「誰かを盲目的に信じるのではなく独立した思考であるべきだ。党 組織 国家はみな、正常化 民主化 法治化するべきである。一人の人間の言ったことがすべてということに反対しなければならない。」
これは胡耀邦（元中国共産党総書記）の言葉である。
昨夜みた、ＮＨＫスペシャル「総書記 遺（のこ）された声〜日中国交 ４５年目の秘史〜」
9/23放送の再放送だが、作家・山崎豊子の自宅から発見された膨大な胡耀邦インタビューテープをめぐるドキュメンタリー番組だった。インタビューは、胡耀邦が中国共産党総書記の地位にあった時代である。田中角栄が日中国交正常化を成し遂げ、��小平が改革路線に進んでいた時代。
NHKは、このインタビューテープをネタに、当時首相であった中曽根康弘や毛沢東元秘書・唐家璇元外相、エズラ・ヴォーゲル（ハーバード大名誉教授）などにも独自にインタビューを行っていた。
中曽根康弘が靖国神社を公式参拝したときの中国共産党総書記（1982-1986年）がこの胡耀邦である。彼は、��小平の改革開放政策の方針のもと、「
百花斉放（様々な意見を認め、自由に議論すること）」をスローガンに添えて、人民のために、世界と日本と開放政策を推し進めようとした人物である。
彼は、文化革命によって反革命分子として自己批判→再教育（農村で3年間の労働）という苦節を重ねたのちトップの座に付いた苦労人であった。彼は文革の中で、（毛沢東という）ひとりの人間を民衆が盲信することで暴走していくありさまを体験している。だから、
百花斉放＝様々な意見も認めて議論するべきだという信念を持つに至った。
あの天安門事件は胡耀邦の死がきっかけである。��小平は、天安門事件後の講話で、胡耀邦の日中友好政策や国内の思想教育が事件の要因との認識を示し、民族教育と愛国教育を強化する方向に導いてしまう。またその後の中国共産党指導部に「親日的政策はひとつのリスクになる」という刷り込みを後々まで残す結果となった。以降、中国は反日を利用した国威向上などを繰り返す結果となり、45年前にかけた日中友好の架け橋を振り出しに戻すような逆行現象に至っている。
胡耀邦という人をよく知らなかったが、 すばらしい思想家・人格者で、中国の若者が彼に熱狂したのがわかる。当時書記長という高い地位にありながら気さくというか前代未聞というか、日本の一作家と会食、インタビューまで受けてくれているのだから、彼の懐の深さがよくわかる。しかし彼の心の広さ、真の民主主義を目指す思想を、共産党の重鎮（五大老）たちが危険視していたのもわかる。
以下は、肉声テープに残された胡耀邦の言葉の一部である。後世に残しておきたいものばかりだ。
「我々が開放政策を実行しなければ、日本人と長期的友好的に付き合うことを重んじなければ、世界各国と付き合うことを重んじなければ、国の進路を誤ることになってしまう。」
「愛国心の行き過ぎを日本も中国も防がなければなりません。」
「山本五十六の愛国主義は、極めて狭い。戦勝中は私たち中国人民の利益、東南アジアの利益を考えなかったからです。それはその狭すぎる愛国主義ですから。」
「日本人が愛国主義だけを提唱し、日中友好を提唱しないなら、このような愛国主義は不健全だと考えます。中国の場合も日中友好を重んじない愛国主義は不健全です。」
「極端な民族主義、狭い愛国主義には陥ってはならない。国家の主人公は人民であり、人民同士が対立する必要はない。」
https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/46/2586975/index.html
番組は最後に、胡耀邦のこの言葉を今を生きる私たちへの遺言として受け止めたい、と締めくくった。
「愛国主義を唱えているのに、世界の人々に友好的でないなら、それは愛国主義ではない。どうか誤った愛国主義（誤国主義）に陥らないでほしい。若い人たちに誤国主義になるのを防いでほしい。 」
来る10月22日の衆院解散総選挙の主な争点は、憲法改正、安全保障、原発、この3点の是非を問うということらしい。
改憲に肯定的な小池新党「希望の党」、その希望の党に合流する一部民進党、同じく希望の党に便乗する日本維新の会。
合流から排除された民進党の一部リベラル派が作った立憲民主党は共産党、社民党と共闘する。
はたして安倍一強体制を終わらせることができるだろうか。
なんだかこのタイミングでのこのNHKスペシャルドキュメンタリーの放映、そして「国を誤らないで」という胡耀邦の遺言はタイムリーすぎて震えた。
なお、このドキュメンタリーのことは、菅直人ブログにも書かれている
https://ameblo.jp/n-kan-blog/entry-12313396430.html
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