会会長に就任。
著書に『人生の最期は自分で決める』（ダイヤモンド社）。
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