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2015年02月11日18:57

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元気づけてくれる人

 このところ、ちょっと落ち込むことがあって、豊島区の中央図書館に行ってきました。

 落ち込んだときには、図書館に行って、昭和58年の新聞の縮刷版を見ることがあります。以前はどこの図書館でも簡単に見ることができたのですが、流石に古い時代のことになったためか、最近は、東京の豊島区では中央図書館でしか見ることができなくなりました。
 なぜ、昭和58年かというと、その年、真弓明信さんがプロ野球セントラルリーグの首位打者に輝いたのですが、その経過を記した記事を読みたいからです。
 真弓さんは、阪神タイガースの監督だったときは、今ひとつパッとしませんでしたが、昭和58年当時は、タイガースの現役選手として大活躍してました。
 もっとも、当時のタイガースのチーム状況は、バッティングはそこそこいいものがあるものの、投手力は悲惨で、甲子園球場での1回表の攻撃(相手チームの攻撃)が、延々30分も40分も続くということも珍しくありませんでした。そんなに1回表の攻撃が長く続くと、実況のアナウンサーも、既に試合が相当進んだものと錯覚するのか、ようやく1回表の攻撃が終わってそのウラのタイガースの攻撃が始まると「この回の攻撃は、打順良く1番の真弓から」(←1回ウラなんだから、当たり前なんですが)などと放送してました。
 そう、真弓さんは1番バッターだったんですね。昭和58年には首位打者になったということもあって、とにかく打ちまくりました。
 でも、私が昭和58年の真弓さんに感動したのは、単に首位打者になったからではなく、そのなり方が素晴らしかったからです。
 首位打者というのは、最も高打率を残した選手のみに与えられる栄誉ですが、打率は打点や本塁打数と異なり、下がることもあります(アウトになった場合)。ですから、一旦打率トップに立ったら、規定打席に達している限り、誰かに抜かれるまで打席に立たないという人もいます。実は、誰が、とは言いませんが、そういうこすっ辛いやり方で首位打者のタイトルを獲得した人は、少なくありません。
 真弓さんも、残り10試合になったところで、監督から、欠場を勧められたということですが、真弓さんは断固これを拒否して最後の試合まで打席に立ち続けました(シーズン前半に体調を崩し一時戦線を離脱したので、そのシーズンは全試合に出場したわけではありませんが)。
 それだけでなく、すごいのは、打率トップに立った後も、さらに打率を上げたことです。昭和58年のシーズンは、ヤクルトの若松選手が好調で、首位打者争いでもトップを走っていたのですが、真弓さんは確か9月に入ってから、.341という高いレベルで、若松選手に並びました。そして、その後も試合に出場し続けて打ちまくり、シーズンが終わった時には、.353で首位打者になったのです。
 一口に打率を上げるといっても、これはたいへんなことです。ペナントレースも100試合を超える頃になると、大雑把に言って、打率はヒット1本で2厘上がり、アウト1つで1厘下がります。三割打者、つまり10回打席に立って3本ヒットを打つ程度では打率は下がってしまうわけです。でも、三割打者といえば、プロ野球の世界では優秀な打者です。その上を行かなければ、とてもこれだけの数字は残せないわけですから、真弓さんは本当にスゴいことを成し遂げたわけです。
 実際、昭和58年の新聞の縮刷版で、この時期の各試合の真弓さんのバッティング成績を見ていくと、5打数3安打とか、4打数2安打とかの景気のいい数字が並んでいる試合が少なくありません。私は、縮刷版のページをめくって、こうした数字を追っていくうちに、だんだん自分が元気になっていくことを実感するのです。
 その程度のことで元気になれるなんて、お前は単純な奴だ、とか、落ち込んだもともとの原因自体がそれほど大したことじゃなかったんじゃないの?とか、思う人はどうぞお笑いください。
 ただ、最近、野球に限らず、スポーツ選手の多くが、自分のプレイで、被災地の子供たちに夢を、とか、被災地の皆さんを元気づける、とか言うのをよく耳にします。悪い心がけとは言いませんが、でも、被災者に限らず、人を感動させるのは、大震災があったからとかの理由で特別に行われる何かなのではなく、なすべきことをなすという当たり前のことにひたむきに挑む姿なのだと思います。
 それはそうでしょう。昭和58年のペナントレースで阪神タイガースは4位で、優勝の見込みはありませんでした。そんなチームをそれでも応援するために球場に足を運んでくれるお客さんの数少ないお目当ての一つは首位打者が狙える真弓さんの打席であったはずなのです。そうしたお客さんたちの期待に応えて出場することは、プロの野球選手として当たり前のことだったといえるはずです。
 欠場せずに、打率が下がるリスクも引き受けて挑み続けた真弓さんは本当に立派だったと思います。
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