mixiユーザー(id:18627182)

2016年07月04日09:59

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『風立ちぬ・美しい村』を読んでみた。

風立ちぬ・美しい村
http://mixi.jp/view_item.pl?reviewer_id=18627182&id=272567

<以下、レビューページより転載>

宮崎駿の同名アニメの原作(の半分)にもなった中編と、その『風立ちぬ』でヒロインになる少女(モデルは著者の実際の婚約者)との出会いなどが書かれた『美しい村』、2本の中編小説が収められた一冊。
宮崎のアニメがきっかけで興味を持ち、昭和初期を代表する作家・堀辰雄の名著ということで、今更ながらにじゃあるが、読んでみたm(_ _)m

『美しい村』は、まだ避暑には早い軽井沢高原の村を訪れた傷心の小説家「私」が、一人そこに滞在し、道々を散策しながら遭遇した出来事を、徒然に書き綴ってくという体の物語。
「序曲」「美しい村 或は 小遁走曲」「夏」「暗い道」の4章から成るが、「夏」の章で、のちの『風立ちぬ』のヒロインとなる少女が登場し、リズムが変調する印象。
実際著者は、結核の療養のため軽井沢に滞在し、現実の婚約者・矢野綾子ともそこで出会ってるらしいので、事実をベースに描かれた自伝的なお話でもあろう。
続く『風立ちぬ』も同様で、作中では、重い結核に冒された婚約者に付き添い、サナトリウムで日々を過ごす「私」の思想や様子などが描かれるが、やはり現実でも婚約者の矢野綾子は結核を患っており、結婚する前に亡くなってしまっている。作中では直接亡くなったシーンの描写はないが、「序曲」「春」「風立ちぬ」「冬」「死のかげの谷」の5章構成のうち、最後の「死のかげの谷」は、明らかに婚約者の死後ことを描いてるのがわかるので。。。

全体として、悲壮感の漂うお話である(;´Д`)。が、文章はとにかく美しい。簡潔でいて詩的。
そして、死を身近に感じ、それを常に意識してるが故か? 《生》を見つめる視線・描写がまた美しい。
「風たちぬ、いざ生きめやも」
ヴァレリイの詩から引かれたこのエピグラフが、読後にグッとくるのも確か。
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