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2018年10月27日12:01

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消えた遊具達の思い出。



なつかしいですね。

もう40年も前、僕は時間と体力が有り余る子供で、これらを使って無茶苦茶やってました。

例えばこの地球儀型や傘型遊具では、7−8人くらいの大人と変わらないガタイの子供達を集め思い切り回らせていたのです。

こうなるともう遊園地の機械式アトラクション以上のパワーとスリルがあって、中に乗る子供は命がけだったのです。

究極までスピードを出して回すと、身体が水平になってしまって、マジで手を離したら死ぬ世界でした。

しかし子供達の世界は残酷なものです。
みんな途中でこんな危険な行為は誰も得しないと気づいてはいましたが、勇気が無いと言われるのが嫌で、いやいや、この僕、銀次郎少年につきあってくれていたのです。

そのうちフルパワーの状況下で5分くらい耐えられた者には、「勇者」の称号が与えられるようになってきました。

中でも一番の勇者は岸和田のだんじりのように遊具の頭頂部に立つ者でした。

どれだけのパフォーマンスを競うか、そこに子供達の侠気が試されていたのです。

自分などは頭頂部で「シェー!」の格好で回り喝采を集めたことがあります。

子供は面白いものに引き寄せられるものです。

一時狂騒状態なっていたそんな遊具の一角に周囲の子供達も

「よせてよせて」

と集まってきました。
一度入ったら抜け出せないまるでホテルカリフォルニアの世界だとも知らずに。

意外だったのはクラスで一番力のないWくんが地獄のフルパワー五分を耐え抜いたことです。

周囲からすごいすごいと言われたWくん、ふだん褒められたことがないものですから有頂天、そのうち調子にのって時間を延ばしていきました。

子供にもプライドがあるようで、狂騒状態のとき誰も「やめよう」とはいえないものです。

誰しもがうんざりしていたのに。

そんな状況の中、一番最初に犠牲者になったのはWくんでした。

いつものようにWくんはフルパワーに耐えていたのですが、勢い余ってなんと公園外の道路にまで飛んでいってしまったのです。

今でも覚えています、Wくんの飛んでいく姿はスローモーションのようでした。

「・・あ!W!!!!」

と僕は叫びましたが、吹っ飛ばされるWは柵を越えていきます。ビー!という車のクラクションの音と共にガシャン!!という鈍い音。

どうやらWくんは走行中のタクシーの上に落下したようです。

こういうときの子供達は残酷なものです。蜘蛛の子を散らすように逃げていきました。

子供の世界は全国共通「ドジを踏む奴が悪い」という哲学に支配されているのです。

そんな事件を起こした後、学校に行ったときその行動の首魁として呼び出されるのはいつも銀次郎で怖い先生からよくビンタをとられたものです。

しかしそんな「指導」にも懲りず銀次郎少年はその遊具で遊ぶことをやめませんでした。

もはやふつうの遊び方で試すものは誰もいなくなった公園の回転式遊具、いつしかその遊び方は当時はやっていた宇宙戦艦ヤマトに出てくる何物をもはね返す敵本拠の名前をとり「恐怖の白色彗星」という名前がついていました。

いつものごとく狂騒状態で遊んでいると、またくだんのWくんが近寄って参加してきました。

ドジを踏んでしまった子、とくに先生に説教されて、仲間の子供の名前を出した子は仲間から一番格下に見られます。

Wくんはクラスでは一番頭の悪い子でしかも運動神経ビリでしたから、そのように見られるのに耐えられなかったのでしょう。

どうする?と銀次郎を中心に談義が始まりました。

Wくんいわく

「・・・あの銀次郎にまたそそのかされたんやろ?って父親からいわれたんやけど、ぼく違うゆうたんや!」

とあくまで抗弁してきます。

「ほな、しょうが無いわ、やけどお前一番ひ弱やから、真ん中におれや・・・」

と渋々ですが認めてあげました。
このときのWくんのキラキラした目は今でも忘れることができません。

これに気をよくしたのかWくん、侠気の頂点といわれる、地球儀型遊具の上に立つと言い始めました。

みんなは「やめえ、やめえ」というのに、あくまで言い張るのです。
WくんはWくんの意地があったのでしょう。

みんなが心配するのを後にして、Wくんは頭頂部に立ちました。

みんなは心配しながら「ほな・・いくで」とまた回し始めました。

Wくんは相当うれしかったらしく当時はやっていたピンクレディーのふりつけで回転していました。

しかしWくんの顔は回転しているうちにどんどん青白くなっていきました。

「・・やばい!」

そう直感した銀次郎はいち早く戦線を離脱。その後に悪夢のような光景を見てしまいました。

なんとWくん、地球儀型回転遊具の上でゲロを吐いているのです。

遠心力も手伝って周囲の子供達にゲロを吐いていくWくん、せっかく親から買ったもらったゴレンジャーの黄色いキャラクター帽子にゲロがボタボタ落ちていったり、頭と顔にもろにゲロがかかっていったり、そんな子供達を銀次郎は遠巻きにみるしかなかったのです。

「きたなあああ!!!」

ゲロに気がついた子供達は遊具からどんどん離れていきました。

ゴレンジャーのキャラ帽子をかぶっていた子は、セルロイド製の目隠しがでていたので目に入るのはふせげたたのですが、こうなっては無論遊びどころではありません。

みな遊具を降りて膝をつきゼエゼエ・ハァハァするのみです。

あとに残されたのは異臭を放つ遊具とその頂点にいるWくんのみ。
周囲は静寂に支配されていました。

Wくんはその後、かわいそうに当時はやっていたアニメの名前をもじり「ゲロロンえん魔くん」というありがたくない称号を受け取るようになりました。

なにかあると、「ゲロロン♫ゲロロン♫ゲロゲロばあ♫」と歌われるようになり、そのうち女子からももはやWくんとはいわれなくなり意地悪な女子からは「ゲロロンのくせに」と呼ばれるようになりました。

そんなときWくんは悔しかったようでブルブル拳をにぎりしめて怒っていましたが、先生に事後の報告で銀次郎をはじめ皆の名前をだしてしまったので、さらに格下に見られるようになったのです。

自分はこれらの遊具を見るとWくんとの思い出がいまだに浮かび上がってきます。
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