海外旅行は体力が要る。
老いたら海外旅行より国内旅行。
漠然とだが、パスポートの有効期限が切れる二年後からそうしよう決めていた。
だから残されたあと二年の間にずっと行きたかったモロッコには絶対行こう!
そう思っていた。
ところが今年、主人は私より有効期限が長いパスポートを持っているにもかかわらず、海外旅行に早々とギブアップ宣言をした。
行けないわけではないけれど、海外で長時間の移動はもう体力的にキツい、と。
モロッコに未練があって渋い顔をする私に、主人はこともなげに「ひとりで行ってくればいいじゃないか」と言う。
一人は割高で、勿体無いではないか。
そう言うと
「馬鹿だねえ、二人で行くより一人の方がはるかに安いだろ」
と、まあ、まことにもっともなことをおっしゃる。
まったく正論ほど腹が立つことはない。
どう考えても私が一人では行けないだろうと踏んで言ってるよな。
そう思ったが仕方がない。それは事実だから。
今更一人で行ったって、その感動を、幸せを、分かち合える人がいなければ、私だって行きたい気持ちは萎む。
どこに行っても二人だったから楽しかったのだ。
結局国内旅行を二年早く前倒しして、主人が行きたがった白川郷に行った。
二週間前の事だ。
雪が容赦なく降る中、頭に被ったフードや肩に積もる雪を何度も払いながら見た、夜のライトアップされた白川郷の合掌造りの家並みは、確かにお値打ちもののロケーションだった。
それにしても日本の観光地は今、どこも外国からの観光客が多いらしく、白川郷でも春節は過ぎているはずなのに中国語が飛び交う。
家族づれの彼らは雪に大喜びする子供の写真を撮るのにも夢中だ。
おそらく台湾からの観光客だろう。
翌日も新穂高のロープウェイでフィリピンから来たと思しき団体客に囲まれ標高2156mの西穂高口駅に着くと、私でさえ感嘆の声をあげるほどの雪の回廊が作ってあった。
人が一人か二人通れるくらいの幅ではあったけれど、両脇の雪は人の背よりも高い壁になっている。
こう言うものを見ると童心にかえる。
思いは外国からの観光客も同じで、あちこちで興奮した異国の言葉と笑い声が弾ける。
その時思った。
外国からの観光客に囲まれて意外な景色を眺めていたら、日本にいても外国にいるみたいな気分になれるんじゃないかと。
そう思うのは未練なのか、開き直りなのか、はたまた、悪あがきなのか?
とりあえず来月は「なばなの里」に行く予定だ。
さて、そこではどこの国にいると錯覚させてもらえるのだろう。
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