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2016年10月01日13:23

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『 ハドソン川の奇跡 』


ち合わせの帰りに、トム・ハンクス主演、クリント・イーストウッド監督最新作『 ハドソン川の奇跡 』(原題:Sully)を観た。ラガーディア空港離陸直後、上昇中のUSエアウェイズ1549便はバードストライク(飛翔する鳥に機体が衝突すること)によって左右のジェットエンジンに異常が発生。十分な高度がない状態でエンジン推力を完全に喪失するという絶対絶命の中、機長のサレンバーガー(トム・ハンクス)はいったんは空港に引き返すと管制官に連絡するが、とっさの判断によりハドソン川に不時着水することを決断する。旅客機の不時着水は不可能と考えられており、管制官は機長に最寄りの空港への緊急着陸を指示するが、サレンバーガー機長はハドソン川の水面に向かって下降を続け、不時着水を敢行してしまうのだった。

 この不時着水はハドソン川の奇跡と呼ばれ、サレンバーガー機長(愛称:サリー)と副操縦士のジェフ・スカイルズ(アーロン・エッカート)は「 英雄 」と称賛されるが、国家運輸安全委員会(NTSB)の対応は全く違っていた。事故直後の聴き取り調査で2人ははじめから容疑者扱いをされ、驚くことになる。それは、左側のジェットエンジンはわずかながら推力を維持しており、1549便事故と同じパラメーターを与えたフライトシミュレーションでは何度やっても、最寄りの空港に無事着陸できたというのだ。つまり、ハドソン川への不時着水は機長の誤判断が招いた「 墜落 」であり、彼は乗客乗務員すべてを危険にさらし、航空会社に莫大な損失を与えたということになる(・・・航空機の欠陥が招いた墜落事故であれば、航空機メーカーと保険会社の賠償額は莫大なものとなるため、搭乗員の人的ミスとしたいのだ、という搭乗員組合幹部の発言が劇中にみられる)。

 事故後の精神的重圧と戦いながら、サリーとジェフは身の潔白を証明するため、国家運輸安全委員会の公聴会に赴くのだったが・・・。

 いや、これは静かな良い映画だった。航空機事故というセンセーショナルなテーマを扱いながら、ことさらドラマチックに描くことをせず、サリーの真摯な姿を淡々と追っていく。それでいて緊張感が途切れないのはさすがだ。

 冒頭から、サリーとジェフの言葉に耳を傾けないばかりか、事故以前の彼らのキャリアさえ全く考慮しない調査委員会の言動は敵意すら感じさせるが、物語は終盤、意外な展開を見せる。調査委員会と搭乗員(サリー、ジェフ)の対決で終わらせなかったのは、脚本の冴えだろう。クライマックスでは目頭が熱くなってしまったよ。


 ちなみに、サリーが主張した「人的要因 」が認められ、フライトシミュレーターに加味された「 35秒 」がどこから出て来た数値なのかといえば、これはフライトレコーダーに記録されたコックピット内の会話音声から、サリーがハドソン川への不時着水を決断するまでに要した時間であることは間違いない。両エンジン推力喪失から、サリーとジェフがQRH(緊急対応マニュアル)に従ってエンジン再起動を試みた結果、再起動できないと判明するまでに30秒(ジェフがサリーに「30秒経過」と報告している)、最寄りの2つの空港(ラガーディア、テターボロ)までの飛行は不可能でハドソン川への緊急着水しかないと決断するまでの5秒を足して「 35秒 」となる。



 蛇足。


 天才的な判断と操縦技術によって奇跡の生還を果たした機長が一転、容疑者となる展開は、先年公開されたデンゼル・ワシントン主演の『 フライト 』と同じである。『 フライト 』の原案は間違いなく、ハドソン川の奇跡(USエアウェイズ1549便の不時着水事故)の影響を受けていると思う。
 
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